4-騎士見習いはじめました。
葵は、騎士見習いとしての生活がはじまった。日本人であることから、団長の白檀は特例として葵の教育係をマノーリアと梔子を選んだ。この世界に来て知り合った、ふたりの美少女が教育係とは、運がいいと葵は思った。騎士団全体の朝礼が終わり、各隊に別れ訓練が開始となる。今回使節団の中にマノーリアの隊は参加していないマノーリアは、騎士長兼任で皇女近衛騎士隊の隊長である。隊員である他の騎士は、自国で皇女の近衛をしている。一方梔子は、騎士団の中でも、数少ない斥候隊の為、隊員の騎士は全員選抜されている。その為、梔子は教育係とはいえ、自分の隊も管理しなければならないので葵とずっとはいられなかった。白檀は、今日はふたりは葵ととは言っていたが、やはり梔子も隊長、半日は、隊の訓練を確認したいとの事だった。
「クーは、今日何時から、隊を抜けられるかしら?」
「そうだね~ お昼は一緒に食べれると思うよ」
「それじゃ、葵くんの武器と防具は、クーと合流してからにしましょう。わたしも、人の武器や防具選びは苦手なので…… 」
「了解~! そこは任せておいて~! その代わり、午前中の講義はよろしくね! 葵くん頑張ってね~! 」
「梔子隊長承知致しました! 」
葵は、ピッと敬礼し梔子を見送る。それを見て、ふたりもクスクスと小さく笑う。その後、講義を行う為2階のマノーリアの部屋に行く途中、マノーリアが頬を赤く染め、モジモジしながら葵に謝罪してきた。
「葵くん、朝はごめんなさい…… 痛かったよね? 」
マノーリアは、幼児帰りした口調で申し訳なさそうに上目遣いをする。天然物のあざとい仕草、これは、許すも何もご褒美でしかない。
「気にしてないよ、俺も酒によってたし、いくら自室とはいえ、マナー違反だったよ、こちらこそゴメン」
「謝らないで、昨日は、勝手に決闘させちゃったこともあるし…… 」
「そういえば、マニーに何か、してもらうことにしてたね?」
葵は、おもしろくなって、マノーリアをからかいはじめる
「えっ…… その…… えっと…… ェ…… エッチなことじゃなければ…… 」
マノーリアが、自分で言い出して、自爆している。思考回路がエラーしているようだ。
「あの…… その…… クーとか他の女性騎士の人達にも、言われたんだけど…… 朝、男の人は…… その…… 勝手にそうなるというか…… あんな…… ふうになっちゃうというか…… 」
朝の事故の時に、葵の全裸を見てひっぱたかれたのではなく、葵の物は、二日酔いもせずに元気だったのをマノーリアは見てしまったようだ。葵は気がついた、マノーリアや梔子が免疫がないのに、異様にその辺りにふれようとする感じ、耳年増になっている。双子の妹も似たような時期があった。特にこのふたりは、すでに騎士団に入団し、騎士団の中でも職位を持ち実力もある。その上この容姿なので、なかなか同年代の男もよりつかない。同年代の他の女性よりも、その辺の成長は遅れているのだろう。時期が来なければなおらないであろう。
「健全な男子の朝! ただそれだけだよ。見るものでもないし、見せるものでもない、気にし過ぎ! 事故! 事故! 見たいなら見せるけど俺は……? それと今度時間ある時に、デートしようよ! それで決闘の件はなかったって事で…… 」
「み…… 見せなくていい! えっ? デ…… デート? 」
「そっ…… デート、まぁ、ふたりだとマニーが緊張するなら、昨日みたいに3人でもかまわないよ! 」
マノーリアが口を尖らせムッ~っと、葵を睨んでいたが、デートと聞いてたじろぐご褒美タイムだ。あまりからかっていても講義がはじまらないので、マノーリアの部屋に向かう。
マノーリアの部屋は、騎士長でも葵と同じ間取りだ。そもそも、葵に用意された部屋が、士官用だから当然同じになる。
講義の内容は、国と政治の事や軍の事そして騎士団のことだった。
ロスビナス皇国の政治は、元老院議員制で、議長がトップで成り立っている。皇女は、元老院が正しく運営されているか、監視する役目と、国の象徴と世界平和の祈り、そして結界の維持管理がある。結界の維持管理は便宜的なもので、業務のほとんどは儀式が多い。厄災が起こる前兆を、神器である、女神の鏡が、写し出すので、儀式が慣例的とも言い難く、深く信仰されている。
