456-打開策は運試し
どんなに強者であっても補給ができなければ戦い続けることは当たり前だが無理だ。圧倒的な戦力差で無傷であっても人は食事も寝る必要もある。ゲームのようにはいかないのが実際の戦いであり、補給できる時にしておかなければ敵は待ってはくれないのだ。補給の為に葵とマノーリアが後方に下がった矢先に、百目千里眼によって無数の魔族を送り込まれ、デイトと梔子とアイは囲まれることとなった。デイトは眷属神とはいえ現在のカラダは人々と交流するために作られた第2のドワーフのカラダで頑丈とはいえ、これだけの魔族を相手にしていれば、ポーションや回復魔法も使う事になる。デイトの眷属たちも耐久値の低い者は既に消滅し、ダイアモンドナイトとアイアンゴーレム、スティールナイトが数体残るだけとなった。
「アイさんポーションあとどれくらい? 」
「これで最後ね」
「わたしもこれが最後」
「こちらをおふたりに」
「デイト様の分は? 」
「わたしはあなたたちほど必要ありません。気にせず使ってください」
デイトがポーションのアンプルを梔子とアイに渡す。デイトの作り出した厚い岩盤の屋根に身を隠しながら、魔族たちを相手にしているが数が多すぎる。
「マニーたちが加勢してくれるまで耐えないとね」
「そうね~♪ ちょっと大変だけど~♪ 」
後方に下がった葵たちも何もしていなかったわけではなかった。
「一斉に攻撃して前衛と合流するぞ! 」
「時間がないわ! できるだけ早く合流しないと! 」
補給の終わった葵とマノーリアが前に出て攻撃をはじめる。麻衣も負傷しながらも攻撃に加わる。
「なめたことしてくれるわね! 」
「麻衣大丈夫なのか? 」
麻衣に葵が声をかける。麻衣は攻撃しながら葵に返答する。
「そんなこと言ってられないでしょ! 充分休んだわ! 」
マノーリアに咲と花が声をかける。
「マニーさんヴァリアブル使います! 」
「あまり前に出過ぎないようにね! 」
「後の事は任せろ! 」
マノーリアと葵が声をかける。信治が咲と花に声をかける。
「ふたりの保護は僕がするからね」
「ありがとうございます」
「では、行きます! 花いい? 」
「うん! 」
「ヴァリアブル! 」
咲と花がダガーを重ね合わせ周囲に高圧のスチームのように霧が立ち込める。そして巨大なモンスターが現れ、魔族を次々と倒していく、咲と花が妖術でモンスター化しそれを確認した信治が皆に声をかける。
「ふたりの能力は30分が限界だよ。それまでに打開策を考えないと! 」
「打開策って言っても…… 」
葵が信治に返答しようとして今なお百目千里眼からは、魔族と魔弾の攻撃が続いているそれを葵は見て何かを思いついたようだ。隣にいたマノーリアに声をかける。
「マニー百目千里眼は一方通行だと思う? 」
「一方通行? どういう意味? 」
「そのままの意味だよ。こちらからあれを使って、ヴィネアスのところへ行って倒すってこと」
「ホールと同じならこちらからも入れると思うけど、魔弾や魔族を避けつつ侵入するのは難しいと思うわ」
葵のアイデアにマノーリアは少し怪訝な顔で返答するが葵はニヤリと笑い行動に移す。
「麻衣前衛に眷属出せるか? 」
「いいわよ何するつもり? 」
「試したいことがあってな」
「わかったわ」
麻衣が能力を使い眷属を顕現させて葵の代わりに全面に出す。葵はフライトバイクにまたがりスロットルをいっぱいに開き動力である魔力を最大する。エンジンで言えば回転数をあげるようなところだろう、百目千里眼が発現に合わせて飛び出すつもりだ。
「前兆がはある後はタイミングだけだ」
空が歪みはじめ百目千里眼の前兆が起こる。
「今だ!! 」
葵が一気に最短距離のホールへと飛び出す。そのホールから魔弾が葵目掛けて撃ち放たれる。葵はフライトバイクを盾に魔弾を避け、グラビティコントロールで自身にかかる重力をゼロにして、ホール目掛けてフライトバイクから飛び込む。
