470-後方支援
城塞都市シルドビナスへと到着し、守星調査隊は各々が防衛強化に手を貸すこととなった。
「デイト様防壁はこのくらいで良いですか? 」
葵がデイトの指示で城塞都市の海岸側に築かれた街壁の更に外側に岩の防壁を造り上げデイトに声をかける。
「そうですね。葵さんありがとうございます。後は眷属に警備させましょう」
デイトはそう言って、数体の巨大ゴーレム、スティールナイト、アイアンゴーレム、はにわ騎士を次々に顕現させ、デイトの眷属大隊を作り上げた。この眷属たちだけでも城塞都市常駐軍の数十倍の戦力となる。デイトは眷属を顕現させると次は信治に声をかける。
「信治さん防壁へコーティングをお願いします。わたしの眷属にも手伝わせて速やかに終わらせましょう」
「了解です。ベルーフ、ワークみんなに声掛けて、このコーティング剤は希釈タイプだから水で薄めるのも一緒に伝えてね」
「わかった。まぁ一度レクチャーしたから職人の人たちもわかるだろうけど、水で薄めるってのは忘れそうだからね。念押ししておくよ」
信治がベルーフとワークに指示し、職人たちが手分けして防壁へコーティング材を塗っていく、このコーティング材は、信治がチート錬金術の失敗の中で生まれた産物であった。竜大陸のダイヤモンドスライムを原料とするコーティング材に変わる代物で、この大陸で手に入る原料から代替品を信治は開発しようとしたが、ダイアモンドスライム程の強度を作り出すことはできなかった。しかし、錬金術師協会は、材料の入手が容易で、信治以外の錬金術師でも精製可能なこのコーティング材を制式な製品として登録した。建築・土木の業界では、ペンキのように外壁に塗るだけで強度が得られるコーティング材を高く評価され、新しい資材として重宝されている。しかし、まだ精製には許可が必要なため、皇国内ないし皇国元老院の承認を得た他国政府機関の施設のみに施工許可がされている。邪神軍進攻が迫る今は、この許可の撤廃も早くはなるだろうが、原料の大幅な高騰を避けながら大量生産をするには難しい現状だ。それに安易に許可を撤廃し大量生産に踏みきっても、粗悪品や偽造品の流通が起きて混乱起きることも予想されるので、製造や流通の安定が見えたタイミングで、許可となるだろう。信治の目的とは反しているが、信治の作り出した物が、この世界で流通しはじめており、信治が思っている以上に錬金術師協会は信治を評価している。
「デイトそちらは順調ですか? 」
「問題ない、海中はサヨリの結界が効いているからな、カーラスの方はどうなんだ」
「こちらも大気結界と眷属の準備は完了しています。ところで上位眷属はどうします? 」
カーラスが空から舞い降りてデイトに声をかける。城塞都市の上空には、カーラスの眷属である八咫烏とグリフォンの群れが編隊飛行している。今回は、ストライクイーグルとナイトホークという鷲と鷹を大型化した鳥形眷属も飛行しており、対地対空を得意とする眷属だ。梔子の支獣である隼型のユキよりも大型だ。カーラスの言う上位眷属とは、クラウドナイトやダイヤモンドナイトのことであり、カーラスやデイトの眷属でもっとも最上位の眷属だが、他の眷属と違い顕現させられる数は3体が上限であり、しかも1日に1体までの制約がある為、編成には慎重になる必要がある。
「この都市はカーラスの上位眷属にお願いしよう。わたしの眷属への命令顕現も与えてくれ」
「わかりました。では、そうしましょう」
カーラスが空に手をかざし一体のクラウドナイトを顕現させ、カーラスが声をかける。
「クラウドナイトよこの都市防衛の任につけ、デイト・ア・ボットの眷属の命令権もある共同して当たれ! 状況に応じて任務を変更する」
「はっ! カーラス様仰せのままに! 」
クラウドナイトがデイトとカーラスの眷属を集結させて采配をはじめる。
「ここまでやればそう簡単に陥落はしないだろう…… 」
「油断はできませんが、できる限りのことはできたと思います。後は民たちの力をどこまで引き上げられるかですね」
「そうだな。我々だけではどうにもならなかった過去の教訓を最大限活かすことだな、それには民たちの力を借りるしかないからな、今回はアマテウス様が目覚めていないとは言え、大戦時よりも総合的に力をましたからな」
「そうですね。特に守星調査隊のみなさんの力は我々に迫る成長を遂げましたからね」
「ああ、短期間で良くもここまで、称賛に値するほどだ。それに各国の軍備強化や民たちの魔法技術の発展させた歴史は目を見張るものだ。まぁこの数ヵ月でその歴史を上回る事をしてしまったのが、信治さんなのだが…… 」
「はい、信治さんも立派になられました…… 」
デイトの言葉に返答したのは、カーラスでなく明らかに柊の口調と声音だった。転移してから引きこもっていた信治は1年足らずで、いろいろな偉業を成し遂げていた。本人は守星調査隊の武器以外の功績はあまり実感できていないのだが、偉人となるものは案外生前はそんなものなのかもしれない。信治の作業している姿を微笑ましく眺めているカーラスとデイトにワークが声をかける。
「デイト様、カーラス様夕飯にしましょって! 」
「ワークさんわかりました」
「ワークさんこちらの街の郷土料理でしょうか? 」
「ひさびさに全員でごはん食べれますね♪ 」
「そうですね」
城塞都市シルドビナスが夕暮れに赤く染まる。決戦の日が刻々と近付く。
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