ロスビナス皇国は、徴兵制度をとっている。16歳から、一年間性別に関係なく、徴兵され、予備役は2年とされている。現在は、ストロングスピア防衛戦以降、守星連盟の推奨として、ほとんどの国が、徴兵制度を導入している。皇国軍は、正規兵数は20万人・予備役兵が100万人となる。皇国の人口は6000万人おり、防衛戦のような、有事があった場合は、守星連盟より、各国へ、守星総動員体制が発令され、民兵がさらに加わる。冒険者は有事の際は、民兵とされる。騎士団は、軍内部の部隊であり、総勢2万人の騎士がいる。騎士団への入団は志願となり、その門は、広く開かれているが、基準値以上の魔力が必要となる。国内の主要都市やストロングスピア城塞都市に配属されている。戦闘時は騎士団が先陣をきる。
マノーリアの講義で午前中は終了し、食堂で梔子と合流し、午後は武器・防具を新調することとなった。
「葵くん、その剣、何度観ても綺麗だよね~」
「ベルガモットお兄様が、団長になられた時に、オーダーされた剣よ」
「ベルガモット団長は、中古なんて言ってたけど、全然新しいよね?」
「お兄様は、槍を普段使うから、槍が不利な状況、室内とか、ダンジョンとかでしか、使わなかったんじゃないかしら?リーフ家は、代々、槍の騎士ですから、わたしの父も槍の騎士だったのよ!」
マノーリアは、少し誇らしげに言う
「へぇ~、マニーも槍?そういえば、マニーは武器装備してないね?」
「昨日は、会合だったし、わたしは薙刀よ、父から槍の手解きはされたけど、薙刀の方がわたしには、向いていたみたい。」
葵が、ベルガモットより、譲り受けた剣は、オーダーメイドの一品物で、ブロードソードに類する直剣だが、剣先は細く鋭く尖った形状をしており、エストックに近い形状をしているがそこまで長くなく、全長は90センチほどでブロードソードとしては、若干長めに作られている。ガード・ナックルガードの装飾は、最低限に抑えられており、実用的な美しさがある。グリップと鞘に同色の皮が巻かれており、鞘の両端と中間に、ナックルガードと同色の金属で補強されている。華美な剣ではなく、シンプルなデザインが、逆に葵には美しさを感じさせた。
「葵くんの闘い方、だと、ピッタリな剣だね!まぁ、ベルガモット団長も、闘ってる姿を見て、この剣が良いと思ったんだろうけどね」
「そうなの? 」
「葵くんは、横薙ぎや突きの攻撃が多いからね?でも、これからは少し応用していかないと、強い相手だと、攻撃が読まれちゃうからね! 」
梔子が人差し指を立てながら、葵に助言する。そうしているうちにに、3人は、臨時の騎士団装備庫に到着する。
「まずは、魔装衣からかな~ 」
「魔装衣? 」
「これこれ! 」
梔子が自分の服をつまみ、葵に見せるが、マノーリアが詳しく説明する。魔装衣とは、皇国騎士団が採用している。支給される衣服で、ロスビナスに生息する、モンスターの生糸から作られる生地に、魔法をコーティングする事で、合金並みの強度を持つ生地となり、その生地で作られる衣服を魔装衣とよぶ。ロスビナス皇国の産業の一つである。
「だから、ロスビナスの騎士団は、ここの騎士団より、武具が軽装なのか? 」
「そうね。正解! 次は胸当てとブーツにそれと、グローブね」
マノーリアが、てきぱきと揃えて行く、するとマノーリアから葵に質問がなげられる。
「葵くん、盾は使う? でも、大きいのはむずかしいから、バックラーかしら? 」
「防御力は高めたいから、盾は欲しいけど、手がふさがるのは、ちょっと嫌かな、腕に固定式のも、外れそうで心許ないかな? 」
「クー何かオススメの防具ある? 」
「じゃあ、これは? 」
梔子が、提案したのは、肘から手先まで覆う、ガントレットだが、通常の物より、頑丈に作られており、盾のかわりに使用するようにできている。葵は一目惚れする。
「これいい! イメージ通り! 」
「じゃあ、着替えてみましょうか」
葵はマノーリアに無言で脱いで良いのかを視線で問う。マノーリアは葵が何を言いたいのか気がつき頬を赤く染める。
「き…… 着替えるくらいわたしだって平気だもん! 」
マノーリアが口を尖らせ、葵に返すが、幼児帰りした口調なので、おそらく朝の事故をまた思い出したのだろうと葵は思った。
着替えが終わり、葵は鏡を見て唸る。
「なんか、異世界って感じ! 」
葵は、ふと脱ぎ捨てた服を眺め、こちらの世界の服だと気がつく。異世界転移はカラダごど来てないのかな?
