403-あざとかわいいアオイちゃん
「騎士長とはれるくらいの美人だな」
「団長はいいよな~ 美人に囲まれて」
「けど、団長って皇女にぞっこんって噂だぜ! 」
「あんな美人副官にしたらたまるよ~ オレなら我慢できないわ! 」
騎士たち好き放題話している。騎士たちが軽口を叩く相手は、白檀の副官という事で訪れた葵だ。マノーリアのいとこということで如月アオイと名乗っている。ロスビナス皇国南東の海岸とオーシャンガーディアンとの国境に位置する城塞都市でロスビナス皇国第2の都市である。この都市も防備を固めていたものの魔族の進入を許し行方不明者を出すこととなった。行方不明になったのは、この街に駐留している騎士団小隊長の女性である。雰囲気はマノーリアに似ていてロングヘアの細身で高身長の美人の騎士であった。葵が白檀と共に部屋に入ると騎士団からざわざわと声が聞こえ、おもしろくなった葵はハニカミながら騎士たちへ小さく手を振る。現在の葵の姿であればこの程度でも騎士たちの一部の心を鷲掴みだ。白檀が騎士の前に立ち咳払いをひとつその口元は拳で隠しているが苦笑に歪むのが隣の葵からは見えていた。
「皆集まってくれて感謝する。先日の小隊長失踪の件で調査に来たわけだが、守星調査隊も忙しくてな今回オレの副官に任命した彼女に一任した。小隊長の事で小さな事でも情報があれば報告を頼む。一応言っておくが、彼女を口説いてもいいことないから諦めろよ。まぁどうしてもって言うなら剣で彼女に勝ったら頼んでみるといい」
「だんちょー! 」
葵は白檀が明らかに楽しんでいるの事に抗議するように声をあげたが、騎士たちからは美少女が恥ずかしがっているようにしか見えてない。男はどこの世界も単純である。
「オレ今日からアオイちゃんのファンだな」
「マニーちゃん騎士長だし高嶺の花だしな」
「アオイちゃんだって高嶺の花だろう」
「良いんだよ! あくまでもファンなんだから! 」
「いや、オレは剣を交えてみてもいいぞ! 」
騎士たちがざわざわと騒ぎ始める。葵はあざとい女子はこんな感じかと頭に浮かべながら騎士たちに声をかける。
「副官の如月アオイです♪ 騎士長のマノーリアとはいとこにあたります。マノーリアみたいに剣術や士官としての実力では劣るかもしれませんが、みなさんにお力をお借りして頑張りたいです♪ みなさん小隊長さんの情報があれば小さな事でも良いのでなんでも教えてくださいね♪ こちらから順番に情報お持ちの方は並んでくださーい♪ 」
アオイに興味津々の騎士たちがこぞって並びはじめる。ほとんどの騎士の情報は誰でも知っているような小隊長の見た目や性格の事ばかりで、アオイと話したいだけの騎士もいたが葵は軽くあしらって次々と話を聞き出していく。やはり参考となる情報は同じ小隊の騎士たちの話だった。話をまとめると特にトラブルを抱えていた様子もなく前向きに仕事に取り組んでいたとのことだ。
「強いて言えば最近変わったことは沿岸部の警らに行ったことくらいですね。小隊長が失踪する1週間前です」
「沿岸部の警ら? 通常は沿岸警備は別部隊だよな? 」
葵の隣で一緒に話を聞いていた白檀がその騎士に尋ねる。
「はい、今ではオーシャンガーディアンの海上騎士団とも連携しているので我々が駆り出されることはないのですが…… 海岸に難破船のようなものが漂着したので、沿岸部から周辺を密入国や魔族の侵入がないかの警らにあたりました」
「難破船のようなものがって難破船ではないんですか? 」
こんどは葵が聞き直す。
「かなり破損しているものでしたし、どこの船籍かもわからず」
「その警らで何かあったんですか? 」
「小隊長が声が聞こえませんか? って言っていたんですが我々他の隊の者には何も聞こえてなかったのと特に魔法や術のような術式や罠も見つけられませんでした。小隊長が気のせいかと首をかしげながらその場を去ったのですが…… 」
小隊の別の女性騎士が続きを話すように口を開く。
「週に一度隊のみんなで食事に行くんですけど、小隊長が失踪する前日に食事会だったんです。その時小隊長が上の空というか、何か後ろを気にするような素振りをしていた気がします。その次の日に時間になっても小隊長が来ないので部屋に行ってもいなくて…… 」
現状の話だとその警ら中に魔族にとりつかれた可能性はある。
「では、そちらに案内してもらってもよろしいですか? 」
「アオイちゃんが行くのか? 」
「はい、問題ありませんよ。鳳凰白檀が一緒ですから♪ ねぇ団長」
葵は仕返しとばかりに白檀に魔族との遭遇した場合全部ぶん投げてやろうと画策するが、その表情は団長への絶対的信頼を寄せる美少女のそのものである。白檀がコクりと頷き小声で葵に声をかける。
「もし戦闘になったらお前も働けよ! 」
「いたいけな副官の少女に何言ってるんですか! 」
「ふざけるな! マニーやクーだって先陣きって斬り込むだろ! 」
「彼女たちより剣術に自信がありませんので♪ 」
葵が白檀の腕にいきなり飛びつき声をあげる。
「団長! アオイの事守ってくださいね♪ わたし戦闘になったら初めてなので、みなさんもよろしくお願いいたします」
「アオイちゃん任せておけ! 団長だけにいい顔させられねぇ」
「オレたちの力見せてやるよ! 」
葵は騎士たちに微笑みながら愛嬌を振りまく。女性騎士たちは苦笑しているが白檀との同行に騎士たちのモチベーションは高いようだ。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
いいね、ブックマーク、評価、感想、レビュー何かひとつでもちょうだいいただければ、励みとなりますのでよろしくお願いいたします。
ぜひ、下の☆印にて評価してただければ幸いです。




