412-各軍の思惑
「人間どもが攻めてきただと…… アマテウスの眷属ども何を考えている」
有翼魔族のアドレスから報告を受けたワァプラは、カーラスたちが空中神殿で攻撃をしかけてきた行動に不可解だと感じる。魔族同士のしかも大陸から遠く離れた極地に、わざわざ人間たちが攻撃を仕掛ける意味がないのだ。ワァプラは顎をカキながら思考しひとつの理由に思い当たり鼻で笑い配下に指示を出す。
「サーベラス」
「はっ」
「あのカーラスたちは陽動だ。本命は転移の小僧たちが極点に向かっているだろう。マスクたちをアドレスの眷属で後を追わせろ。せいぜい嫌がらせでもしてやれ」
「はっ! 極点の破壊は不要ですか? 」
「不要だ。破壊するにも戦力を分割するほどの重要なものではない。アマテウスの眷属も念の為にとわざわざ結界をはりに来たのだろう、それに陽動で魔王たちと我々の戦力を削ぎたいというのもあるだろうがな」
「御意! 」
サーベラスはマスクことジンジャーとカーンにWBHを追走するように命じる。ジンジャーとカーンが数十匹のアドレスの眷属と共にWBHを追う為に空へと飛び立っていった。それを見送ったワァプラは全軍に命令を下す。
「魔王軍ならびにアマテウス軍共に生きて返すな! 奴らな亡骸を邪神様への供物とする! 皆殺しだ! 」
ワァプラは声高々に進軍を命令し邪神軍は勢いを増したかのように派手な攻撃で答える。一方で魔王軍でもカーラスたちの進軍が魔王メフィストへと報告がされていた。
「陛下いかがなさいましょう」
「よりによって人間どもも攻めてくるとはな! 盛りやがって! 状況はどうなんだ? シルクハット」
「恐れずに足らず。我々も充分な兵と地の利を活かした防衛戦です。そう簡単に陥落することはありません。邪神侵攻軍は正面から迎え撃つこととなりますが、人間は哀れな者共です。いくらでも戦意を削ぐことは可能です」
「どう言うことだ? 」
「なぁに簡単なことです。陛下の側室の人間どもがいるではありませんか」
「人質か? 」
「ええ、人間どもは愚かですからね。見ず知らずの人間を殺されることも戦意を失うきっかけになります。必要があれば4人もおりますので有効に使用させていただきます」
「わかった。シルクハットに任せる。邪神軍人間どもを返り討ちにしてやれ! 」
「かしこまりました陛下」
シルクハットはメフィストへの報告を終え、防衛戦指揮へと戻る。極地の戦闘は乱戦となり、空はカーラスの眷属たちによって支配したことにより、白檀たちは対地攻撃へと移行する。
「魔王軍の砦を攻撃を集中しろ! 」
白檀の指示で皆が攻撃を砦に集中させる。邪神軍に手を貸すわけでなく、砦攻略をしようとする邪神軍の魔族もろとも攻撃の的である。
「上空から攻撃ってなんか悪いヤツみたいだな~ 」
「信治さんブツブツ言ってないで攻撃して! 」
「ある程度魔族を殲滅が目的なんだから! 」
「信治殿! 魔族情けなど必要ないですぞ! 」
信治の言葉に咲と花とチョウノスケが叱咤する。咲と花は上空から遠距離攻撃を継続しているが、チョウノスケは巨大ペンギンの姿でハンマーを振り下ろし、一撃離脱を何度か繰り返し、その度に邪神軍魔王軍の兵が吹き飛ばされている。信治が苦笑しつつチョウノスケの攻撃姿を見ているととなりにいたナズナが信治に声をかける。
「信治さんあれ…… 」
ナズナが指し示す方向を信治が見下ろすと後方の魔艇から、数十体の有翼魔族が魔王軍の砦とは別方向へと飛び立つ姿が見えた。
「葵くんたちに気がついたか? 」
「S級の魔族がいたら厄介ですね。団長! 」
ナズナが白檀へと後方の別動隊の魔族の存在を報告しに向かう。
「ワァプラの目はだませなかったってことか? 」
「有翼魔族が向かうのであれば、増援は送ったほう良いでしょうね」
カーラスが白檀の元へ近づき白檀に声をかける。
「増援と言ってもカーラス様の眷属だけになるだろ? ここで別行動したら間違いなく極地で遭難するよな? 」
「確かにそうですね。では、わたしの眷属を追撃させましょう」
カーラスは眷属を生み出して八咫烏とグリフォン合計20羽を別動隊の追撃に向かわせた。
「後はデイトたちに任せてわたしたちは可能な限りここにいる魔族の殲滅を優先しましょう」
「そうだな、あの程度の魔族ならデイト様もいるし葵たちが苦戦することはないだろう」
「はい、では予定通り砦を破壊し邪神軍を侵攻させましょう」
「だな、んじゃ仕切り直しだ。みんな行くぞ!」
白檀が改めて砦の攻撃を指示して、陽動部隊は魔族たちへの攻撃を再開したのであった。
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