491-霊峰出陣計画
ロスビナス皇国海岸線中央より西へと横断する大地が決戦場として用意された。その決戦場の西側の端に砦が作られた。葵によって、その砦は星形要塞へと変形し、周辺の堀へと周辺の大河と地下水から水が送り込まれている。決戦場には東西に3本深い谷が刻まれ、海岸線の数十キロ手前で谷が合流し海へとつながる。ロスビナス皇国は数十メートルある岸壁の海岸線で、第2都市のシルドビナス周辺と北の一部がなだらかな砂浜があるだけだったが、今ではその高い岸壁の海岸線のちょうど中心に大陸へと誘うように大きな谷が口を開けている。
「砦の改修と決戦場の整備は計画通り完了しました」
数日がかりでおこなった改修工事が計画の工程が完了したことを報告される。
「邪神軍の上陸想定は? 」
「このまま行けば後5日程度と予測しております」
「突貫工事で皆さんお疲れでしょう。各部隊に順に休みを与えてあげてください」
「了解しました。ただちに」
守星連盟と各国の首脳が集まった会議の場で環が文官へと命じ文官は一礼し部屋出ていく。文官を見送った後に守星連盟の首脳が環に声をかける。
「心苦しい話ですが、皇女様追加の改修はしたとしても、最悪な状況となれば完全結界を行う計画はやむ終えないことかと…… 」
発言した首脳も完全結界をしたいわけではないが、立場上この大陸を防衛する事を念頭に行動している守星連盟の首脳であればの発言だ。環は一度目を伏せ軽く息を吐いて返答する。
「当然、わたしもそのつもりでおります。ただ、悪手であることには変わりありませんし、今回は邪神自ら軍を率いて進攻しています。完全結界で邪神を封じえなかったと考えるとできる限りの事はしていて良いかと…… 」
「それはそうなのですが、この砦も急造とはいえできることはしました。決戦場にも邪神軍が好きにできないよう策はこうじています。その上での悪手であるが他に手はないでしょう」
環は隣に座るデイトを一度みてデイトがコクりと頷いてから環は答える。
「もし、完全結界の作戦行うような事態になるのでしたら、その前に…… そうですね3時間前にひとつ作戦を足させていただきます」
「作戦ですか? 」
「はい、デイト様の御神体にて出陣していただきます」
「デイト様の御神体と言いますと…… 霊峰デイト・ア・ボットと言うことですか? 」
会議室にいる首脳陣は目を丸くして驚いている。静観していたデイトが口を開く。
「完全結界は愚策です。民たちだけでなく、この星の命ある者全ての為に作り上げたこの大地を望まぬ民の手で汚させるつもりはありません。ただし、わたしが神体で戦うとなれば、足下で民たちの動きを気にしながら戦う事はできません。主戦上の兵は後退させてください」
首脳陣の一人である女性がデイトに尋ねる。
「ちなみにデイト様は現在の人のお姿でもお強いですが、御神体となるとお力が更に増すと理解してよろしいのでしょうか? 」
デイトは少し思考するように指を顎に当ててから返答する。
「30パーセント程度向上します。しかし、あの巨体で戦闘するので、周辺の損害は覚悟していただきます」
「霊峰が動くわけですからそれはいたしかたありません。優先は邪神の討伐です。議長よろしいですよね? 」
環はデイトに答え皇国元老院議長に同意を求める。議長もコクりと頷き同意する。完全結界を作りだし結界によって絶対領域となれば、邪神軍を封鎖しても死の大地をを作り出す。それが大陸でも一二を争う大国であるロスビナス皇国ともなれば、他国を救えたとしてもその余波は間違いなく他国に押し寄せる。魔族との戦争が終わっても、次は領土のほとんどを失った皇国を起因し大陸全土に経済的大恐慌となり、復興どころでなくなる。小国であれば皇国より先に国が成り立たなくなる可能性がある。皇国内の戦争によって損害が起きても邪神を倒せば苦労はしても復興の希望は残るのだ。そして、他国は東側の復興支援によって経済が回り出す。この席にいる首脳陣は誰もが完全結界が悪手で、それはを使わなくとも邪神軍を倒す事を望んでいる。
「では、デイト様の御神体での出陣作戦を完全結界前に行う旨で決議いたします。作戦計画完了後、決戦計画書修正案として各隊へと報告します」
文官が首脳会議を纏めるように言って会議が終了した。
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