485-海戦
霊島サヨリ防衛基地
「邪神軍が視認できました! 魔艇4隻こちらに来ます! 」
「迎撃準備急げ! 絶対に上陸させるなよ! 海上騎士団出港を命令を出せ! 」
霊島サヨリに建築されたオーシャンガーディアン海洋国軍基地は、島の南側に位置し海岸沿いは軍港となっており、そのまま陸地に基地が併設され、オーシャンガーディアン海洋国特有の基地形状をしており、基地地下に司令部があり、海中からも出入りができる。これは海上騎士団と海軍のほとんどのものが、海洋人種である為である。地下の司令部へと砦から降りてきた伝令兵が邪神軍襲来を告げると、司令部はさらに慌ただしく人が動き出す。
「空中神殿付きの飛竜隊伝令からも戦闘開始されたとの報告が! 」
別の伝令兵が追加情報報告の為に現れた。司令部の士官が声をあげる。手には無線のように声を基地内に響かせられる魔法具を握っている。
「司令部より霊島サヨリ防衛任務全部隊へ! 邪神軍を確認した! 既に眷属神カーラス・テノーグ様率いる空中部隊が戦闘を開始した! 我々の目的は北決戦場への誘導とこの島への上陸の阻止だ! 邪神軍は全軍出なく4隻の上陸部隊が向かっているようだ! 全軍でこられたら武が悪かったが、これは好機! なめくさった邪神軍を返り討ちにしてやれ! 」
「オー!! 」
「やってやる! 」
「魔族を上がらせてたまるか! 」
司令官の号令に各兵が口々に自身を鼓舞する言葉を吐いて出陣する。
「カトラス騎士長! 出港準備完了です」
「艦長に任せます。わたしは隊の指揮に専念させてもらいます」
「了解。出撃だ! 海上騎士団カトラス隊全艦最大船速! 」
カトラス率いるオーシャンガーディアン海上騎士団の艦隊が沖へと船速をあげる。オーシャンガーディアンの海上騎士団は、旗艦艦長が艦隊司令としており、艦隊指揮をとりその上官の立場として、騎士団騎士長が乗艦しているが、騎士長は騎士隊の直接指揮や作戦行動を騎士隊と共にすることが多い為、指揮系統がふたつあるが、通常時の最高指揮権は騎士長となる。カトラスが艦長席の隣にある小さな水瓶に波紋が起きたことに気づき視線を落とすと次の瞬間サヨリが現れる。この水瓶はサヨリが転移するように用意された物なので当然だ。
「いよいよですねカトラスさん」
「はい、サヨリ様。霊島の守備はよろしいので? 」
「エーテルとマーレ姫が手を尽くしてくれています。わたしは海の守りてとして前に出る責務があります」
植物創造神である眷属神エーテルとサヨリの代行者であるオーシャンガーディアンの姫となった魔導師のポルトベッロ・マーレが、霊島の守りを固めている。サヨリが何か思考するように沈黙する。
「どうされました? 」
「カーラスと同調しておりました。邪神軍本隊はカーラスたち空中部隊が足止めしつつ北上させるように誘導するとのことです。我々も迎撃の後に合流いたしましょう」
「了解いたしました」
サヨリとカトラスが会話をしていると航海士長が艦長へと声をかける。
「艦長! 魔艇付近に嵐が発生し共に向かって来ます! 」
「嵐だと!? この晴天にか? 」
「間違いありません! 天候操作にしては大きすぎます! まるで以前のカーラス様が荒ぶる神になられた時のようです」
報告している航海士長の声音から察するに船乗りにとっても異様な天候であることは理解できる。艦長は顎をかきながら、サヨリとカトラスに視線を向け、ふたりの表情から嵐の理由が自身と同じ答えだと察し返答する。
「士長、あれは海洋に適応した上級魔族だ。カトラス隊が以前壊滅したのは知っているな? 」
「はい、それによっての再編成によってわたしは配属になりましたから」
「あの嵐だよ船を沈没させたのは…… オレはそん時に船長が戦死して船長になった。数ヶ月たって今では艦隊司令だ」
艦長はどことなく喜ぶてなく乾いた笑いを浮かべ改めて魔法具を握り艦隊へと号令をかける。
「こちら艦隊司令、全艦隊各員へ、今向かってくる魔族の親玉は、海洋に適応した上級魔族だ! おそらく攻撃する魔族の兵も適応した奴らが出てくる。以前からカトラス隊にいるものは、一度経験しているからわかっているだろうが手強い相手だ! 前方に見える嵐は、魔族たちがサヨリ様の結界内で行動できるようにしていると思われる。あの嵐がさらに範囲を広げると思われる。嵐を止めるのは我々では無理だ。功を焦り親玉を狙うようなバカはいないと思うが、そちらはサヨリ様に任せるしかない! 我々は霊島への上陸阻止! 北上させることだ! 以上! 」
サヨリが艦長を見てにこりと笑い口を開いた。
「わたしを倒す為に産み出された新たな魔族ですからね。確かセイレーンだったかしらね。わたしの海を汚させはしません。カトラスさん艦長、出撃します。後はお願いします」
「ご武運を! 」
カトラスと艦長がサヨリに敬礼するとブリッジにいる船員が続く、サヨリは笑みを深めてその姿が水瓶へと消えていくとサヨリを見送ったカトラスが魔法具を握り号令をかける。
「カトラスだ! 作戦開始だ! 斥候隊出撃せよ! 前衛隊続けて出撃! わたしもすぐに出る! わたしが到着まで指揮を副長に一任する! 」
「了解! 」
「後衛隊は艦隊全面に展開! 船に手を出させるな! 」
「了解! 」
オーシャンガーディアンの船は、海洋人種の特性を生かした構造をしている。船首両脇に魚雷発射口のように出撃用の入り口が数個あり、それこそ魚雷のように発射される。後方船底に帰還と作業用の間口の広い出入口が作られている。その発射口から武装した海洋人種たちが次々と出撃する。
「艦長後は頼みます! 」
「了解! カトラス騎士長も」
艦長が敬礼しカトラスを見送る。カトラスは館内に張り巡らされているパイプに身を投げる。これは海洋人種用の通路で中に水が入っており水中移動ができる。海洋人種以外のために階段や通路は作られているが、海洋人種はこの通路を使う方が断然早い、船底の発射口に到着し武装を整えて発射口に向かうと船員がカトラスへと声をかける。
「騎士長前衛は10キロ先にて敵を迎え撃つとのことです」
「わかった! 」
「ご武運を! 」
カトラスはコクりと頷いて船員へと感謝を伝え発射口へと入りこむと船員との阿吽の呼吸で射出される。
「サヨリ様の海とオーシャンガーディアン海洋国を好きにはさせん! 」
邪神軍上陸を前にして、海での死闘もまたはじまろうとしていた。
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