406-如月アオイと赤い糸
「これだけ陛下の希望の容姿だぁ。多少の手荒になってもつれて帰らないとなぁ~ 」
道化師の魔族の姿は見えないが葵にはしっかりと聞こえる。葵には道化師の赤い蜘蛛糸が絡まっている為、切れて姿は見えなくなったが声は聞こえるようだ。
「葵! 魔族はどこにいる? 」
「すみません! 今、見えなくなってます」
「範囲攻撃を使ってみる。葵避けろよ! 」
「了解! 」
白檀が大太刀をかまえて剣技を放つ、葵は白檀の剣技にあわせてグラビティコントロールで宙に飛び上がり白檀の範囲攻撃圏内から回避しようとした瞬間左足首を引っ張られる感覚を覚える。
「うわっ! 」
「逃がすわけないだろぉ! 」
「団長姿が見えないと攻撃は通らないみたいです。魔族は健在です。今、あそこにいます」
葵は宙ずりになりながら道化師のいる方向を剣で指し示す。剣で指したのは左手はワンピースの裾をおさえているからだ。アオイの姿に見えるはた目からは、可憐な女性騎士が宙ずりになりながらも団長に必死に魔族の位置を伝えようとしているように見えている。
「アオイちゃんを助けるぞ! 」
「おお! 」
「お前らは下がってろ! 」
「団長しかし! 」
「いいから! 下がってろ! 」
葵は道化師に向かって攻撃を開始する。糸で繋がっている状況であればダメージが入るようだ。白檀の攻撃には避ける素振りも見せないが、葵の攻撃はしっかりと回避している。道化師も葵と繋がっていないと物理的な攻撃がダメージが入れないのか、葵との糸を繋いでは切り、また繋ぎ攻撃をすることを繰り返している。葵にしても繋がっているときでしか相手を視認できない為、あえて糸を絡ませるような行動をしている。白檀がその様子を見てぼやく。
「まどろっこしい闘いだな! 葵そろそろ決めろ! 」
「簡単に言いますね! 手を貸してください! 」
葵はそう言って走り出す。白檀がそれを見て並走するように走る。葵が白檀に声をかける。
「団長今です! 」
「任せろ! 」
白檀が葵の前に出て盾になるように葵の身を隠す。
「ずいぶん派手な魔族だな! 会いたかったぜ! 」
「鳳凰白檀…… 厄介なヤツめ!」
「糸が切る前に決めちまおうぜ! 鉄火斬! 」
「盛りやがって! 」
白檀がすかさず剣技を放つ道化師はクモの巣をいくつも出して白檀の攻撃に防御し執着に葵を追う。
「さっさと連れ去るのが良さそうだ。ちょこまかするな! 」
道化師は少しイラつきながら葵目掛けて何本糸を放ち絡みつかせる。
「糸巻きにして連れて帰るか」
葵は、またもや宙ずりにされてカラダの至るところに糸が絡まり、身動きが取れなくなっている。
「鳳凰白檀に糸を絡めてしまったのは誤算だ。こっちの音に気がつかれたら面倒だ。さっさと連れ去るとしよう」
「残念だったなピエロ野郎! 」
「き、貴様何者だ! 」
「お前と赤い糸で結ばれたアオイちゃんです」
「お、男ではないか! 」
葵は道化師に左の小指に結んだ赤い蜘蛛糸を見せる。女装姿をしているが、葵が男であることは認識が出きるようだ。さらに道化師は宙ずりになっているアオイの姿を見る。
「残念でした。お前よりも幻覚魔法が得意な人間もいるわけだな」
葵がそう言うと宙ずりになっていたアオイの姿が霧散する。葵は道化師の前でブロードソードをかまえる。
「とどめだランドスライド! ディスピア! 」
「うぎゃーーー!! 」
道化師は身構え防御するまもなく葵の剣技によって打ち倒される。
「葵お疲れ! 」
「団長助かりました。気をそらしてくれたおかげで上手くいきました」
葵は白檀と魔法具で念話していた。白檀が囮になり、道化師に幻覚のアオイの姿を捕まえさせて、その間に幻覚の一部を解除した葵が自身のカラダの一部にあえて糸を絡ませ道化師に接近するという作戦を相談していたのだ。戦闘が終わり同行していた騎士たちが集まってきた。
「特務騎士殿だったんですか? 」
「あ、あはは 実は今回どんな魔族かわからなかったので、唯一わかっていた女性騎士が狙われるって事で幻覚魔法をかけてもらっていたんですよ。内緒ですよ」
「特務騎士ってわかったらショックをうける騎士いるだろうな」
騎士が苦笑しながら肩をすくめる。
「副官アオイけっこう人気あったしな」
白檀がニヤニヤと笑いながら葵を茶化す。
「とりあえず魔族を倒したし、まだ幻覚魔法の効力は残ってるけど種明かししても良いかと…… 」
街に帰って騎士たちを集め報告をする。皆、騎士団に所属するだけあって事情をのみ込むのは早かったのだが、一部の騎士たちから要望が上がった。
「特務騎士殿! 男の姿でなく帰還までアオイちゃんの姿でいてくれませんか! 」
「オレもお願いします。一目惚れなんです! 」
「なんなら男でもかまいません! 」
「さすがに男でもいいからは勘弁! 」
葵は一部の騎士たちに囲まれ求婚されている。騎士たちの熱意に負け帰還までの数日を如月アオイで過ごすこととなった。
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