「あ!? 」
葵はホールに入る事に失敗しただ空に浮かんでいるだけとなり、そこへ魔弾が葵に撃ち込まれる。葵は必死で防御体制をとり、即座に自身の重力をかけ地上に一気に引っ張られるように落ち、着地寸前に身を軽くし着地する。
「葵くん大丈夫? 」
マノーリアが声をかける。葵はポーションのアンプル取り出して一気に口に流し込み回復させてマノーリアに返答する。
「問題ない。信治WBHの主砲は使えるか? 」
そのまま葵は信治に向き直り尋ねる。信治が何かぶつぶつと独り言を言いながら錬金術で何かを作っているようだ。葵が呆れたように改めて信治に声をかける。
「信治! 戦闘中に何してるんだよ! 」
信治が葵の声にやっと気がついたようで顔を上げる。
「え? 葵くんどうしたの? 」
「どうしたの? じゃなくて何してんだよ! 」
さすがに葵の声にイラつきが混じる無理もない戦闘中に戦闘以外のことをしているのだ。
「何って、支援は全てオートウエポンにしてるからこの状況を打開できる武器を完成させようと思って、サボってないよ」
「オートって…… まぁ確かに信治はサボってはないか…… 」
信治の言うとおり、信治は先程から咲と花が変身したモンスターへの攻撃支援を行い、魔族への攻撃を行っている。それが全てオートで信治は別のことができているようだ。
「で、なんか作れるのか? 」
「魔力量の拡張はしたし、召喚魔法の理論も合ってるから成功するはずなんだけどね」
「まさかまだあれを試そうとしてるのか? 」
「そだよ」
葵は信治の諦めの悪さを苦笑するが信治はいたって真面目だ。葵はもういいやとそもそも話そうとしていた内容に切り替える。
「WBHの主砲は使えるか? 」
「えっーと」
「使えるよ」
「萌大丈夫か? 」
「大丈夫。まだ少し痛いけどね。クーちゃんたち危ないんでしょ、ナンブさんもレミントンさんも負傷しながらも戦ってるし、わたしもね、できることしないと」
萌の言うとおりナンブとレミントンも重魔装鎧は大破し使えないが、信治が作った武器を持って後方からベレッタを支援している姿が見える萌が話を続ける。
「信治WBHの武器の同期解除してわたしがやるから」
「わかった」
萌がWBHの操縦用に使用しているSUVを呼び出し慣れた感じにSUVに立ち操作し武器の設定を行いWBHの武器とSUV用のWBHのミニチュアのような武器がSUVに装備させ、萌が葵に声をかける。
「けど、葵くん主砲撃てるけどこんなところで撃ったら前にいるクーちゃんたちまで巻き添えにしちゃうよ」
「いや、撃ち出すのはオレだよ。前にカーラス様の眷属と空中戦の模擬戦の時に使ったのが格納庫にあるだろう? 」
「あー あのおっきい鉄砲の弾丸みたいなやつ」
「それそれ」
以前フライトバイクを信治に作ってもらう前に急場凌ぎに作った葵が乗り込んだ弾丸である。
「射速はフライトバイクより速いからな」
「うまく行くかな? 」
「萌さんやるだけやってみよう」
萌は半信半疑だが信治は葵の提案にのるが信治は葵にひとつ注文をする。
「葵ひとつお願いがあるだけど」
「なんだ? 」
「無の力を使ってみて、その上で麻衣さんの女神の力使ってもらって僕の力を掛け合わせる。さらにこれを成功させれば葵くんがホールに入る確率が上がると思う」
信治は手元の本を指でトントン軽くたたき葵にしめす。
「わかった。できるかわからんけどな」
「それは僕もだからお互い様だよ。だから確率を上げるんだ」
「じゃやってみるか! 」
起死回生の反撃作戦は少々ギャンブル的な運任せだが葵たちは状況を覆す為にチャレンジすることとなった。
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