400-邪神の苗床
「逃げ足だけは早いな流石シルクハットとでも言うべきか…… 」
「しかし、どこへ行ったのだ? 」
「サタナキア殿おそらくは極地かと」
「なるほど人間も我々もいない陸地となればそこに城を築くか。で、どうする? サーベラス」
「ウァプラ様に報告の為に帰還しましょう」
「攻めなくて良いのか? 」
「焦らなくても良いかと、いかに兵を増やすにしても極地からは船が必要だ。ならば攻めて来るのを待つ方が奴らにとっては不都合な話ではないですかな」
「確かに今回の我々がそうだった事が答えだな」
サタナキアたちはメフィストを追い、ストロングスピアの人々の追撃を回避し海洋へと出たもののメフィストたちの船の速度なのか撹乱なのか追いつくことができなかった。早々に捜索を打ちきりウァプラの待つ自分たちの拠点である邪神の眠る島へと戻った。サーベラスの言葉通りメフィストたちは極地にいる限りは自分たちの兵を増強することはできても攻撃を行うには船を用意し兵を運ぶ必要がある。であれば待ちかまえて防衛戦の方が自分たちが有利である。邪神への信仰をたちきったメフィストの配下の魔族が大陸に自然出現することはない。自然発現しても魔族は邪神への信仰を産まれもって持っているものである。メフィストが生み出すか配下にファーマーのような生産系魔族が現れない限り、大量の魔族を生み出す事はない。極地では人や動物の死体もない為、ゾンビを生み出す為には極地へ死体を持ち込むしかない。サタナキアとサーベラスは総合的にメフィストたちの増強に一定の期間と自分たち以上の兵力になることはないと判断した。
「いずれ蹴散らしてやればよいか」
「魔王などと名乗るバカを野放しするのは不快だが、まぁ束の間の玉座を楽しませてやろうではないか」
サタナキアとサーベラスたちはそのままウァプラの部屋へと向かった。部屋に入るとワァプラがサタナキアを労いサーベラスに声をかける。
「サタナキア殿良く戻られた。サーベラス報告を」
「御意、魔王を名乗る者はメフィストを自称する半人半魔で青星から転移した人間に自然発現したスライムの上位種が寄生しだが、その人間に取り込まれて魔王を名乗るようになったようです」
「青星の人間か…… 魔力を持たない分寄生しやすかったが、人間の方が強い憎悪を持っていたか」
「はい、スライムが過去寄生した者の能力を全て得ております。ファーマーほどではありませんが生産能力で配下を作り出してあります。尖兵のほとんどはアンデッドですが、指揮は魔族特に右腕のシルクハットがもっとも厄介かと」
「シルクハットか懐かしい名だな。昔よく知恵比べをしたものだ」
「メフィストが生み出した者たちは魔王崇拝を当初から持ち合わせており、邪神様への忠義は皆無です」
「そこまでバカなことをするとは…… 」
ワァプラは腕を組ながらため息をつく。サーベラスが報告を続ける。
「シルクハットの知恵でしょうが極地へと回避したようです。城を築くのと兵増強に入ると」
「我々がわざわざ出向くこともないな、いずれここに攻めて来るな」
「はい、サタナキア殿とも同意見でございます」
「であれば今まで通りだ。人間の始末と邪神様の復活を進める。ファーマー」
ウァプラはサタナキアとサーベラスの後ろにいたファーマーに声をかける。
「へいなんでごぜいましょう」
「邪神様の復活を急げ」
「へいへいかしこまりましたですワイ。ウァプラの旦那ひとついいですかい? 」
「なんだ? 」
「邪神様の復活に人の体を使えばはえーですぜ。今、ちょーどいい良質な人間を地下牢で飼ってますぜい、一番いい人間を苗床にしますぜぇ」
「お目覚めを待つよりはその方がよいか、邪神様のお力が目覚めた時に多少弱くなるのではないか? 」
「多少は体になれるまではそうかもしれませんが、サタナキアの旦那たちを見てもらえばそこまでもんだねぇでさぁねケケケ」
ファーマーが嬉しそうに笑う。邪神復活をもくろむウァプラたちは過去の邪神の力をそのまま復活させるには自然に目覚める事を待っていたが、サタナキアやサーベラスに婀娜のように人間の体に悪魔の種子や精神憑依させることで目覚めを促進することが可能だが人間の体との相性もあり目覚めた時に最大限の力が出せない事がデメリットである。
「我々が邪神様をお守りすれば問題なかろう。サタナキア殿はどう思われるか? 」
「ウァプラ殿に同意見だ。メフィストなどとバカが現れたのだ一刻も早く邪神様をお目覚めさせて、メフィスト一派と人間どもを蹂躙してしまった方が良いだろうな」
「よし、決まりだ。ファーマー邪神様の苗床を早急に決めとりかかれ」
「へへへ、おまかせあれケケケ」
邪神軍もウァプラの出現により方向転換をすることとなった。
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