495-人間と魔族
葵たちは一度WBHへと戻り状況報告をすることとなった。
「霧で中の状況はわからないけど、あの中に入っちゃいけないのは、わかる感じだよね」
「魔族が出てくる様子もないか? 」
梔子が代表して報告すると白檀が質問を返した。
「うん。静かなもんだよ…… あの霧以外は…… 」
梔子が返答しWBHのブリッジからも見える空に伸びはじめた黒い霧はまだ上昇し続けている。環が葵と麻衣にも視線を向けるが葵は顔を横に振り、麻衣は肩をすくめながら口を開いた。
「あたしたちには何もわからなかったわ。クーがその辺りは1番なれているだろうし、偵察するとかってなかなか難しいわね」
「そうですか、確かに今のところあの霧に突入するのは避けた方がいいでしょうね。白檀さんはどうお考えですか? 」
環が口を開き次は白檀に尋ねた。白檀は腕を組ながら思考していたが、環に尋ねられ腕を解いて頭をかきながら答える。
「正直まだわからん。ただ情報はまだ集める必要はあるだろう。萌もう少しあれに近づき上空で待機だ」
「了解です! 」
白檀もまだ手を出すつもりはないようで、情報収集を行いたいようだ。葵がデイトに尋ねる。
「デイト様はあの霧の中は何か感じないですか? 」
「地形の変化は感じました。それ以上のことは何も、推測では、土壌を汚染し兵を収穫するつもりだとは思います。そこで、あの霧を展開したのではないかとは思います」
「確かに魔艇の艦隊で来たと言っても、すし詰めにしても魔族兵を乗せるには限界ありますよね? だから先にホールで送ったのか? 」
葵がデイトの言葉に納得する。デイトがコクりと頷き口を開いた。
「そうでしょうね。ファーマーがいれば魔族はいくらでも収穫できるでしょうからね。一般の兵は中位や下位の魔族を放ち、我々のところへ上位魔族は攻めて来ると思います。それが魔族の本能です」
「強者を求めるってことですかね」
「いえ、強者が挫折し屈する姿を求めています。アマテウス様が生み出したこの星の民たちが、抗う事をあきらめることが見たいのですよ。それに魔族からすれば我々は害虫と変わりません」
葵はデイトの言葉に深く息を吐いて肩をすくめる。まるで、何かをあきらめたような態度だ。それを見てデイトが葵に尋ねる。
「葵さんはまだ魔族が共存できる相手だと思っていた事を否定されたような態度ですね」
葵が苦笑して返答する。
「いや、頭ではわかっていたんですけどね。平和な世界にいて争いが身近にない生活を送っていたオレには、なんとなくどこかで、共存できないかって考えてしまうのかもしれませんね。もちろんそんな甘さで魔族に殺される訳にもいかないんで、情けをかけるつもりはないですよ。魔族が人々に今までしてきた事を許すつもりもないですし、そんな自分にちょっと嫌気がさしただけです」
葵もこの世界に転移してから、魔族に無意味に殺された犠牲者を何人も見てきた。それでも会話のできる上位魔族ならば話し合いでどうにかならないのかと思ってしまうことがある。葵が決戦になってもそう思ってしまうことが自分の甘さだと自責しているのだ。環が葵に声をかける。
「葵さんが思う事は世界が違うからではありませんよ」
「どういう事でさすか? 」
葵は環の言葉の意図が理解できずに聞き返す。
「わたしたちだって葵さんと同様の気持ちはありますから、それはわたしたちがアマテウス様に創られた人間だからだとわたしは思いますよ」
環がそう口にするとデイトもコクりと頷き口を開いた。
「民たちが文明を築く上で必要な感性です。それがなければ、魔族との争いの前に民同士の争いで民たちは絶滅していたのではないでしょうか」
「あー けど、あたしたちのいた世界は、どこかで国同士が戦争はしてたわね。そう考えると人同士でもわかりあえないって悲しいわね」
麻衣が苦笑しながら元いた世界を思い出すように口を開いた。
「わたしたちの責任もあるかもしれませんね。青星は民たちの文明成熟を待たずに、この星の創造に入りましたから、その結果。青星は多言語となり、心のよりどころに民たちが造り上げた多宗教が生まれたのでしょう。化石燃料と科学技術により発展する上で、理解しあう感性を上回る感情が武力で争うかたちとして現れているのでしょう。そういう意味では、この星は魔力での文明発展と絶対悪である魔族によって民たちのよる争いが起こりにくくなった。もしくは争う暇もなかったのでしょうね。武力を不要とできるならば当然その方が良いでしょうが魔族にはそれが通用しないという認識は改めてください」
デイトがそう言って地球とこの星の違いを語った。葵は理解しているとコクりと頷いた。そこにWBHのデッキで哨戒していたマノーリアたちから念話によって声がかかる。
「黒い霧の動きに変化があったわ! 」
「マニー今いく! 」
白檀が代表して返答する。
艦長である萌と後方の里菜とワークをブリッジに残し皆がデッキへと向かうのであった。
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