48-デイトと鳳凰
ロスビナスシティの門をくぐり街を歩くと人々が白檀達を出迎える。使節団本隊はこの後到着するが、この国の象徴である皇女と今まで唯一の加護持ちだったこの国の英雄である鳳凰白檀が帰ってきたので街は既に歓迎ムードだ。しかも、ホールの発生に即座に対応し魔族の侵入を防いだマノーリアと梔子の貢献も大きい。葵を公に知るものはまだ少ないので同行の見習い騎士と思っている人も多い。梔子が咲と花に声をかける。
「使節団は帰ったら解散式でそのまま連休のはずだから、ふたりも帰って大丈夫だよ!お母さんに早く報告してあげたら?」
咲が手を顔の前で振り梔子配慮を否定する。
「隊長~!ありがたいんですけど~母はまだ仕事の時間だし、何よりこの後、団長とデイト様の模擬戦が控えているのに帰れる訳ないじゃないですか!」
「そうですよー!あたし達ももっと強くならなきゃなんで!」
「ふたりがそう言うなら、かまわないけど…」
菅原とは店の前で別れて一行は騎士団演習場に向かう。
向かう途中で咲と花が葵達に尋ねる。
「葵さんわかれた後どうだったんですか?」
「土砂崩れで旧道に行って霊峰神殿に行くことになって、試練を受ける前に紫炎武術の稽古を受けたりスゲーハードだった事しか覚えていない」
「倒れるまで稽古して回復魔法で回復して、また稽古だったから確かにハードだったわね」
「それが、あの紫のメラメラなんですね!でも隊長はメラメラしてないですね」
「紫炎は奥義だから誰でも使える訳じゃないの!」
「わたしが紫炎を使える適正があったからみたいなの、葵くんはわたしの魔力を体内に取り込めたから、魔法が使えるようになったのよ」
「なんかすごいですね…」
咲と花がへーとあまり理解はしてない様子だ。確かに言われただけでは理解はできないだろう。葵が補足する。
「紫炎使えなくても、魔力循環をすることでかなりの攻撃力が増したと思うよ!クーもかなり強くなってるし」
「確かに隊長の動きが前よりも凄かったです!」
「咲~後で組手する~?♪」
「え、遠慮しておきます。ハハハ…」
「団長も使えるんじゃないですか?魔力循環」
「なんだよ!バレていたのか!俺も紫炎はいくら師範に教わっても使えなかったからな~」
「じゃ~ハリーさんやベルガモット団長も使えるんですね通りで強いわけだ。俺のはマニーの力を取り込めたからできているんですけどね」
「葵くん本人が目覚めさせたのだから実力よ!」
演習場に到着し白檀とデイトが準備をする。皆が興味津々とその時を待ち望んでいる。デイトは手をかざし試練の時と同様にミニゴーレムを発現させる。そしてゴーレムの胴体が割れてデイトがまとう。何度見ても鎧でなくパワードスーツのようなメカ的な雰囲気だ。
「わたしは準備ができました。」
「俺もいつでもいいぜ!」
葵がふたりに質問を投げかける。
「あの~ふたり程の実力者の見届け人を誰がすれば良いですか?何かあったら止めるんですよね?」
白檀とデイトが同時に葵に声をかける。
「お前だろ!」
「神無月さんしかいませんね!」
「ですよね~」
葵はふたりの間に立つ
「では、戦闘不能か降参するまでで良いんですよね?即死技と魔法は禁止で加護の力は使用可能って事で!」
ふたりともに大太刀と大剣を構え合図を待つ。葵が合図する。
「はじめっ!」
仕掛けたのは白檀からだ。
「烈火斬!」
炎を纏った大太刀がデイトを一刀両断するが大剣で大太刀を防ぐ、そのままつばぜり合いになるかと思いきや、デイトが吹き飛ばされる。白檀は手を緩めず剣技を惜しまなく放つ。
「怪火切り!」
火が意思を持つようにデイトへ追い攻撃する。
「火筒突き!」
白檀がデイトを突くと同時に爆発する。デイトが防戦に見えたが白檀の剣技をあえて受けていたようだ。デイトが感想を述べる。
「確かに鳳凰の力を感じますね。白檀さんの実力も充分あります。良い力です。ですが…」
「ありがとよ!神様と稽古なんてそうそうないからな!俺の剣技を受けて平気な顔してられる相手も初めてだ!不知火!」
大太刀がいくつにも見えて、本物がどれか見分けられない。
「鉄火斬!」
大太刀が真っ赤にまるでSF物のビームの剣のように煌々と光。デイトが大剣で受けて逆に白檀を押し返す。
「なるほど、中々の攻撃力ですが…加護の力でこの威力…」
デイトは納得しつつも何か違和感を感じる。まだその違和感に気がついてはいないようだ。
「もう少し、データが必要ですね。では、次は防御を見てみましょう。行きますよ。」
デイトはうってかわり攻撃に転じる。大剣を軽々と扱い白檀を攻める。
「流石にデイトだ!」
「????」
いきなりデイトが攻撃をやめる。白檀が拍子抜けして尋ねる。
「デ、デイト…様?」
「そう言う事ですか!」
いきなり白檀とつばぜり合いになる。
「ちょ、ちょ、なんなんだよ!」
「鳳凰!それは加護でなく!降ろしだ!大丈夫なんだろうな!」
デイトが荒々しい口調になり白檀に尋ねた。その言葉に全員が呆気にとられる。白檀本人も目が点になる。
「降ろし?」
白檀の身に何が起こっているのかデイトのみが知る。
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冬童話2021投稿用に、連載中のSTRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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