402-副官如月アオイ
「騎士見習いのアオイです♪ 」
「別に裏声使わなくても…… 声も変えるから、気持ち悪い声出さないで! けど、しゃべらなければ美人ね」
葵はロングの赤毛のかつらをかぶり、麻衣にメイクをしてもらい、服装も女性物の白基調の縁にネイビーのパイピングが施されたワンピースの魔装衣を着用している。さすがに生足を出すのも微妙なので魔装衣と同じ素材の黒タイツを履いている。葵は地声に戻って麻衣とメイクの様子を見ていたナズナに尋ねる。
「変な趣味に芽生えそうだな。けど、麻衣に声を変えてもらって、ナズナに見た目を撹乱してもらうなら、オレが女装する必要あるのか? 」
「わたしの能力は見た目は変えられていても着ている服装は変えられないからね。葵お兄ちゃんには女装してもらう必要があるんだよ」
「確かにナズナが幼女に変わっても服装はそのまま小さくしただけだもんな。そういうものか」
「自分で言い出したんだから、小さな事に今さら疑問に思わないでよ。ナズナ準備はいい? 葵に術をかけてみて」
麻衣は葵のメイクの完成度に納得したのかナズナに声をかける。ナズナも珍しい葵の姿にニヤニヤと楽しげだ。
「葵お兄ちゃんはリラックスして立っていれば良いからね」
「うん、わかった」
ナズナが葵に手をかざして狸耳の能力で妖術で姿を変える。
「完成でーす♪ みなさんどうですか? 女性騎士のアオイさんです♪ 」
ナズナがカーテンを開けてみんなにお披露目をする。
「完成度高いな! 」
「葵とは思えない! 」
「マニーにメイクや服装よせたからね♪ 」
麻衣が腰に手を当てて自画自賛し、マノーリアを手招きする。
「麻衣さん何? 」
「葵の横に立つ! 」
「えっ!? こう? 」
「双子まではいかないけど姉妹くらいには見えるかしら? 」
「麻衣ちゃん凄い! マニーのお姉さんて言われてもわかんないよね」
「ナズナの幻術補正おかげね♪ 完璧でしょ♪」
「それでは、最後にわたしが補強をしておきますね」
環が麻衣とナズナの力が見破られないように光魔法と女神の代行者の力で補強する。
「これで魔法的力を魔族たちに感づかれる事はないでしょう」
咲と花が姿見の鏡を用意してくれていて葵を手招きする。
「これがオレ? 」
葵自身にも麻衣やナズナの能力は効果がある為、自身が鏡を見ても自分の姿に感心する他ない。葵は鏡から振り向き様に自分が思うマノーリアの女性らしい仕草を真似して口を開く。
「ロスビナス皇国騎士団特務騎士のアオイです♪ 」
「葵本当に目覚めそうね…… 」
「冗談だよ冗談」
「でも今はなりきりなさい! 足閉じる! その容姿でがさつなのは目立つわよ! 」
「わかったわかった」
葵は麻衣に指摘され開いていた股を閉じて女性らしい仕草を心がける。白檀がケタケタ笑いながら葵に近づき声をかける。
「よーし今日から女性騎士アオイは、オレの新人副官として今回行方不明者の出た城塞都市へと向かってもらう。アオイの正体がバレないように、現地の騎士団に対しても素性は証さないつもりだ」
「団長名前変えなくて大丈夫ですか? 神無月葵ってバレバレな気もしますけど」
「アオイの名前はこっちでもいるから問題ないが確かにカンナヅキは珍しいよな…… マニーお前のいとこに女性はいるか? 」
白檀は何か思いついたかのようにマノーリアに尋ねる。
「いとこは皆男性ばかりです。わたし以外は治療師になってますけど…… 」
「じゃ とりあえずマノーリアのいとこってことで如月アオイと名乗っておけ、騎士になったものの文官的仕事が多くてあまり表舞台には出てこなかったことにしよう。従妹のマニーが騎士長になって奮起し始めたみたいな感じでいいじゃないか? 」
「そんな雑な設定でいいんですか? 」
葵が白檀のテキトーに決めた設定を指摘するが、その仕草も女性がかわいらしくふくれてるようにあえてしてみる。
「オレにそういうのやめろよ」
白檀が年甲斐もなく、しかも葵と知りながらそれでもアオイをかわいいと思ってしまったようだ。葵は少し引きつつ苦笑する。
「団長間違い起こしそうだわ」
「おふたり仲がよろしいですが、今は男女しかも団長と副官…… 他者からよからぬ噂をたてられないように気をつけて下さいね」
環が微笑みながら指摘をするが、その目が笑っていない冷静な環も嫉妬心が芽生えるほど、葵の女装は完璧である。そこへ信治とベルーフその後にワークが部屋に戻って来た。
「準備はできたよ~ 葵くんと団長…… こ、こんにちは…… 」
「長月信治さんですね♪ はじめましてこの度団長の副官になりました。如月アオイと申します。マニーとはいとこにあたります」
葵は信治が気がついてないのをいいことに如月アオイを演じる。
「と、どうも…… 」
葵は信治が緊張しているのを見て両手で信治の手をとり声をかける。
「信治さんの錬金術師としてのお力にわたしとても感動しているの♪ 」
「えっ!? いやあれは…… ね… 」
信治は初対面の女性に褒められて真っ赤になって照れている。
「これからもがんばってくださいね♪ 」
「あ、はい! 」
白檀が信治とベルーフに声をかける。
「こんな感じだから今回はお前たちは同行せずに軍備を進めてくれ、二転三転して悪いな」
「そういうことなら僕はかまわないよ」
ベルーフは状況を察しているのかドワーフだから葵に魅力されないのか平然と受け入れる。信治は副官アオイに少し好意を抱いたのか同行できないのが残念なようだ。
「信治さんまたの機会に♪ 」
「そ、そうですね♪ 」
信治がここまで騙されると葵も思わなかったが、カーラスの気持ちを考えるとやりすぎた気はする。信治のチョロさが露呈した。
「信治早く気がつけよ! 」
「えっ? 」
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