404-雑木林のクモの巣
「案外海岸から内陸を捜査してたんですね」
「各小隊でエリアを振り分けましたからね。城塞都市騎士団は20小隊になります。我々は第14小隊です。警らを行ったのは第15小隊まででした」
「なるほど~ 海から第1小隊から順番に並ぶようにですよね~ 」
葵は、騎士の話を聞きながら城塞都市駐留の騎士団のリストを見ている。ロスビナス皇国の騎士団小隊は10人編成である。3~5小隊で中隊で10小隊で大隊となるので、規模でいえば2大隊となるが第2の都市駐留の為、特別大隊と呼称している。皇国騎士団トップである白檀が直接指揮を取るロスビナスシティ駐留騎士団も同様に2大隊規模の中央特別大隊と呼称される。葵がリストを見ながら口を開く。
「第1~第8小隊までは男性のみの編成なんですね。男女混合が第15小隊までで、残りの5小隊が女性のみか」
「女性のみで行動することが必要なこともありますので部隊編成が数ヵ月前に行ったのですよ」
騎士が葵に説明をしようとして葵もピン来た。
「皇女がいない城塞都市で要人警護はほとんどないから婀娜対策ですね」
「ええ、ロスビナスシティでは大変だったんですよね? 」
白檀が肩をすくめて苦笑する。
「あん時は男は役立たずポンコツだったな、普通のサキュバスなら魔法具で抵抗できたが婀娜は無理だ」
「何もできず後方にいましたんもんね~ 」
「アオイちゃんも後方に? 女性騎士は駆り出されたって聞いてたけど」
「あ、わたしも捜索はしましたよ。だ、団長の事ですよ~ 」
今はあくまでも如月アオイの為、真実を伝えるわけにいかない。葵と白檀が後方に下がり繁華街を警らしていて誘惑に負けそうになっていたことを思い出す。葵は話をそらそうとまたリストに目を落とす。
「これだけ女性騎士がいるのにターゲットはこの小隊長だった理由はなんだろう? 」
リストには数十人の女性騎士は常駐している。小柄な幼さの残る新人騎士からベテランの大盾使いの大柄な女性騎士や槍使いの騎士の名が記述され、葵も会ったことないが名前だけは聞いたこともある人物で、ロスビナス皇国騎士団を代表するような女性騎士もいるが、今回行方不明になった女性騎士の小隊長は、そこまで有名人なわけではなく、葵は聞き覚えがなかった。
「やっぱり実力というよりは見た目なのか? 」
「その方向で間違いないだろう」
「目的がさっぱりですね」
葵が白檀と話していると騎士のひとりが声をかけてくる。
「あの雑木林の辺りです。小隊長が不思議な事を言い出したのは…… 」
「そこまで大きくない雑木林ですね」
「はい、狂暴なモンスターや魔族の生息がない事は確認された調査済みの場所です」
「まぁ入ってみようや! 」
白檀がそう言って先頭を歩き始めると同時に支獣のオーレが上空へと高く羽ばたき雑木林上空を旋回する。葵の支獣のエールは葵から借りてきた事にしてアオイの護衛として隣を歩いている。葵はすすっと白檀との横に歩み寄って声をかける。
「団長何かあればお願いしますね~ 」
「ところで何かあった場合は、お前はわかるのか? 」
「その辺りは大丈夫みたいです。自分にかけられた魔法や術に対しては感じとれるみたいです。問題は性別関係なく個人に対してかかる術とかだと危険ですけど、その辺りも環さんに対策魔法をかけてもらっています。もし、オレが術とかにかかった場合は環さんが団長に渡した魔法具が知らせてくれるみたいですよ」
「なるほどこれか…… 」
白檀がポケットから環に渡された親指ほどの魔法具を取り出し、それを眺めながら葵に尋ねる。
「で、魔族が葵にとりついたらこれでやりとりするんだろ?」
葵も同じ魔法具を取り出して魔法具のボタンを親指で押してから話すと念話のように白檀へと葵の声が届く。
『この魔法具はふたつでひとつ互いに持ってる相手以外は会話が漏れないそうです。精神汚染されたりだと通常の念話は術者にわかるみたいなんでこれを使った方がいいそうです』
『わかった。相手がどんなやつかわからないがさっさとかたづけちまおうぜ! 』
葵と白檀は魔法具による念話をやめて同行の騎士たちに振り向き白檀が声をかける。
「じゃ林内に入るぞ! 」
「はっ! 」
騎士たちは一度動きを止めて敬礼をする。白檀を先頭に林内を捜索する。鬱蒼とした森ではなく日の光も差し込み木も枝打ちされ管理された雑木林だ特に薄気味悪さ等も感じるような林でもない。日中入る分には女性や子供でも恐怖心なく入れる林だ。林の中央辺りまで進むと葵が魔法具を使用して白檀に念話する。
『まだとりつかれてないですけど念の為に魔法具使いますね』
『何かあったか? 』
『この先に赤い巨大なクモの巣みたいなものがありますね』
『クモの巣? オレには見えないなおそらく他の騎士にもな』
『一応かっかってみます』
『わかった。気をつけろよ! 』
『了解』
雑木林の中には赤い巨大なクモの巣があった。葵にしか見えない罠にあえて罠にかかるふりをする葵だった。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
いいね、ブックマーク、評価、感想、レビュー何かひとつでもちょうだいいただければ、励みとなりますのでよろしくお願いいたします。
ぜひ、下の☆印にて評価してただければ幸いです。




