421-身代り
葵たちは、白檀たちが戦闘停止している理由を魔王メフィストの城に近づくに連れ、デイトとカーラスの同調深度が向上し、事情を知ることとなった。その為、最初に予定していた後方からの急襲を中止することとなった。しかし、それ以上に葵たちの悩みの種は魔王軍の人質解放条件だった。
「わたし行きます」
「マニー身代りなんて他の方法を考えようよ! 」
マノーリアが人質の解放条件が自分であることに自分が身代りを志願する。梔子がマノーリアを引き止めるがマノーリアの決心は固いようだ。マノーリアが諭すよう梔子に声をかける。
「他の方法なんてないよ! 人質の人たちを安全に解放するには魔王軍の要求をのむしかないよ」
麻衣もマノーリアへと声をかける。
「マニーあなたが犠牲になるつもりじゃないのよね? 」
「麻衣さん…… うん…… 要求に応じてわたしが身代りになることでこちらの要求ものませる。その間に人質の彼女たちを保護して戦闘を再開してわたしもその隙に脱出するわ」
「そう上手くいく保証なんてないわよ」
「でも、彼女たちをこのままにしておけないし、わたしが身代りの方が、いざという時に安全よ。だってわたしを指名しているのは、妃候補なんだから手荒なマネはしないと思うわ」
「マニーも頑固ね。葵もなんとか言いなさいよ! 下手したら魔王の妃にマニーがされちゃうのよ! 」
葵もなんともいえない表情をしているが、やりどころのない怒りを抱いていることは周りの皆にも感じとれる。葵が短く口を開いた。
「マニーは絶対に助ける。魔王の好きにはさせない…… 」
「葵くん…… 」
マノーリアが見たことのない葵の表情に葵の苦悩も察することができた。WBHの通信魔法が届く距離となったようで白檀から通信が入る。
「みんな事情はデイト様から聞いているな」
「ビャク兄! マニーが身代りになるって聞かないの! 」
「マニー本当に良いのか? 」
「はい、白檀お兄様それが最も彼女たちを救う安全策だとわたしは判断しています。当然わたしも魔王の妃になるつもりはないのでタイミングみて脱出します」
白檀もマノーリアを身代りにするのは本心では反対なのだろう。マノーリアの言葉の後、沈黙が広がる。萌が通信を確認して声をかける。
「団長聞こえますか? 団長? 」
「ああ、良好だ。合流したら再度計画の詳細をつめることにする。マニーの安全を第一に人質の救出を行う」
「了解」
白檀との通信がきれ萌はWBHの速度をあげる。ブリッジには何とも言えない沈黙が支配している。マノーリアが皆の思いを払拭するように口を開いた。
「みんな大丈夫だから! 作戦に専念しましょ」
それまで黙っていたデイトが口を開く。
「マノーリアさんが決めたことなので、これ以上わたしも何も言いませんがあなたも安全に脱出できるよう力を貸しましょう」
「ありがとうございます。デイト様」
白檀との通信した翌日WBHは魔王城上空へと到着した。空気神殿と合流し最終的な打ち合わせを葵たちは始めていた。WBHが空中神殿へと接近しているのは地上からも見えていた。当然、魔王軍にも邪神軍にも見えている。ワァプラがWBHが到着したのを見て口を開く。
「人間どもの船が到着した? ここからまた戦局が動くか? 」
「あの飛行艇ですか? 」
カースメイカーがワァプラへと尋ねるがワァプラを笑みを携え顎をかいている。何かしらの考えているようだ。
「ダンナぁ? 」
「カースメイカー状況をおもしろくするか? 」
「おもしろく? 」
「そうだ。人間どもの攻撃が当てにならないなら、魔王も人間のやつらの思惑をぶち壊してやっても良いだろ」
「なるほど~ そういうことっすね~ 嫌がらせしてやりましょう」
葵たちは準備ができ胸壁へと向かう、マノーリアは自身の支獣のアリスを駆り皆と向かった。胸壁には改めて人質の女性たちとシルクハットが現れている。
「これはこれはみなさんお集まりでマノーリア嬢とのお別れはお済みでしょうか? 」
マノーリアが前に出てシルクハットへと声をかける。
「わたしが身代りになる為の条件があります! 」
シルクハットは一度目を細めたがそのままマノーリアへと話をするように促す。
「彼女たちが安全に我々の元で保護されるまでわたしは武装解除しません。拘束も認めません」
シルクハットはフッと笑い礼をしながら返答する。
「かまいませんよ。我々魔族を信用することはできないでしょうからね。では、マノーリア嬢こちらへ」
シルクハットはマノーリアを胸壁へと来るように手を払い案内する。
「後はお願いします」
マノーリアは念話で皆に伝え胸壁へと降りる。アリスがデフォルメ形態へと変わるのを確認してマノーリアはもう一度シルクハットへ声をかける。
「この子はわたしの分身だから引き離すことできないけどかまわないかしら? 」
「支獣でしたね。環境が変わるのですから一緒に連れてきてかまいませんよ」
「では、彼女たちを解放してもらえるかしら」
「ええ、お前たちその者たちをそちらへと引渡しなさい」
シルクハットの指示で化け猫メイドが人質の女性たちを連れて胸壁の端へ向かう梔子や白檀が彼女たちの保護を行う。信治の作った宙に浮くプレートへと彼女たちを渡らせるために梔子が手を差しのべる。
「もう安心だよ!こちらに乗って」
「ありがとうございます」
一人ずつ確実乗せる。プレートの上ではデイトとカーラスが本当に女性たちが人間であるか確認する。
「彼女たちは正真正銘の人です。魔族が化けている様子はありません」
デイトが確認して2人目も梔子がプレートへと引き上げる。3人目の人質の女性が振り向きマノーリアへと声をかける。
「如月騎士長申し訳ありません。わたしたちにもっと力があれば…… 」
彼女は助けられる安堵よりもマノーリアが身代りになり、自分が騎士として人を護ることができなかった事を悔やんでいるようだ。マノーリアは微笑みながら彼女へと返答する。
「わたしは大丈夫です。あなたもその強い志がおありであれば、次は必ず誰かを護ることができるはずです。今は生き延びてください」
マノーリアがそう彼女へと返答した直後南より大きな魔力の塊が胸壁へと直撃する。
「全員回避!! 」
「マニー! 」
胸壁は粉々に粉砕され爆煙と爆発で状況が把握できない。
「邪神軍のやつらか! 」
白檀は舌打ちをひとつうち怒りを抑え皆に指示を出す。
「救出したふたりを神殿へ、爆煙が消えしだいマニーの捜索を…… 葵待て! 」
白檀が指示を出す前に葵はフライトバイクで爆煙の中へと突っ込んでいったのだった。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
いいね、ブックマーク、評価、感想、レビュー何かひとつでもちょうだいいただければ、励みとなりますのでよろしくお願いいたします。
ぜひ、下の☆印にて評価してただければ幸いです。