前のカラダはどうなった? と疑問に思う。もしくは服だけ変わってるのか? 答えはでないので、思考を切り替える。
「後は、コートとね。クー! サブの武器選びお願いできる? 」
「ハイハ~イ!どうしようか? 」
「ショートソードとか? 」
「サブって言っても、常時携帯の副装備だからね。ブロードソードと長さが、ほとんど変わらない副装備は、邪魔だから携帯しないでしょ? あたしみたいに、二刀流する? 」
「ショートソードってもっと短いと思ってた」
「それは、ダガーとかナイフになるかな? 」
「クーのは、ショートソードになるの? 」
「そう、あたしのはショートソードになるね。でも、あたしのもオーダーメイドの一品物だからショートソードの中では短い剣になるね。あたしもこの2本以外にナイフも持ってるよ。葵くんがイメージしているのは、こっちじゃない? 」
梔子がダガーやナイフが置いてある場所を指し示す。
「こっちだね! これが良いかな? 」
葵は40センチ位のダガーを選び、ブロードソードに近い色合いの物を手に取る。
「後は、作業用のナイフとバックだね。どれがいい? 」
「クーみたいなのが使いやすそうだけど…… 」
「じゃあ~これが良いかな? 」
梔子が手にとって、葵に渡したのは、ウエストバックのようになっており、ダガーが差し込め、収納できる。グリップだけ、バックから出ていて、手をまわせば、ダガーが抜ける。外側に、作業用ナイフや少量の小物が入れられるようになっている、革のバックだ。小さな革製の小物入れを2つを、更に梔子から渡される。
「これは? 」
「ポーションパックね。腰回りとかベルトに着けてね。葵くんは魔法を使えないから、ふたつあって良いと思う。ひとつに5本収納できるから」
「ヒール6本と、マジックは、葵くんはいらないから~ ポイズンが解毒薬ね。とパラライシスは解麻痺薬を2本づつかな。葵くんが、騎士っぽくなってきたね~ どうマニー? 」
「素敵な騎士様になったわ! では、騎士様! 装備が揃ったので、手合わせいただこうかしら? 」
「えっ? 」
「教育係としては、葵くんの今の実力を知っておかないと、ダメでしょ? 」
「マニーそれはおもしろいね~ 」
「ハ…… ハハ…… トレーニングとか基本姿勢とかからじゃないの? 」
「さっそく、演習場に行こう! 」
「じゃあ~わたしも装備してくるね! 」
「なんか?マニーが嬉しそうなんだけど…… 」
各々準備ができ3人は演習場に集合した。マノーリアは薙刀を側の壁に縦置き葵の前に立つ。
「葵くん、今日はハンデをあげるわ! わたしは副装備のレイピアを使用するわね! 」
「それ…… ハンデになってないよね? 」
「マニーはレイピアでも、皇国騎士団で10位以内に入るね」
「ハンデじゃないじゃん! 」
「葵くん、殺すつもりで来なさい! お互い傷つけても、回復魔法をかけられるから大丈夫だから! 」
「ふたりとも準備は良いかな?ヨーイはじめ~! 」
マノーリアが突っ込んで来て葵に突きの連撃をくり出す。葵は想定していた為バックステップし回避する。マノーリアは回避されたと認識し攻撃を中止すると、次は葵が仕掛ける。マノーリアの付き出していたレイピアを払い、葵がつめ突きをくり出す。
「お見通しよ! 」
マノーリアは、つめて来るのを読んでおり、左にステップし葵の後ろをとりすかさず攻撃に移る。葵は回避しかできない。
「もう、終わっちゃうわよ! 」
「クソ! 」
葵はすぐに向き直り、後方にバックステップする。葵は策を思考し、マノーリアを見て隙をうかがう。
(さすが、騎士長ってところか? 隙がない回避していてもいつかはやられる。何か手はないか? )
