526-四面魔神アガリアレプト
「白檀お兄様! サタナキアと対峙しました」
「ふたりで行けるか? 」
「任せてください! 」
マノーリアが白檀へ念話でS級魔族であるサタナキアとの接触を報告する。白檀が視線を葵とマノーリアのいるであろう報告に向けると葵とサタナキアが剣をかまえ睨み合う姿が数百メートル先に見えた。
邪神によって戦士系の悪魔として産み出され、邪神直属の四面魔神に名をつなれたひとりサタナキア。過去大戦時には神々と人々を窮地に追い込んだ魔族のひとりだったが、激闘の末にデイト・ア・ボットと鳳凰に討たれた。そして新たに生産系魔族のファーマーによって蘇った。過去のサタナキアを知る神々は、サタナキアの印象が過去と違うようだが、さほど重要なことではなかった。悪魔として四面魔神としては過去と変わらない強者であり、見る限りでは邪神崇拝も変わっていない。できることであれば早めに打ち倒したい相手である。
「あいにく待ってもいないけど? できれば高みの見物してくれた方が助かるけど」
サタナキアの言葉に葵が軽口で返答すると、そこへ近くにいた上位魔族が、葵に攻撃をしかけようと横やりを入れた瞬間にサタナキアが動いた。
「わたし獲物だ! 貴様ごときが手を出すな! 」
サタナキアは上位魔族を容赦なく切り裂いた。葵はサタナキアの行動に呆れ果てるしかない、敵でありながらそこまで葵にこだわる理由がよく分からないのだ。今も上位魔族が攻撃したら、葵はそれに対応しその隙にサタナキアに攻撃されれば、対応が遅れれば殺されていたかもしれない。サタナキアは長剣の魔族血を払う為に一振して葵に声をかける。
「お前を倒すのはわたしなのでな」
あくまでも一騎打ちを望んでいるようだ。
「礼を言うつもりもないけど? 」
「かまわん。わたしのわがままだからな」
「自覚してるんだな、そのわがままで殺された今の魔族は不憫な気がするのだが」
「弱者がでしゃばるからだ。ヤツとてわたしの剣に斬られたのだ本望であろ」
サタナキアは自身の長剣に視線を落とし微笑む。その鈍い輝を放つ深く赤い刀身はいつ見ても禍々しい長剣だ。その一瞬の隙を狙い、気配を消してサタナキアの背後に回ったマノーリアが、薙刀を上段に構えて剣技を放つ
「乱舞! 花吹雪! 花鳥風月! 」
サタナキアはマノーリアの2連撃を1撃目を身を反らし交わし、2撃目を長剣で受け流す。
「くそっ! 」
マノーリアが悔しがるが、サタナキアは余裕の表情だ。
「悪くはないがそう焦るな如月」
「あなたに諭される理由なんてないわ! 」
マノーリアがサタナキアに言い放ち改めて薙刀を中段にかまえにかまえる。サタナキアが口の端しを上げてマノーリアへと返答する。
「貴様とも剣を交わしたいと思っていたが、神無月の成長ぶりにわたしはこれ以上にない喜びを感じていてな」
敵である葵の成長を喜ぶといういささかおかしな返答をサタナキアはする。いぶかしげにマノーリアも眉間にシワを寄せる。
「お前の趣味につき合うつもりはない! ランドスライド! 」
次は葵がサタナキアの死角から剣技で攻撃をしかける。
「まだ話が終わっておらん! 」
葵の剣技を長剣で受けとめ押し返すが、葵も想定範囲だったようで、グラビティコントロールで身を軽くして降り立ち、葵がサタナキアに返答する。
「剣でなく話し合いで解決する方法を魔族は考えられるようになったのか? それなら平和的で助かるけど」
「話し合い? バカを言え貴様たちと話して何になる。わたしが貴様と剣を交わす間に、この辺りの弱者を相手では如月に申し訳ないからな、わたしの代わりが用意できたからな楽しんでくれ」
サタナキアは、そう言って左手を掲げ黒い炎を空に打ち放つとある程度の高さで信号弾のように赤い光が空で輝く。すると旗艦の魔艇より、黒に近い深い緑の炎が射出され物凄い勢いで砲弾のように飛んでくるとサタナキアの脇に降り立つ。
「邪神様が不要になったのでな、良い苗床が手に入ったようで、ファーマーも喜んでいたからな」
黒緑の炎に包まれた物体をサタナキアポンポンと叩く。
「目覚めよ! 四面魔神がひとりアガリアレプト! 」
「四面魔神!? 」
過去の大戦時にいた邪神直属の4人の戦士系魔族を四面魔神と喜び、邪神側近の軍師であるワァプラ同等の権力を有するのが四面魔神であった。その四面魔神がもうひとり復活したとのか、葵とマノーリアは警戒を強める。そして今、サタナキアが名を呼んだのは、サタナキアの次に強者であった四面魔神のひとり、アガリアレプトであった。
「我が名は四面魔神がひとりアガリアレプト…… 」
黒緑の炎から現れた人物を見て、葵とマノーリアは驚きの表情で固まり思わず口から声が漏れた。
「まさか…… 」
「メフィスト……」
魔王を名乗り邪神軍と人類に宣戦布告したが、邪神の力によって消滅したと考えられていた。サタナキアが鼻を鳴らして笑い、葵とマノーリアに補足するように声をかける。
「器とした人間のカラダはそうかもしれないが中身は別物だ。如月楽しんでくれ」
メフィストはそもそも転移した日本人であるが、転移場所が運悪く完全結界内だった事と本人の強力な憎しみや怒りが元となり、半人半魔となって巨大な力を手に入れた。しかし、メフィストのしたことは許される事ではないが、転移場所が悪かったのは同情の余地はある。更にすでに殺されたにも関わらず肉体を器とされ安らかに眠ることなどできていないのだ。マノーリアはサタナキアたちのしたことに怒りを覚え薙刀の握る手に力が入る。
「お前が如月マノーリアか? 少しは楽しませてくれるのだろう…… 」
メフィスト改めアガリアレプトは槍をかまえる。メフィストは大剣や弓を使っていたがアガリアレプトは槍を使うようだ。
「神無月こちらもやるとするか…… 」
「サタナキア…… 」
四面魔神がふたりとなり、新たな四面魔神のアガリアレプトはメフィストのカラダを苗床に蘇ったのだった。
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