515-司令部への報告
守星調査隊の面々は魔弾を放つ魔艇を一隻撃破とカースカロッツェリアを倒す事に成功し離脱した。一時的ではあるが後方に下がり、守星連盟軍本隊仮本陣で司令部へと報告に来ていた。
「デイト様の御神体は破壊され今後の作戦から削除…… 守星調査隊の皆様でも一隻を撃沈するのがやっとだったと…… 」
司令部の司令官は腕を組んで渋い顔をしている。白檀が息を深く吐いてから肩をすくませて口を開く。
「司令そんな顔をしないでくれ、ワァプラやサタナキアのようなS級の魔族が揃い踏みで現れた。邪神がいなかっただけマシだったと思ってくれ、それにカースカロッツェリアって限界突破した生産系魔族を倒せたんだからな」
白檀は司令に皆を労ってくれとつけたした。司令官は首を横に振り返答する。
「いえいえ、皆さんの働きを不満に思ったわけではありません。想像以上に魔族の守りが頑強であるなと、魔族は攻撃力はあっても守る事を好まないと考えていたので…… 隙さえあれば本陣を陥落させれば、魔族軍の統制は落ちるかと…… 」
「ワァプラがいるからな、その辺りの隙はなかなかないだろうな」
「それほどにワァプラという魔族は軍師として能力が高いと? 」
「司令がそうだとは思わないが、下位の魔族しか目にしたことのないと、思考の根本に魔族を暴力的で低俗な種族と思いがちだからな、過小評価に陥りやすい」
「私も知らず知らずに過小評価をして視野狭窄となっていたかも知れませんな」
司令は組んでいた腕ををほどき顎をかきながら苦笑する。白檀たちの会話を静観していた環が司令に声をかける。
「全体の指揮をとる方は情報から分析するしかありませんからね。実際に目にすることなく、その脅威に挑むわけですからね。心労おっ指しいたします」
環はそう言って司令を労っている。後方や司令部の有能でなければ、前線で奮闘しても意味がない。
「皇女ありがとうございます。我々も最善を尽くす限りです」
司令部への報告が終わろうとしていた時に葵が声をかける。
「団長~ デイト様だと思うですが、リンクを使用したいようです。何か話があるのかもしれませんよ」
環が葵に返答する。
「こちらの報告は一通り終えてますから、葵さんデイト様と繋がって下さい」
「わかりました。リンク! 」
葵は環の了承にすぐさまリンクを発動させる。葵のみがデイトと距離があっても対面で会話を可能とするのがリンクだ。リンクが発動すると周囲の景色が変わり、葵の正面に人影が浮かび上がると徐々に鮮明となりデイトの姿がはっきりと浮かび上がる。デイトのとなりにはアザミが立っている。その様子に司令部にいた司令官や武官は唖然としている。
「どうしたんですか? デイト様」
葵がデイトに声をかけるとデイトが返答する。
「アザミさんたちの北部部隊はさほど大きな戦火はないようなので、このまま前進し邪神軍を挟撃を続行します。そちらにわたしは合流することにしました。邪神軍は大樹木蓮への進攻するために、そちらの西部への攻撃に集中するようです。カーラスとも同見解です」
デイトがそう話しデイトがカーラスとも同調したようで、カーラスの姿が浮かび上がる。カーラスのとなりにはチョウノスケが立っている。転移者と繋がるためのリンクはデイトしか使えないため、カーラスが直接繋がることはできない。カーラスが口を開く。
「南部も同様です。最初のあの魔弾によって被害が出たようですが、その後の攻撃は散漫なものであり、こちらへの進攻はないと確信できます。こちらも我々とオーシャンガーディアンとフォレストダンジョンの部隊が合流し、再編成が完了したので、このまま攻撃を開始することで全面を担うそちらの西部部隊の負担を減らすことになると思います」
環がデイトとカーラスへと返答する。
「デイト様とカーラス様が南北の部隊に参加し攻撃力をまして、邪神軍の攻撃を分散させるということですね」
「ええ、南部部隊は竜族の戦士ふたりもおります。邪神を攻撃に参加させる前に多くの魔族を抑え込む必要があります」
邪神が戦闘に参加すれば強者全員が邪神の対応となる。しかし、サタナキアやサーベラスとも対峙することとなる。上位以下の魔族はできるだけ殲滅させたい。それはここにいる者、いや、この戦場にいる者全てが同意することであるが、一気に進軍し乱戦となればこちらの被害も甚大となる。今の求めるのはこちらの被害を最小に多くの魔族を殲滅する作戦だ。
「あれ使っちゃいません? 」
葵の軽く場違いな声音が音量以上に通った。司令官が葵に尋ねる。
「特務騎士殿の仰るあれとは、後方に控えている防衛兵器のことでしょうか? 」
「はい、数キロ後退すれば使えますよね? 」
「しかし、みすみす邪神軍の進攻を許すことになります。失敗すれば、ただ進攻させたことになります」
「でも、もともとあそこまで進攻させる予定でしたよね? 」
「そうですが…… 作戦変更し後退時に使用する事になったではないですか」
「けど、デイト様もいないし、カーラス様の合流も遅れるなら使った方被害が少ないですよ」
「し、しかし…… 」
司令官はあまり納得できていないようだが、葵の意見にマノーリアが援護するように口を開く。
「司令官わたしも防衛兵器を使用に賛成いたします。我々でも上位の魔族は苦戦を強いられます。であれば、まずは邪神軍の絶対数を減らしたいところです。ただし、生産系魔族であるファーマーが今なお健在なので、一度数を減らしてもまた下位であればすぐに尖兵を産み出すでしょう。だからこそ一度殲滅し、ファーマーを倒すことも作戦のひとつと考えます」
「確かにファーマーは上位も産み出せる魔族だ厄介この上ない」
白檀がマノーリアの意見に同意し、守星調査隊の面々も同意見であることは表情からもわかる。司令官はそれを見て返答する。
「我々の最高峰の皆さんからのご意見だ前向きに検討しましょう」
こうして防衛兵器使用する為の戦力的後退をすることになるのであった。
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