葵は、ひとつの策を思案する。マノーリアに勝てるとは思わないが、一手くらい、マノーリアに当てたい。マノーリアがつめてくる。葵は、左手のガントレットで、突きの猛攻に耐えながら、ブロードソードで突き・横薙ぎ・振り下ろしを変則的にくり出す。マノーリアは、盾を装備していないので、レイピアで払うか、回避するしかない。攻撃の回数が明らかに落ちる。葵は気がつくマノーリアの主装備は薙刀であり、相手との距離をとり戦闘するが、今は近接戦闘だ、マノーリアが好きではないはず、現に攻撃は減り、煩わしそうに回避した。であるならば、葵は今まで回避していたのは、マノーリアの闘いやすい状況を作っていた。あえて積極的に、近接戦闘するべきと思考しなおす。
回避したマノーリアを追うように、間合いつめて、猛攻に転じる。マノーリアは回避しながらも、平然と攻撃を払いつつ、突きの攻撃をくり出してくる。ガントレットで防御しつつ更につめる。マノーリアが大きくバックステップし、間合いをとる。
「そろそろ、決着つけましょうか? 」
「絶対に一当て当てて見せる! 」
マノーリアが攻撃を仕掛け、葵は今回はガントレットでなくブロードソードで鍔迫り合いに持ち込み、攻撃を止め、すかさず左手でダガーをマノーリアの胸に突き立てる。マノーリアは回避したもののそこで梔子の声が響く。
「まて! マニーが手加減してるとは言え、マニーに、一撃当てたのは評価に値するね~ 」
「葵くん、やっぱり見込みあるわね! 」
「手加減されてるとは、思ったけど…… 」
「それはそうでしょ~! マニーは突きの攻撃しかしてないよ~ レイピアも二刀刃だよ他の攻撃方法もあるでしょ! それに魔法を封じているだからさぁ~ 」
「そりゃそうだ! やっぱりマニーも強いな~ 」
「騎士見習い初日でここまでできたら優秀な方よ! 最初の一手で音をあげる見習いも多いのよ」
「じぁ~ 次はあたしの番かなぁ~ 」
梔子がイタズラ猫の顔で、葵の顔を覗きこむ。
「クー待って葵くんにヒールかけるわ」
「そこまでキズとかないよ」
「梔子隊長が稽古つけてくれるのだから万全で挑まないとね! 」
マノーリアが頑張って!と胸の前で両手を組む、次は葵の胸に拳を当て健闘の祈りを捧げる。
「わたしに一撃当てたこと自信持ってね! クーのスピードに気をつけてね! 互いに敬意をはじめ! 」
梔子がはじめの合図と共に葵の間合いに入り込む。2本のショートソードからくり出される攻撃は、多方向からくるように感じ、防御に徹するしかなく打ち返しができない葵は一本のショートソードをブロードソードで防ぎ、もう一本をガントレットで受け左手に忍ばせたダガーを突き立てるが梔子に見抜かれる。
「葵くん! あまい! あたし見てたんだからバレバレ!」
梔子はその場でバク転する。その反動で葵の手からブロードソードが離れ、数メートル先に突き刺さる。
「残念でした~ あたしの副装備のショートソードの理解が足りないよぉ~ 」
すぐに、葵はダガーを右手に持ちかえる。梔子の一本のショートソードはソードブレイカーで、刃の部分にカギ上の引っ掛かりの形状がある。それでバク転した際に持っていかれた。マノーリアと違い、近接戦闘は梔子の得意とする戦闘範囲だ。ダガーだけではさらに近接が必要となる。ブロードソードを回収しなければ、葵は一撃も攻撃を与えられない。
「さぁ~ 葵くんどうする~? 」
一目散にブロードソードを取りに行けば、梔子に攻撃を受けながらになる。
(攻撃は最大の防御って本当か? 妙案は浮かばない)
葵は、ブロードソードを方向に向きいつつ、梔子を警戒するが、梔子は身体能力を発揮し大きくジャンプし、ブロードソードと葵の間に立つ、葵は改めて梔子から距離を取る。葵は、ふと武器になりそうなものが、もう一本あることに気がつく。梔子にこちらが気づいたことに悟られないように、ダガーで闘う姿勢をとる。
