43-ホール再び
この世界は魔法結界によって、魔族やモンスターの侵入を防いでいる。しかし、魔法結界も万能ではなく高位の結界は絶対領域となり、魔族やモンスターだけでなく人も出入りができなくなる。その為、魔族やモンスターだけを不可侵領域とする、中位結界魔法が使用されるので、中位魔族には結界を破壊される事もある。また、結界と結界の繋ぎ目に歪みができて、ホールといわれる結界の亀裂ができる。魔族やモンスターの侵入のほとんどがホールだと言われている。街道の結界も守備兵が巡回してチェックしているものの、ホールを見落としも少なくない、それほどホールの早期発見は、難易度の高いことなのだ。その為、この世界の人は全員が街や村から出る年頃になる頃に、低位魔法のエスケイプとエマージェンシーの魔法を教えられる。この魔法は、運悪くホールからの魔族やモンスターの侵入に遭遇した場合に使用する救難と離脱魔法になる。この世界では救難魔法の光を発見した騎士、兵は救出行動を、所属や国境を問わず行動するように守星連盟法で定められている。しかし、彼女が必死で救援に向かうのは、その窮地の状況におかれているのが、自分の部下であり大切な仲間だからだ。
「ユキ急いで!咲と花が!」
「クー!落ち着いて!」
葵とマノーリアが追いつきマノーリアが梔子を落ち着かせる。
「咲ちゃんも花ちゃんも騎士よ!わたし達と街を守ったふたりよ!」
「そうだよクー!落ち着いて上手くやろう!」
「ありがとう!でも急ご!」
「ユキが一番速いだろうからな!先に行け!上手くやれよ!」
3人は支獣の最大スピードで救援に向かう。マノーリアの言うとおり、咲と花も騎士だ。ただ助けられるのを待ってはいなかった。ふたりは馬である地竜が魔族に驚かないよう地竜の視界に入らないよう逃げるが地竜の体力も限界にきている。
「お姉ちゃんこの子もう限界かも」
「そうね、無理させ過ぎたね。あそこ丘の先の橋を渡ったら勝負に出よう!」
「了解!」
2人は川にかかる橋を渡り地竜から降りる。地竜を労いヒールをかける。花の鋭敏な耳が魔族の足音を捉える。
「お姉ちゃん!あいつら来るよ!距離300!」
「花!壁作るよ橋以外からの侵入を防ごう!ウォーターウォール!」
咲は橋の川上と川下に水魔法で水の壁を作る。川の水も利用して通常よりも高い壁となっている。咲はこれを狙っていたようだ。
「花!わたしの矢筒と予備の矢もここに置くよ!足りなくなったら早めに言ってね!」
「わかった!お姉ちゃんも無理しちゃダメだよ!魔力温存を意識してね。援護するから!」
「大丈夫!都までは3キロ後15分耐えれば救援来るし、なんとかなる!」
「来るよ丘の上!ゴブリンおそらく30!ヘルハウンド20オーク20!その後ろ聞き覚えの無い足音がいる!警戒!」
「まずは手前の奴らだね!オーガがいないのが救いと思いたいけど…」
先程、咲達が通った橋の向こう岸にゴブリンの群れが見えた。ヘルハウンドとオークも見えた。ゴブリンの群れへ花が火の魔法を放つ
「ファイヤーサークル!」
数引きのゴブリンが炎の檻に捕まる。花は弓技で急所を一発で射抜く。ヘルハウンドは火の耐性があるのか抜けてくる。咲が想定どおりと水魔法を放つ。
「ウォーターショットガン!」
水の散弾がヘルハウンドに風穴をあける。
「やっぱり数が多い!」
「お姉ちゃん!後ろ奴ら見えた!ミノタウロス6とウェアウルフ5とリザードマン4がいる。」
「獣人!オーガよりも厄介ってこと?あいつらがこの群れの指揮を?確かに中位魔族だけど…厄介な奴らだ!」
「スカルナイトやオーガがいないから、術者はいないってこと?獣人が指揮をするって聞いたことないよね?」
獣人はこの世界の元は動物だが、魔族取り込まれ獣人かし狂暴化している。言語能力はないが武器を使用する知能はある。
「時間稼ぎしないと!手が足りない!花!橋の向こう岸に壁を何層か作れる?」
「わかった!やってみる!」
「ファイヤーウォール!」
「ウォーターウォール」
花が火の壁を2層作り、咲が水の壁を一層追加する。
「ファイヤーリバー!」
花が流れる火の川を作りだし魔族の動線を集約する。
「花!上出来!」
咲と花が橋を利用して数引きずつ相手をし確実に仕留める。数分が経過した時に2人を呼ぶ声が頭上から聞こえた。おりてくる人影が見えた、咲の隣には信頼し尊敬する、隊長であり相棒がたっていた。
「隊長!」
「咲!花!大丈夫?」
「ええ、時間稼ぎしてたので、ただ、奥に獣人がいるので厄介です。」
「あいつらは2人で行こう!マニーと葵も来るから、今のうちに補給して!」
「了解!」
梔子が風魔法のハリケーンでゴブリンとオークを切り刻む、咲と花の地竜にテイマーの技能で力を与える。
「これで、戦力増強!ゴブリンなら地竜くん達で行けると思うよ!」
更に葵とマノーリアが到着する。
「咲ちゃん!花ちゃん!無事で良かった!」
「マニーさん!葵さん!」
「これでひと安心だな!一気に行くか!」
「咲!久々のバディだけど行ける?」
「もちろん!花!援護よろしくね!」
「わかってるって~!」
「葵くん!わたし達は紫炎使うわよ!花ちゃん援護にアリスつけるからね!」
「ありがとうございます」
「葵くんエールの初陣問題ない?」
「本人はやる気満々のようで、かわいい顔が台無しです。」
葵の支獣エールは魔族を睨み付けて唸っている。
「みんな!これだけの戦力あれば行けるぞ!」
「了解!でも気は抜かないようにね!」
再び2週間前のチームで魔族と対峙することとなった。しかし、2週間とはチームの戦力も連携も桁違いに強くなっており余裕さえ感じられる。しかし予期せぬ事は起こるものである。
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冬童話2021投稿用に、連載中のSTRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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