527-四面魔神対葵とマノーリア
アガリアレプトはマノーリアを品定めするように目文し、したなめずりをして口を開いた。
「その髪色、表情、まるでアマテウスのようだな…… 生かしておけば厄介になる人間のひとりか…… 我が槍の味を知るがよい」
アガリアレプトが槍を中段かまえ、対してマノーリアは脇ににかまえる。アガリアレプトが先に動きマノーリアへと間合いをつめる。マノーリアが出遅れたのではなく、アガリアレプトの技量を見極めたく先手をあえて打たせた。マノーリアは、アガリアレプトに先手をとらせても受けきれる自信があった。それは自信というよりもマノーリアのルーツでありプライドでもある。如月家は母方の姓であり、ロスビナス皇国建国時より名か残る名家で、その如月家は代々治療師を輩出してきたが、また代々薙刀の道場を営み、街の防衛の為に市民たちに薙刀の指南を続けていることも名家の由縁ある。父は槍の名手として皇国に名を連ね、父方の家系であるラストスタンド王国のリーフ家は代々槍の騎士を輩出してきた。マノーリアは、幼き頃から父や王国留学期間は、従兄弟であるベルガモットから槍の手解きを受けてきた。薙刀と槍の技量はマノーリアにとって父と母のふたりから受け継いだものであり、どんな強者相手でも初手でやられるつもりはなかった。
「四面魔神のひとりだけあるわね。 でも! 」
アガリアレプトが中段から槍をマノーリアに突き出し、マノーリアが防御のかまえをとると、アガリアレプトの2手は上段から大技を繰り出すが、マノーリアが予測していたのか、薙刀でそれを受け流し、アガリアレプトと位置を変えるように交わしアガリアレプトの後ろを取り剣技を2連撃放つ。
「紫炎乱舞! 花吹雪! 月光! 」
アガリアレプトが防御をするが、マノーリアの2連撃目が防御の上から押しきりアガリアレプトが後方に吹き飛ぶが、アガリアレプトは、身を反転して槍の柄を地面に突き刺し、両足を強引に地面に着地させて立ち上がり、口から流れる青黒い血を手で拭い笑みを浮かべ口を開く。
「面白い…… 人間ごときがここまでやるとはな」
サタナキアがアガリアレプトの言葉に笑いながら返答する。
「だから言ったであろう、おもしろい相手だと残分に楽しんでやれ」
「言われるまでもない。楽しませてもらうさ! 」
アガリアレプトが上段にかまえてマノーリアにあらためて向き直る。
「させるかよ! ディスピア! 」
一瞬の隙をついて葵が急所突きの剣技を放ちディスピアへと迫る。
「貴様の相手はわたしだと言っているだろ! 神無月! 」
サタナキアがアガリアレプトと葵の間に入り葵のブロードソードを払いのける。
「貴様に払われなくとも今のは防げたがな」
「こいつらを甘く見るなよ。楽しめる相手だと言っているだろ。まだ寝ぼけているのか? 」
「まぁ 見ておれ、そもそも四面魔神筆頭はわたしだからな一度筆頭になったからと言って調子に乗るなサタナキア」
「まだそれにこだわるかつまらんヤツだ」
アガリアレプトがサタナキアに声をかけるがその表情は不快そうだが、またサタナキアもアガリアレプトの言葉に不快感を露にしている。四面魔神同士仲が良いわけでもないようだ。サタナキアが葵に向き直り長剣を葵に向けて口を開く。
「神無月! 貴様を自由にさせているとまた一騎打ちに横やりを入れるであろう。我々も始めようではないか! 」
「四面魔神同士でやりあってもらって良いんだぞ! 観戦してやるから、なんだったら応援してやるけど」
「アガリアレプトと剣を交えても何も楽しめぬではないのか」
「オレとやっても楽しくないだろ! 」
「神無月改めて教えてやろう、貴様たち人間は死を怖れている。だからこそ楽しめるのだ。人間を殺す刹那に流れ込むあのなんとも言えぬ貴様たちの感情は我々にとってなによりもの甘美なのだ。特に強者になればなるほどその味はとびきり甘いのさ! さぁ味合わせてくれ! 神無月! 」
サタナキアが長剣払い、そのまま葵へと突っ込んでくる。
「やっぱり理解ができないな! 」
「理解など不要! 」
サタナキアが葵に横凪に剣を振り抜き、葵は左のシールドガントレットで、それをあえて受けた瞬間に右手のブロードソードを地面に突き刺し剣技を放つ。
「ロックブラスティング! 」
サタナキアもろとも周辺に爆煙が立ち込める。
「ディスピア! 」
葵は続け様に砂埃の中サタナキアのいるであろう場所目掛けてあらためて剣技を放つ。
「やはりおもしろい! 」
サタナキアは青黒い血の混ざった唾を吐いて口を開いた。
「これでも無理か上手く行くかと思ったけど」
「まだまだ楽しませてもろうさ」
サタナキアは葵のブロードソードの刃を左手でつかみ耐えた。サタナキアは葵を蹴り飛ばし葵も距離を取り直す。サタナキアは左手の手のひらから青黒い血が滴り落ちるが、黒い炎を纏い回復させる。サタナキアは笑みを浮かべて葵に声をかける。
「さぁ楽しませてくれ! 神無月! 」
サタナキアと葵が同時に間合いをつめて剣を交えるのだった。
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