459-本隊合流と状況把握
百目千里眼のヴィネアスとヘルガイドを信治のチート錬金術と召喚魔法を使ったチート召喚魔法具によって、強力な助っ人を召喚することに成功した葵たちは、後続の本隊と合流し、残存の魔族の掃討戦へと移行していた。後続でこちらに合流したのは、アイズ率いるビナスゲート共和国軍とロゼッタ率いる魔導師混成部隊とベレッタの部下を含むストロングシルド帝国軍の混成部隊が到着していた。
「あなたたちで苦戦したってことはかなりの強敵が現れたのかしら」
墜落したWBHを横目にロゼッタがマノーリアに声をかける。
「そうね。今までの相手とは違う意味で強敵だったわね」
「けど、無事でよかったわ! 葵あなたがもっとしっかりマノーリアを護りなさい! 」
「ロゼッタ会うなりそれかよ! 」
ロゼッタはマノーリアを奪われた嫉妬心からか葵にはいつもキツくあたる。葵が仕返しとばかりに半眼でアイズに声をかける。
「アイズさんロゼッタのどこが良いんですか? 」
「葵殿そんな露骨な物言いは…… 」
「アイズ様を困らせないで! 」
「自分はアイズさんと婚約してるのにオレにはキツくあたるんだろ? ロゼッタは」
「わたしはマノーリアが心配なだけ! 別にマノーリアと葵の恋路を邪魔などしてないわ! 」
「だから自分の恋路を邪魔するなと、いやいやむしろオレはふたりの思いを結ばせたつもりなんだが? 」
「葵殿それくらいに」
アイズがまぁまぁと葵をなだめている。葵とロゼッタはなぜか気が合わないのか会うとだいたいこうなる。ある意味では葵が他の相手だとあまり見せない葵をかいまみえる相手だ。マノーリアがクスクスと笑いふたりの間に話って入る。
「本当にふたりは仲が良いわね」
「仲がいい? 」
葵とロゼッタはマノーリアの言葉に思わず同じ疑問を合わせたように同時に口にする。ロゼッタがマノーリアに尋ねる。
「マノーリアどこをどう見れば葵とわたしが仲良く見えるの? 」
「だって、葵くんがロゼッタ以外にこんなにむきになることないし、なんだかんだ言ってもお互い嫌いな訳ではないから仲が良いなぁと思って、ねぇアイズさん」
マノーリアが笑いながらそう言いアイズに同意を求める。アイズもまたおかしな事を口にする。
「たしかに、ロゼッタはわたしにも見せない姿を葵殿と話す時には見せてくれます。ある意味ではわたしも葵殿に嫉妬心を持つこともありますよ」
「はぁ? アイズさん」
アイズの言葉に思わず葵が心のそこからの疑問をアイズになげかける。
「まぁなぜか葵はロゼッタにだけは向きになるよねぇ」
「不思議よね。あたしたちにもそうはならないし」
途中から話の輪に加わった梔子と麻衣もマノーリアとアイズの言葉に同意する。葵からしてみればロゼッタが先に絡んでくるので応戦しているだけで、ロゼッタ以外はここまで絡んでこないだけだと思っている。マノーリア少し思考するように顎に指を当て視線を上にしながら口を開いた。
「何となくだけど、ユリさんと葵くんのやりとりに似てるかしらね」
「ユリさん? 誰のこと? 」
「葵くんの実の妹さんよ」
ロゼッタがマノーリアの言葉に疑問で返しマノーリアはすぐに返答する。
「あー たしかにそうかもね~ 」
梔子もマノーリアの言葉に同意している。
「ユリとロゼッタか…… 」
葵が少し納得の言ったようにふたりの名を口にした。実の妹である双子の菖蒲と百合は性格が全く異なる。葵は菖蒲とは滅多にケンカすることはなかったが、百合とは顔を見れば口喧嘩をよくしていた。菖蒲と百合はタイプも性格も違うが仲が良く、葵もふたりがケンカする姿をほとんど見たことがない、葵と百合は気が合わないのと思っていたが、菖蒲からするとふたりは仲が良いと菖蒲からも言われたことが過去にあった事を思い出す。
「葵の妹さんもこの世界に? 」
「わたしたちが葵くんの世界に行ったのよ、でも、ここにいる葵くんの世界でなく平行世界になるんだけどね」
「葵のいた世界に…… 」
マノーリアの言葉にロゼッタが唖然としている。隣で聞いているアイズも同様の表情だ。守星調査隊では当たり前になってきたが、ロゼッタたちの反応が正しい、別の世界に行ったことを当たり前のように話す方が、この世界でも異端ではあるが、守星調査隊には眷属神が同行しているので、世間的に不可思議な事が合っても不思議ではないというのが、第三者の意見であろう。マノーリアが葵とロゼッタふたりに諭すように話す。
「ふたりのそれは同族嫌悪の一種でしょ」
「同族嫌悪? 」
「葵くんもロゼッタも優秀で才能に満ちているからこそ、自分に持ち合わせていない部分の才能を持ち合わせているからお互い気になるのかしらね。葵くんはロゼッタのまっすぐすぎる素直な性格だったり、世界レベルの魔力を持つ魔女であるロゼッタは葵くんには持ち合わせていないモノだし、ロゼッタは葵くんの剣術や博識な部分に対するお互いの劣等感のようなものかしらね。ふたりとも本当はすごい努力家なのにそれを当然のような振る舞いをしているところも似ているわ。だから、気になる存在なのかしらね」
葵もロゼッタも自分をよく知るマノーリアだからこそ図星である事を言い当てられる。自分でもあえて気にしていたわけではないが、心理的には気にしていたことなのだろう。葵もロゼッタもあまり努力する姿を見せたくないと思っている分それを言葉にされると一気に気恥ずかしいと感じる。葵が話題を変えようと口を開く。
「ところで、全体の状況はどうなっているんだ? 」
「あなたたちが出た後で新たに南にホールが発現して、そちらには、竜族の戦士率いる皇国軍の特別部隊含む軍とベルガモット様率いる王国軍の混成部隊が対応に向かったわ」
ロゼッタも葵と同様なかアイズを差し置いて葵の質問に答える。
「エオローとラーグたちか、結局こっちにきてからほとんど会えてないし、会っても雑談と近況報告くらいだもんな」
終焉の神ウルイドの創造した民たちである竜族で、今この大陸にいるのはふたりだけだ。ウルイドの命によって戦士のエオローと女戦士のラーグが軍強化に尽力してくれている。
「ふたりが育てたあげた特殊部隊か」
「騎士団の上位にも負けないくらいの力量らしいわよ」
そもそもエオローとラーグが加護持ちである葵や白檀とご確認張り合える戦士だ。
「カーラスのほうも決着がついたようです」
デイトがカーラスとの精神同調によって何かを感じたようだ。
「邪神軍の本隊が上陸する前に建て直しが必要ですね。いつ来るかわからない以上急ぎましょう」
マノーリアがデイトへと返答した。決戦が幕を空けた葵たちの気の休まる一時であった。
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