49-神降ろしのリスクと白檀の覚悟
今のその容姿は、ここにいる者の誰よりも幼く見える。最年少の花が16歳であり、身長の低さや童顔であることを考慮しても、同い年か年下にしか見えない。しかし、実際この場の誰よりも年長者であり、もっとも強者であり、この世界の神のひとりである。眷属神デイト・ア・ボット。大地創成の神としてこの世界の人々に崇められている存在だ。本来の姿はこの大陸にある山脈最標高の霊峰デイト・ア・ボットだが、幼き少女の身体は過去に人々と生活ができるようにと女神アマテウスによって仮の身体として生み出された。いつもは無表情で抑揚のない口調の彼女が声を荒げて白檀に大剣を押しつけ、詰問をしているが、その相手は白檀ではなく明らかに別の者に対してなのが、周りでその様子を見ている者からもわかった。
「鳳凰!貴様!身体を失くしまさか神としての責務を見失ったか!返答によっては貴様を斬る!」
白檀がデイトの言葉に笑みを浮かべる。いや白檀でなくそれはおそらく鳳凰をが笑みを浮かべたのだ。鳳凰はデイトへと声をかける。
「ふっ…相変わらず融通の利かないヤツだ!責務を果たす為の最善の策だ!」
「お前が…お前の…その最善の策がお前の身体を失ったのを忘れたのか…」
「忘れておらん!あの時、わたしの身体を失うそれだけの代償で、お前と多くの民を救う事ができたのだ。最善の策だ。」
「しかし!それによって白檀を犠牲にして良い理由にならん!」
白檀が微笑みデイトを見つめながら答える。
「デイト様よ~俺は犠牲でもなんでもねぇ~よ!俺は鳳凰様と考えは一緒だ!騎士になった時点でこの星を守るためならなんでもやるって決めたんだよ!」
白檀の表情が代わりおそらく鳳凰の人格に代わってデイトに答える。
「デイト!この者の意思や信念は本物だ!だから俺は加護でなく降ろすことにした。わたしの依代とすることにしたのだよ」
また表情が代わり白檀が鳳凰に尋ねる。周りから見れば自分に喋りかけている。
「鳳凰様!身体ひとつじゃ喋りにくいだけどよ~一度出てくれないか?」
「わかった。わかった。長時間は外には出てられんからな」
「わかってる!デイト様が納得するように話してやれって!」
すると白檀から炎のような物が抜け出てくる。鳳凰は本来の姿ではない為か少し透けたように見える。葵達の世界の鳳凰とは容姿が異なり鳥の頭に人のカラダに背から羽と長い尾を持った鳥人の容姿をしている。
「久しぶりだな、デイト」
「その姿にしてしまった事を今も悔やんでいる…」
「何度も言わせるな!これで良かったんだよ。あの時アマテウス様が邪神と相討ちになり眠りにつかれた。眷属神達が各々役目を果たしただけだ。俺は完全に消えたわけではない。犠牲はカーラス達だ。」
デイトと鳳凰は昔の守星大戦の話をしている。カーラステノーグとは大気創成した神である。現在、この大陸の地形は守星大戦時に眷属神らが、魔族から人々を守る為に造られた。代表的なデイトの山脈や植物創成の神エーテルのフォレストダンジョンの大森林などがある。カーラステノーグは気流で結界を作り、自身が生み出した種族を率いて魔族に対抗し全滅している。鳳凰は自身の生み出した種族を全滅させたが自身の思念だけは自身の武器だった大太刀を依代にして生きながらえた。
「白檀さん本当に覚悟できているのですか?神降ろしは鳳凰だけでなくあなたも大きな犠牲を伴うかもしれません」
「デイト様!さっきも言ったが覚悟はできてるし鳳凰様ともその辺ちゃんと話して加護でなく鳳凰様全部の力をもらったんだ。」
「わかりました。しかし、そうであればせめてともに戦う友、そしてご家族には話すべきでは?」
白檀が頭をかきながら答える。
「まぁ~デイト様の言うとおりなんだけどな~中々…言い出せなくてな…」
「わたしが代わりに皆さんへ説明致します」
「デイト様すまないな!」
模擬戦を見ていた皆が戦闘が中断し話している姿を見て近づき環が代表して白檀とデイトに尋ねる。
