447-決戦への同伴者
ロスビナス皇国
ロスビナスシティ東側郊外街道沿いホール発生地
「これが邪神様の力…… あぁなんという…… この程度の結界亀裂にもホールを作り出せるとは…… 」
ヘルガイドは感嘆の言葉を漏らし自身にみなぎる邪悪で破壊衝動が沸き立つような感覚に身震いする。ホールとは結界の歪みにできる転移穴である。人でも魔導師であれば似たような物を発生することは可能であるが、結界の歪みが大きくなければ、人でも魔族でもホールを作り出すことは不可能である。街道等に設けられた結界は兵士たちが警らし歪みをくまなく保守管理しているが、邪神の力によってヘルガイドは、兵士たちが見落とすほど、小さな結界の歪みにホールを作り出し、魔族兵をロスビナスの地に送り込んできたのだ。
「我々は人間どもに混乱と恐怖を教える為の尖兵…… 皆の物、女神が生み出した全ての生物を殺し、大樹木蓮へと突き進むのだ」
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ロスビナス皇国ロスビナスシティ
「報告いたします。東西に現れた魔族はロスビナスシティへ向けて進軍中です。西側には有翼魔族の存在も確認されました」
伝令の兵士が報告し、白檀が手で合図し兵士が持ち場へ戻る。
「さっそく羽根つきまで出てくるか」
「そちらの対応はわたしが向かいましょう」
カーラスが直ぐ様に返答する。
「まぁカーラス様以外にいないからな、同行して地上の魔族はこちらで対応だな。マノーリア東側はお前たちに任せる。葵とクーも頼んだぞ! 」
「了解しました」
「同時に攻撃してくるとか、完全に戦力の分散と混乱させるのが目的だよね」
「クーの言うとおりだろうけど、こちらも戦力の強化はしたんだ。魔族の思い通りにならないところを見せてやろうぜ! 」
「葵らしくないね~ どんな心境の変化なの? 」
「決戦だしな! ここでやるべき事はひとつだろ! 魔族の進攻を防いで邪神を倒すことだけ。シンプルな話だよ」
葵がいつになく力が入った声音で梔子に返答する。梔子の言うとおり、いつもの葵であれば、その場の雰囲気や当たり障りのない事を言うような場面だが、葵自身、他人へ説明は難しいが自分の感情に素直になることにしたら、今の言葉が漏れ出たような感覚だ。白檀が皆に声をかける。
「各自大至急準備し緊急出動だ! 」
「了解! 」
東側のホールへの対応は、葵、マノーリア、梔子、麻衣、信治、咲、花、萌、そしてデイトの隊が担当し、西側のホールを白檀、ベルーフ、ナズナ、ジンジャー、チョウノスケ、カーラスと守星連盟の精鋭部隊と各国の飛竜隊が同行する事となった。環はロスビナスシティより全体の指揮と魔導師隊指揮をするロゼッタクローバーと共に魔導師隊の指揮を担う、そこへ聞き覚えのある声がかかる。
「我々も同乗させてもらえないだろうか? 我々の火力では援護くらいしかできないかもしれないが」
「ベレッタ」
葵が声の方に振り向くとそこには、いつもの軍服に身をまとった女性士官がいた。ストロングシルド帝国帝国軍重魔装大隊を指揮するベレッタバレルだ。ベレッタが葵たちに歩みより話を続ける。
「我々の精鋭部隊の一部を同乗させてもらいたい。少なくとも長月殿に調整してもらった私たち3機は足手まといにはならないはずだ」
以前、帝国で魔族の襲撃された時信治がベレッタたちの重魔装鎧を手を加えた。完全に別物となったベレッタ、レミントン、ナンブの3機は、他の重魔装鎧よりもかなり性能を向上させた。ベレッタは更に話を続ける。
「その後、改良を重ねて量産機も性能向上させたが、まだまだこの3機ほどではないので、先陣を任せるには荷が重いので、我々3人だけでかまわないのだが」
マノーリアがベレッタの前に出て握手を求める。
「申し出ありがとうございます。是非、お願いいたします。ただし、無理な突撃等はダメですからね」
「承知した。改めてよろしくお願いいたします」
ベレッタが敬礼すると他のふたりもそれにならい敬礼する。マノーリアは微かに笑みを浮かべてベレッタに声をかける。
「ベレッタさんかしこまらないで下さい。何度も一緒に戦った仲です。それより、飛行艇への搬入を至急お願いします」
「そうですね。では、後程」
ベレッタたちはWBHへと重魔装鎧の搬入の為先に向かった。葵がそれを見て皆に声をかける。
「俺たちも準備はできているし向かうか、萌もう乗って良いんでしょ? 」
少し離れた場所でナズナたちと話していた萌に聞こえるように葵は少しだけ声を張り上げた。萌が葵に気がつきナズナたちに手を振って葵のところへと駆け寄ってきた。
「葵くん何? 」
「搭乗して平気なんだろ? 」
「問題ないよ。そういえば、ベレッタさんたちも乗るんでしょう? 馬車とか葵くん麻衣さんのバイクもう積んでるけど、順番とか場所とか平気? 」
「確かに先にそっち確認した方が良いな。最初に出るとすれば、オレか麻衣だろうしな」
「荷物で出撃できないとか笑えないわよ! 早く行くわよ!」
葵と萌の会話を聞いていた麻衣が会話に割り込み葵を引っ張って連れて行く。葵はそのまま皆に声をかける。
「よし! みんな行くぞ~ 」
「これから決戦の戦場なのよ! その緩みきった声は何? 」
麻衣の言葉に皆が笑う。葵たちは決戦に向けできる限りの準備をした。それはまぎれもない事実だ。しかし、それが魔族に対し万全かといえばそうではないだろう。 だからこそ、いつも通りでいれる精神状態が大切である。慢心でも不安でもよくない。必要なのは冷静な判断力と状況に応じた決断力である。
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