50-守星調査隊編成会議
翌朝、葵達は環に大社へ集合するように命令を受けて集まった。白檀の帰国に伴い正式に隊の編成を行う事となった。集まったのは葵、マノーリア、梔子、咲、花、柊、白檀、環、デイトそして信治が集められた。
「皆さん集まっていただいてありがとうございます。白檀さんがお戻りになられたので、正式に今後のお話をしたいと思います。マニーちゃんとクーちゃんには先日もお話しした通り職位を解任して、新たな隊に加わっていただきます。白檀さんは団長職を副団長に代行してもらいます。咲さんと花さんも問題ありませんか?」
「選ばれたのは嬉しいのですが、わたし達が選ばれるだけの実力が…」
「昨日のあなた達の使ったお父様の能力は別としても、お二人は斥候隊でクーちゃんとも連携していたことと、少ない数ですが、葵さんやマニーちゃんと実戦を経験しています。新たに編成する隊で初めて顔を会わせる人よりも、おふたりの方が適任と判断致しました。」
「そうなんですね。お姉ちゃん頑張ろ!」
「そうね、皆さんよろしくお願いします!」
「咲、花これからも頼むよ~!」
「隊長~!わたしは相棒ですからね♪」
「咲、もう斥候隊でなくなるから隊長はなしね」
「そうですね…じゃクーさんで」
次に環が信治に尋ねる。
「信治さんの意思は変わりないですか?」
信治が下を向いて返答しない、昨日の失敗が相当答えているようだ。柊が信治に返答を促しているが、小刻みに震えて下を向いたままだ。葵が信治に少し強い口調で声をかける。
「信治、まずは自分のしたことを認めろ!変わりたいんだろう?信治のしたことでみんなに迷惑をかけた事は間違いない!責められても仕方ないことをした。それは事実だ!人に迷惑かけた事実を認めなければ先には進めないぞ!」
「ぼ、僕は役にたちたかっただけだ!」
梔子が信治を叱責する。
「相手の力を理解せず、自分の力を鵜呑みにして、役割を無視して、前衛まで勝手に来て、戦略度外視した行為のどこが役にたっているの?その後に戦意を失ってひとりで逃げることすらできなかったよね?」
マノーリアが梔子を止めて葵が続きを話す。
「信治にとって厳しい言葉に聞こえるかもしれないが、クーの言っていることは事実だ。お前がどう思うかはお前の自由だけど、ここで自分のミスを反省してみんなに頭を下げられないなら、いつか誰か死ぬぞ!」
信治は正論を言われて反論できないでいる。それでもみんなの前で謝れないでいる。プライドが高いのか思いを拗らせているのか、周りが命の危険にさらされたにもかかわらず。その原因を作った本人はまだ自分の非を認められないでいる。葵がさらに信治に声をかける。
「出発まではまだ時間がある良く考えてくれ!信治周りを良く見ろ!これは誰かが作ったお前が好きなアニメやゲームやラノベの異世界物じゃあないんだ。ダメ主人公が成長するとか活躍するとかの物語じゃないんだよ!俺達と旅する人はこの国のトップレベルだ。国家レベルで旅の同行者の面々を選出してくれているんだぞ!信治お前が守りたいものは一体何なんだ?プライドか?旅をしたい本当の理由は何なんだ?よく考えてくれ!」
信治が葵を睨み付けて反論する。
「葵くんに何がわかる!僕の事何も知らないじゃないか!なんで僕だけ責められなきゃいけないんだ!」
「ああ!知らないよ!でも、お前も俺達の事知らないよな!お互い様だ!だからこそ命を預ける為にも、互いを信じられなきゃ預けられない!責められれば逆ギレか?俺はお前を責めているつもりはない!責められてもおかしくない事をした自分のミスを認めろと言っているだけだ。それが理解できないなら話は進まない、話は終わりだ。環さん時間とらせました。先を進めてください。」
環はこめかみを指でおさえている。一度タメ息をついてから、仕切り直しと口を開く。
「では、信治さん辛いかもしれませんが、考える事も必要です。同行するのであれば、訓練は続けてください。支獣の作成を検討していましたが、今の信治さんの精神力では残念ながら作成はできません。もう少し心も鍛える必要があるのも事実です。信治さん良く考えてくださいね。咲さんと花さんは支獣作成しましょう。柊さん信治さんをお願いしますね。」
「かしこまりました。」
白檀が戦闘時のポジションを指示する為にテーブルに駒を用意する。
「前衛はクーと咲で陽動、遊撃に右翼に葵が入り、左翼は俺だ。中衛に右翼にマニー左翼が柊で中央が花だ。後衛は環と信治だな、これを基本陣形とする。で、デイト様はどうすれば良い?基本は前衛だろう?」
「わたしはとごても問題ありませんが、今回は後方で環さんと一緒にいるようにします。もし、何かあれば前衛へ加勢しましょう。」
「わかった。」
その他、各役割や担当や出発までの準備の割り振り等を決める。更に地図を広げて経路を確認する。最初の目的地は、ロスビナスより南方にあるフォレストダンジョンにある植物創成の神である眷属神エレンを奉る霊森神殿となった。デイトが環に尋ねる。
「確かあの森林はエーテルの民しか歩けないかと?わたしのナビゲーションシステムも不調する結界をエーテルは施しておりましたから」
「ええ、ですので現地に着いたらガイドをつける必要がありますね。フォレストダンジョンにはガイドを生業としているエルフの方もおります。」
葵が環とデイトの話を聞き口を開く
「そんな凄い森なんですね~」
マノーリアが答える。
「葵くんフォレストダンジョンの大森林は人だけで入るのは自殺行為なのよ、クーみたいなレンジャー職をとってもあそこだけは無理なの」
「マニーの言うとおり、入ってすぐに方向がわからなくなる感覚と森の外の景色が見えなくなるからね」
梔子が補足するようにその森林の様子を語る。初回の会議はここで終了となった。
「では、今夜の使節団の帰国祝いの式典で報告することにします。咲さんと花さんは本殿へ行きましょう」
柊と信治以外は花と咲の支獣作成に同行した。信治がこの挫折を乗り越えられるのかは誰も知らない。本人ですら諦める気持ちが勝っており心中はやさぐれていた。
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冬童話2021投稿用に、連載中のSTRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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