「お話されていたようですが…そして白檀さんから出られたこちらの方は眷属神鳳凰様でお間違えありませんね?」
デイトが答える。
「環さんのおっしゃる通りです。白檀さんは加護を得たのではなく神降ろしを受け入れ今は鳳凰の依代になっています。」
「依代と言いますと…」
「俺の中に鳳凰様が入ってるって事だ」
神降ろしとは言わば神を人の身体に憑依させることを言う。
「降ろしは加護と違い我々神を人の身体無理に押し込める行為です。降りた神の力を余すことなく使用する代わりに代償があります。」
皆がデイトの話に驚愕し凍りつく。
「ビャク兄!代償って何よ!」
「クー大したことじゃねーよ!」
「白檀さんに適正がなければ死をもたらします。かなりの適正を持ち合わせているので、こうして普通でいられるのでしょう。しかし、人の身体に入った神は人の欲や煩悩にさらされることで魔神のリスクを伴います。鳳凰が魔神になれば、当然白檀さんが無事でいられることはありません。」
「わたしも白檀も承知の上だ。デイト良く考えるのだ、以前の戦いで、我々は邪神を倒せなかった。もし、今、アマテウス様より先に邪神が目覚めた場合に倒せる保証があるか?」
「だからこそ、我々の加護を与え人の力を最大限引き出す。昔と大きく違うのは転移者の葵さんがいることだ。」
「転移した青星の民ひとりで、戦況を大きく変えることはできんよ!」
「アマテウス様は青星の民に何かしらの力を与えたはず!そして邪神を倒す術をアマテウス様は考えておられたはずなのだ。」
環が眷属神両者の間に割って入る。
「鳳凰様、デイト様今はなせることをいたしましょう。鳳凰様もデイト様も守星への思いはわかりました。アマテウス様をお目覚めになるまで死力を尽くしましょう。」
鳳凰が環と葵を見て声をかける。
「そなたがウズメの後継者か、確かにウズメと近いものを感じるが、まだ力を出しきれているわけではないようだな、民達の導きを頼んだぞ!そちらが転移した青星の民か…神無月葵と言ったなよろしく頼むぞ」
「鳳凰様。女神の代行者として死力を尽くす所存です。」
「俺が何ができるかわかりませんが、やれることはやりますよ。それが俺を救ってくれたみんなへの恩返しだと思うので、それにマニーやクーそれに咲や花も信頼できる一緒戦った仲間の為にももっと強くなりたいです。」
「よし!じゃデイト様そう言う事で!よろしくな!」
「デイト頼むぞ!わたしはそろそろ白檀の中に戻るとする」
そう言うと鳳凰はすっと白檀の中に入っていった。
「団長~加護どころか神様憑依させてるとかチートも良いとこじゃないすっかー!」
葵が白檀を半眼で見る。白檀が答える。
「葵~そんな事言うなよ~酒おごるからさ~!」
「なら、白檀お兄様!葵くんだけでなく、ここにいるみんなへお願いしますね~」
マノーリアがすかさず白檀に釘をさす。梔子が咲と花に指示を出す。この街1番のレストランの予約の指示だ。
「咲、花!ダッシュで予約!あたしあそこのフルコース食べたかったのよね~」
「隊長!死力を尽くし予約してきます!」
「咲、花俺のエール乗っていけ!」
「ありがとー葵さん!行ってきまーす!」
「お前ら調子に乗るなよ!」
白檀が本気で怒ろうとしたが後ろから環に声をかけられおとなしくなる。
「白檀さん、わたしにも教えていただけなかったのは、残念ですね。ちなみに今日お食事はプライベートですので騎士団の経費処理しないように副団長に指示しておきますね♪」
「たまき~!勘弁してくれ~」
その夜葵達はたらふく豪遊した。高給取りといわれる一般騎士の1ヶ月分の給与を超える金額が白檀の財布から消えていった。
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冬童話2021投稿用に、連載中のSTRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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