47-思いの強さ
都に戻る帰路は3キロ程度なのでデイトの移動能力は使用せずに、白檀達と情報交換をして帰ることにする。途中都側から騎士や兵達とすれ違ったので既に倒した旨をマノーリアが伝え街道の復旧作業の指示を出していた。白檀達にはデイトの事も伝えたがなかなか今の容姿で眷属神デイト・ア・ボットと言ってもピンと来ないので都に戻ったら演習場に行くことになった、これはデイトからも鳳凰の加護を見たいとの要望だったからだ。ある程度情報を共有したところで、環が咲と花に声をかける。
「咲さん花さん先程のモンスターはどのようにして発現させたのですか?」
「環様これを先日団長から花の見習い終了を命じられた時に渡されたんです。父からわたし達が騎士になったらって」
咲と花は環にダガーを見せる。
「ユーオズさんはこの為に…」
「何かご存知なんですか?」
「試練に行く前に、あなた達のお父様に能力を封印できる鉱石を作れないかって相談されたのです。魔力を変換することで、ユーオズさんの能力を使用することができる鉱石を作りました。おそらくダガーを作ったのは菅原さんだと思いますよ」
「哲兄が作ったんだ」
転移者の菅原は咲と花の父に保護され、数年家族のように一緒に暮らしていた。
「俺も哲さんが作ったっておやっさんから聞いてるぜ!お前らが騎士にならないなら、哲さんに渡せって言ってたからな」
「おふたりが騎士になって、お父様も菅原さんも喜んでいるでしょうね。」
デイトが白檀を凝視している。
「文月白檀さんあなたは鳳凰の加護をえたのですよね?」
「まぁ~加護だよな?加護です。」
「その大太刀は鳳凰が所持していたものですよね?」
「そうだな、です。元々俺も大剣を使ってたので鳳凰から持って行けと言われて…」
デイトの見た目に白檀はタメ口が抜けないでいる。さすがの白檀も神様にタメ口はダメだと思っているらしい
「なるほど…適正が高いのか…鳳凰は身体を大戦で失った鳳凰の思念の拠り所は…いや、しかし…」
デイトが何か独り言のように何か考えている。デイトは答えが出たようで白檀に提案する。
「演習場でわたしと模擬戦をしましょう。神無月さんと文月白檀さんで模擬戦とお思いましたが、わたしの方が良さそうです。」
「わ、わかりました。神様と模擬戦とかおもしろいな!ところで~そのフルネームで呼ぶのやめてくれないか?」
「妹さんの文月梔子さんと混同するかと思いまして」
「デイト様は皆さんの事を名字で呼ばれてますね。わたしと柊さんは神殿に入り名字を外しましたから、名で呼んでいただいておりますが…デイト様?そろそろ皆さんの事を名で呼んでよろしいと思いますよ」
「確かに人は親しくなると名で呼ぶこともあると…わかりました。慣例に従いましょう」
都の門が見えると女神桜や大樹木蓮も見える。すると咲と花が安堵したのか思いが口から漏れる。
「帰ってきた~」
「やっぱり、ロスビナスシティが1番綺麗!」
門の所にひとりの男がうろうろと立っている。白檀が気づいて咲と花に声をかける。
「咲、花あれ哲さんじゃないか?」
「本当ですね!哲兄~ただいま~!」
「哲兄~!帰ってきたよー!」
咲と花が菅原に手を振る。菅原が気がつき走ってくる。
「咲!花!無事だったか!ケガないか!」
「過保護だな~わたし達はもう騎士だし大人だよ~!」
「何言ってんだ!騎士になったから心配なんだよ!救援魔法の光を見た時はキモが冷えたぞ!あわてて商業組合に行って、義姉さんに言ったら、あの子達は騎士だから平気って言って、職場から動こうとしないから、俺が見せしめて来たら、兵士に聞いたら隊長や騎士長と葵も支獣で直ぐに救援に行ったから、ここで待ってろ言われて…」
菅原は本当の父親のように咲と花の無事を喜んでいる。少し菅原は涙ぐんでいる。咲と花がダガーを菅原に見せる。
「哲兄が作ってくれたんでしょ?」
「これのおかげであたし達も大活躍だよ!」
「菅原さん!咲と花のおかげで俺も敵を倒せました!ふたりのお父さんの言葉にも!」
葵が菅原に感謝を伝える。
「これは…じゃお前ら持ってるって事は…花?」
「見習い終了!騎士になりました!」
「まぁ~まだまだだけどな!でも、葵達を救ったのはこのふたりだからな~」
「ちゃんと使えたんだな!このダガー…アニキが作れって言うから半信半疑で作り初めてな!アニキがお前らが騎士になるなら渡すってならないなら、白檀かハリーが売りに来るだろから、好きな武器に変えてくれって、最初は俺も俺よりも師匠や名工に頼んでくれって言ったら、アニキがお前は魔法が使えない分武器に気持ちを入れられるからなって言ってくれてな…ましてや、子供の頃から見てる咲と花に渡すんなら、俺が作ろうって思ってな!でも、ちゃんと物になって良かった~!」
菅原は泣きながら安堵したかの様にその場に経たり混む。葵が大失態をして居場所が無さそうにしている信治の側に行き信治に尋ねる。
「信治!」
「な、なんだよ」
「菅原さんのあの姿を見ても、菅原さんの仕事をフツーの仕事って思えるか?思うのは自由だけど、あんな嬉しそうにやりがい感じて仕事している人を見ると、俺は羨ましく思う。俺もあっちの世界でやりたい仕事見つけられなかったから、こっちではちゃんと見つけてみようかな?この世界も悪くないかもな!」
信治は無言で下を向いている。菅原が信治に気づいて声をかける。
「信治!お前も一緒だったのか~!外出られたんだな!良かったな~!頑張れよ!いろいろあるだろうけど、失敗なんか気にすんなよ!同じ失敗しなきゃ良いんだよ!お前が前に進む限り、周りの人はお前の見方だ!前向けよ!」
おそらく信治の様子を見て菅原も察して言った言葉なのかもしれない、今の信治には辛い言葉かもしれない、それでも信治は他人を認める事や挫折も失敗も経験する必要がある。その先に成功があるのだから。
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冬童話2021投稿用に、連載中のSTRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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