500-デイト離脱
連結した魔艇の先頭が青黒く輝き、強大な圧縮された魔力が集まる。魔艇の船首が蘭の花弁のように開き、魔力が中央に集中し邪悪な輝きを放つ。
「退避してください! 」
デイトが取り乱したように声をあげ、いくつもの岩壁を作り、顕現していたダイアモンドナイトを呼び先行させ、さらに2体のダイアモンドナイトを顕現させる。デイトの眷属で最強のダイアモンドナイトは、同時に顕現させられるのは3体までであり、デイトは強引に2体を顕現させたせいか、肩で息をしている。さらにデイトの他の眷属たちが前に出て壁のように立ちはだかる。
「結界を! 」
デイトはさらに息をつく間もなく、結界を展開しようと手をかざし、それだけでも足りないと言うことなのか、端的に結界を作るように皆に指示を出し、それに応じ、麻衣、ナズナ、ジンジャー、環がすぐに結界を作り出そうと手をかざす。
「間に合わないか! 」
デイトが皆よりも前に出て自分の後ろにと岩壁を作る。
「デイト様!! 」
次の瞬間、周囲が暗転した直後、爆風が押し寄せる。結界の顕現は間に合わない、皆が防御魔法や職能による防御で更に身を守る。
「デイト様ー!! 」
「デイト様!! 」
皆がデイトの名を呼ぶが、デイトの姿は岩壁の向こう側で状況はわからない。その時デイトの施した岩壁に亀裂が入り爆散する。目の前が明滅し爆風が過ぎ去った。
「皆無事か? 」
「大丈夫です」
「生きてまーす」
「こっちなんとか…… 」
白檀の呼び声に各々が返答する。白檀が次に萌に声をかける。
「萌! そっちは平気か? 」
「こっちは大丈夫です。爆風だけだったので、凄い爆発でしたけど……… みんな大丈夫ですか? 救出必要ならすぐに前進可能ですよ! 」
萌は白檀に返答するが皆の安否がわからない為か、途中声が揺れるが、気を取り直したのか最後は語気が強まった。白檀は少し優しげな声音を萌に投げ掛ける。
「萌が前に出る必要はない。待機してくれ、それと現在デイト様以外は無事だ」
「デイト様は? 」
「今から安否確認する。状況わかったら報告する」
「わかりました…… 」
白檀はそう言って萌との念話を終了して皆に声をかける。
「前方警戒しつつデイト様を救出するぞ! 」
「了解! 」
崩れた瓦礫の山に飛び乗り前方を確認する。魔艇と最前線の間にいた魔族の軍勢が蒸発したように姿を消している。瓦礫の山のしたに4つの影があった。
「デイト様! 」
葵が声をかけ瓦礫の山を飛び降りるようにかけていく、デイトは大剣を地に突き刺しもたれ掛かっている。葵が声をかける。
「デ、デイト様! 」
「あ、葵さん…… ぶ、無事で良かった…… 」
「デイト様…… 神様だからって無茶すんなよ! 」
葵がデイトを抱き抱えその場に横にして、腰元のポーションのアンプルを取り出しデイトに飲ませる。
「ご、ゴホッ」
「ポーション飲めないほどにダメージ受けてるじゃんか! ヒール! ヒール! 」
「心配無用ですよ…… 極地で同等の力を受けた時よりもダメージは受けておりません。経験が役に立ちました…… それに彼らが…… 眷属たちが盾に…… 」
葵がデイトの前に立ちはだかるように立つ、3体の煤けたダイアモンドナイトに声をかける。
「お前たちは耐えられたのか? 」
ダイアモンドナイトは、葵の声に反応しなかったので、葵はデイトを片手で抱きながら、もう一方の手を一体でダイアモンドナイトに伸ばそうとすると、ダイアモンドナイトが砂のように崩れ霧散する。それを見てデイトが小さく口を開いた。
「これだけ防御してもそなたたちでも耐えられなかったか……
ご苦労だった…… 」
ダイアモンドナイトはデイトが存在する限り、また復活はできるが、最強の眷属を盾として使い、本来の実力を発揮することなく霧散した。葵はダイアモンドナイトに伸ばしていた手を強く握りやり場のない怒りを拳に込めて地面を叩く。
「葵くんデイト様は? 」
「無事だ! すぐに後方へ」
マノーリアが駆けつけ、その後を他の皆も駆けつけ、前方を梔子やナズナ、ベルーフが警戒に当たる。デイトがよろりと体を起こし口を開く。
「すぐに魔族の攻撃が来るでしょう。先ほどのか攻撃は何度もできるものでもないはずですが、今のうちに叩かなければ…… うっ…… 」
デイトは痛みをこらえるように小さくうめいた。デイトの装備しているゴーレムパワードスーツもいたるところが破損している。白檀がデイトに声をかける。
「デイト…… 装備も限界だ。一度後退を…… 」
白檀の声だが口調から鳳凰が語りかけたようだ。
「すまない…… 」
デイトが小さく返答する。マノーリアが声をかける。
「デイト様少し休んでください。アリス、デイト様を花ちゃんの馬車へ」
マノーリアは支獣のアリスに股がり葵からデイトを預かり抱き抱える。白檀がマノーリアに声をかける。
「マニー後は頼んだ」
「はい、命に別状はないです。デイト様を花ちゃんに預けたら戻ります」
「いや、マニーはそのまま馬車で待機を予想以上に負傷者が出るかもしれん。こちらには回復役のナズナもいる。重傷の場合はそちらに向かせることになる。花だけでは対応しきれないかもしれんからな」
「しかし、白檀お兄様! 」
マノーリアは自身の後退を受け入れがたく白檀に反論しようとしたが、白檀に手で制止され被せるように白檀が口を開いた。
「お前が後退する代わりに、ナズナの支獣とジンジャーを上がらせてくれ、咲と花にはまだ力を使うなと伝えてくれ、馬車は後衛の環たちと合流し環の結界ないから援護をしてくれ」
「わかりました…… 」
マノーリアは不承不承に応じる。当然、白檀の対応は理解できる先ほどの攻撃を受ければ負傷どころの話ではない。指揮官として治療師としては納得できるのだが、しかし、マノーリアの騎士としての一面がそれに納得できずにいた。白檀は豪快に笑いマノーリアに声をかける。
「ずっと後ろにいろとは言ってないからな! 騎士として必要だと思えば前に出ろ! 本隊の治療師もそのうち合流するだろうからなそれまでだ! それにカーラス様たちだってそろそろ合流するだろうからな! 大丈夫だ! 」
「はい」
白檀のとなりに立つ葵もマノーリアに声をかける。
「マニー安心して後衛を頼んだ」
「ええ、それでは後方に下がります」
マノーリアはそう言って支獣のアリス駆り後方へと向かった。
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