420-人質
「人間どもは本当にくだらん。やつらに攻撃が我々に好都合だったが戦闘を停止とは…… 」
後方の魔艇より戦況を伺っていたワァプラが独り言を呟く、その言葉を拾ったカースメイカーがヘラヘラと笑いながら返答する。
「なら今のうちに人間どもも女神の眷属も殺してしまえばいいじゃないですかぁ~ 」
「今回は人間どもはいいように使わんとな、やつらとて今回の戦いでできるだけ間引きしたいのだろうが、我々邪神直系とメフィストなるバカの配下、他の力を利用して潰すならどちらが可能性が高いかが、女神の眷属も理解しているだろうて、今回は利害が一致しているわけだ。まぁ生きて返す必要もないのだ。使うだけ使い不要になったら殺せばいい」
「そうなんすか~ 今ならこいつの主砲を4隻とも一斉にぶっぱなせばいい感じだと思うんだけどなぁ~ 」
カースメイカーは魔艇をパンパン叩いて主砲を撃ちたそうにしている。ワァプラはそれを鼻で笑い配下に命令を下す。
「魔王軍への攻撃の手を緩めるな人間は後回しだ! 放っておけ! 」
邪神軍の攻撃が更に強化され、魔王軍の砦は陥落寸前と行ったところだ。一方、白檀やカーラスたち守星調査隊の陽動の任務にあたっていた者たちが、戦闘を停止していたのには、邪神軍の攻撃が集中する砦から離れた胸壁に理由があった。そこには、ずだ袋のような布に手と頭が出るよう穴の開いた物を着て、手を拘束された3人の女性が引きずられるように連れてこられている。女性たちを連れてきた3人のメイドのことは、白檀は良く覚えている。今は人の少女のような顔をしているが、正体は化け猫のメイドである。白檀がメイドたちに空から声をかける。
「何のマネだ! 」
「シャー! 」
「グルル~ 」
「やはり化け猫か見た目は人でも人語までは無理か? 」
メイドたちは白檀に威嚇するように唸っている。見た目は少女でも威嚇は猫その物である。そこへ胸壁の階段からコツコツと階段を上がる音が聞こえ、落ち着いた男性の声が化け猫メイドたちにかかる。
「お前たち、客人に対してその態度はなんだ。もっと品良く振る舞わんとな」
「よう~ じいさんあんたなら説明してくれるのかい? 彼女たちはいったい」
白檀がシルクハットへと尋ねるが、シルクハットは品良く笑う。白檀はシルクハットの笑いに眉ねを寄せて改めて問いかける。
「何がおかしい? 」
「いやはや人間とは魔族以上に身勝手ですね~ 自分たちは、我々魔族同士の戦いに勤しんでいるところへ横槍を入れ、人質を見せられたら質問をするとは…… 見ての通り人質ですよ。あなた方は見ず知らずの人間でも目の前で殺されることは望まないと認識しておりますが? 」
「魔族たちにはない概念だろうな」
「ホッホッ 本当に不要なモノですな。哀れとすら思いますよ」
「そりゃありがたい。哀れだと思うならその3人を解放してもらえれば嬉しいのだが? 」
「何をおっしゃいますやら、そのようなつまらないご冗談をただお見せして解放しますなどと、それでは人質の意味がないではありませんか、ご承知の通り我々が彼女方を殺すことになんのためらいもございません。しかし、戦においては交渉も必要な戦術。ひとまず戦闘を停止してみてはいかがですかな? 文月白檀皇国騎士団長殿」
シルクハットは笑みを携え白檀へと答える。白檀は念話で守星調査隊へと戦闘停止の指示を出す。咲と花も白檀の元に来て事情を把握する。白檀が人質となっている3人に声をかける。
「俺はロスビナス皇国騎士団団長の文月白檀だ! 安心しろ! 今助けてやるからな! 」
すると人質の女性ひとりが白檀へと声をかける。
「白檀様わたしたちの事はお気になさらず魔族を討ってください! 我々も騎士です! 覚悟はできております! 」
「シャー! 」
「きゃっ! 」
化け猫メイドが人質の女性を殴り飛ばす。
「これこれ、むやみに殴るのではない死んだら人質の意味がないではないか」
シルクハットが化け猫メイドに呆れたように声をかける。白檀が改めてシルクハットに声をかける。
「交渉の要求は戦闘の停止だけか? 」
「さすが騎士団団長にして鳳凰の代行者…… いえ失礼鳳凰その者でしたね察しが良い。人質を解放するにはあなたたちのお仲間ひとりを引き換えにしていただきましょう」
「じゃ俺が身代わりになればいいか? 」
「いえいえあなた様に用はございません。紫がかった赤髪の皇国騎士長でありマルチパープルの…… お名前は…… 如月マノーリア様でしたね」
「何故マノーリアを指名する? 」
「陛下の妃候補だからですよ」
「バカな! 」
淡々と当たり前のように話すシルクハットに白檀は怒りを覚える。カーラスも白檀の横に現れ白檀の気を鎮めさせるように白檀の肩に手を乗せて声をかける
「あの方たちは先日の失踪事件の被害者ですね」
「そうだな。理由がハッキリしたな、マニーに似た女性をさらって魔王の側室でも作ろうとしたんだろうさ」
シルクハットが次はカーラスに声をかける。
「これはこれは女神の眷属大気創成の神カーラス様ですね。お会いできて光栄でございます」
「残念だが、マノーリアはここにはおらん! 」
「でしょうね。大方あなた方は陽動で我々の戦闘で極点が破壊されないよう結界をはりに向かわれたのでしょう。その後我々の手薄な陸側より強襲の算段では? 」
シルクハットもワァプラと並ぶ魔族屈指の軍師であり、守星調査隊の作戦をよんでいた。
「如月マノーリア様が現れるまでは戦闘停止ということで、それまではせいぜい人質救出の方法でも検討ください。では、またのちほど…… 」
シルクハットは挑発するように口を開き、一礼し、そのまま胸壁の階段を降りていった。
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