(クーがジャンプした時がチャンスかも? ブラフか……? )
葵は梔子の攻撃を誘導する。
「あっー! 妙案が思いつかん! クー決着着けるぞ! ダガーで一撃与えるからな! 」
「あたしに近接戦闘で勝てるわけないでしょ! ちゃんと考えなよ~! 」
「もっと手加減してよぉ~! だって思いつくのクーのしっぽ掴むくらい思いつかないんだよ~! 」
「な…… なに言ってるの! 」
梔子が頬を赤く染め、お尻を隠すようにしっぽ隠す。マノーリアも口に手を抑え頬を赤く染めている。葵には、理解ができないがおそらく、今葵が言ったのは「おっぱいかお尻さわるしか、攻撃方法がない! 」と言ってるんだろうな? とふたりの態度を見て納得する。それならしっぽ隠せば良いのにとも思った。
(これで、俺のブラフに乗っかったかな? )
「エッチな事を言う葵くんは成敗する! 」
「近づいたら、握るからな! 」
「簡単にはさわらせるか~! 」
梔子はまんまと葵に乗せられ、ジャンプし一気につめてくる。葵は梔子が避けられないギリギリまで引き付け作業用ナイフを取り出し、梔子に目掛けて投げつけブロードソードの方向へ、受身をとるように転がる。梔子が仰け反るようにナイフを避け、体制を崩しつつも着地する。ブロードソードを手に取った葵は、持っていたダガーを着地寸前の梔子に投げつける。梔子は、とっさにショートソードで払いしのぐがマノーリアの声が響く。
「まて! 葵くんちょっとズルいけど、クーにブラフをかけたのは賢い判断ね。作業ナイフを武器に転用したのも機転がきいて良いと思うわ! 」
「葵くんのスケベ~! ズルいぞ! 」
「あの~ その感覚が俺わかんないだけど、そんなにしっぽさわるのいけないの? 」
「あ…… あたりまえでしょ! しっぽさわって良いのは添い遂げる相手だけなんだから! 葵くんはあたしと結婚してくれるの? 昨日は事故だから仕方ないけど、ホントに安易にさわるなら怒るからね! 」
梔子は口を尖らせ葵をムッと睨み付ける。その目は、恥じらいとともに涙目で訴える。説明されてもあまり実感はわかないが、結婚と言われると微妙な気分になるので、素直に謝ることにする。
「そこまで大切なことなんだ…… ゴメンな!」
「葵くんは、知らなかったのは、わかるけど…… 凄く恥ずかしいんだからね! もう言わないで! 」
「葵くん女性に対して本当に言わないでね。トラブルの原因になるから…… 」
マノーリアにまで念をおされる。
「わかったって、もう言わないよ! 」
「罰として、演習場外周10周…… 装備全部着けてだから…… 」
「えっ!? 」
マジで! と葵は梔子見るが、梔子は本気らしいさらに葵は勘弁! と手を合わせるが梔子は許さず、マノーリアも仕方ないよねと葵の胸に拳を当て健闘を祈る。梔子がピッとし葵を直視する。
「傾注! 神無月葵騎士見習い! 騎士たる精神を磨く為に演習場外周10周を命ずる! 歩いた場合はその都度1周追加だ! 命令を理解できたなら即行動に移れ! 」
演習場に、梔子の声が響きわたる。演習場で練習している騎士達も気がつきこちらの方向を見ている。演習場は一周1.5キロなので15キロの走り込みが、しっぽおさわり発言の罰となった。葵は、転移前に走っていたのでそこまで苦にならなかったが、出会った美少女ふたりは案外ドSなんだなぁと思った。葵は、想定済みだったが夕飯の時に団長の白檀に腹を抱えて爆笑されるのであった。
「だから…… 笑いすぎっすよ! 」
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
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