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【祝! 完結】STRAIN HOLE ~よくあるフツーの異世界でフツーに騎士になりました。だってフツーでもそこそこ楽しめますよね? ~  作者: 橘 弥鷺


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20-情報収集

 一匹のハヤブサが、ビナスゲート共和国の首都中央区画を旋回し、主人の元へ戻る。主人の少女は、この国の中枢である、元老院議事堂の屋根にいた。


「お帰り~ユキちゃん。元老院議会が終わらないと動きはなさそうだね。ユキちゃんは引き続き家の方よろしくね!」

「ピー!!」


 支獣のユキはまた飛び立っていった。


「あたしの方も準備しますか~!念には念をいれて、テイルウィンドウ!」


 梔子が風魔法のテイルウィンドウを顕現させ、梔子が息を吹くと線のような風が、対象者に向かって流れて行く、この魔法は元々人命救助の為に作られた魔法で、遭難した者を捜索する為に使用する。一般的な魔法ではないが、梔子のような仕事をする者としては便利な魔法だ。


「あとは~ユキちゃんにもドレイク婦人をマークしてもらってと…うん?!」


 梔子がユキと意識を同期したが、ユキがテイルウィンドウをドレイク婦人に向けたが弾かれた。


「マジックキャンセラー?…そんな高位魔法を?邸宅に行った方が良さそうね」


 梔子は議事堂を後にし、ドレイク邸宅に向かうことにし、建物の屋根を走り抜け、数件飛び越えた時に死角方向から、魔法の矢が飛んでくる。梔子はウィンドウォールで矢を防ぐ、矢が飛んできた方向へ、風魔法の攻撃を放つ、そこには黒づくめのフードを被った男が3人立っていた。


「この国の斥候隊?それとも特殊部隊?3人であたしを止められるかな?」


 フードの男が2人、梔子に攻撃を仕掛けるが、相手にならない、梔子は軽く身をこなして攻撃を回避して、間合いに入り、ショートソードで切りつける。剣技を使うまでもなく、フードのふたりを戦闘不能とさせる。もう1人のフードの男が魔法を放ち、梔子に詰め寄る男は大ナタで切りつけてくるが、梔子はショートソードとソードブレイカーをクロスさせて防御する。


「大ナタじゃブレイカーは使えないけど、これならどうかな?」


 梔子は2本の剣でナタを挟み込み、左に倒しさらに男の首元に蹴りを喰らわす、その蹴りにはリュウシ師範仕込みの魔力が込められた一撃で、少女の蹴りの威力ではない。男はそのまま屋根を転げ落ち、地面に叩きつけられる。


「あたし忙しいから行くね!」


 梔子はくるりと振り向き、ドレイク邸宅へ走り出す。ユキと合流し、魔法無効化の原因を探る。風魔法のトレースウィンドウを顕現させる。この魔法は結界領域や魔法効力を確認する為の魔法である。


「高位のマジックキャンセラーを張り巡らしている…いよいよ怪しいね、何を警戒しているのか?もしくは証したくない何かがあるか?」


 マジックキャンセラーは、魔法無効化の魔法であり、広範囲となると、魔力の消費量がかなり多く、数人がかりで行うか、相当な魔力量の持ち主でない限り行えない、しかも、効果はせいぜい一週間程度なので、個人の邸宅が常時マジックキャンセラーを行っているとすれば、常識的にありえない。先ほどの元老院議事堂ですら同様の魔法は使用していない。


「これ以上の情報収集は危険か、すでに刺客を送り込んで来てるし…」


 梔子は情報収集を終わらせようとした瞬間背後に敵意を感じる。

 ―――――――――――

 同時刻、葵とマノーリアは、ビナスゲート首都東門区画へと足を運んでいた。ロドリゲスの店を調査しにこの区画まで来ている、建物の影からロドリゲスの店の様子を見ている。


「ここが、ロドリゲス商会本店か、確かに儲けてはいるのは間違いないな。」

「そうね、建物のからして豪華だし、人の出入りも多いわね。その収入源が正当なものでないと思うと、腹立たしいわね」

「マニー、あそこのにいる男」


 葵が指差した先には、野盗のリーダーがいた。先ほどの野盗の姿とは事なり、小綺麗な格好に着替えている。


「堂々と街の中にいるとは、ムカつくなぁ!」

「小物を相手にしても、あまり意味がないわ、もう少し様子をみましょう」


 すると野盗のリーダーへひとりの男が近寄り、何かを渡す。封筒と小さな箱を受け取り、封筒を無造作に懐にしまい、小箱を脇にか抱え歩いていく


「封筒はお金だろうけど小箱はなんだろう?」

「金銭渡しているなら、新たな悪行の依頼かしら?放って置いたら被害が出るかもしれないわね。アリスに尾行させた方が良さそうね。あちらの男性には…シャドウ」


 マノーリアは野盗のリーダーに接触した男性を尾行する為に、闇魔法のシャドウ顕現させる、するとマノーリアの影から、影がすっと動きだし、対象の男の影に入り込む、男はそのままロドリゲス商会の建物のに入る。


「ロドリゲスの関係者なのは間違いなさそうね。」

「客のふりして入ってみるか?マニーの薙刀は俺が持つよ、マニーはまだ令嬢のふりの方が良いだろ?」

「わかったわ!それでは参りましょうか?冒険者葵様」


 マノーリアそう言って、葵に薙刀を渡して歩き出す。ロドリゲス商会の店の中に入ると、客が多く賑わっている。本店の店内は広く、少し高級な生活必需品から装飾品を扱っているようで、庶民でなく裕福な客向けの品揃えをしている。ロドリゲス商会は、国々を移動し商会の物流が空にならないように荷を運び、品を最も高値で取引できる地域で販売する。ここまでは、商人の努力で成り上がったといえるが、何でも取り扱うこの商会は、人身売買や違法薬物・違法魔法具など言葉通りに、何でも取り扱っている。表向きは商魂たくましい商人だが、権力を金で掌握し、弱者から全てを根こそぎ奪い取る。国内外でも有名な豪商としてしられているが、国外ではまだ悪行に手を染める程のちからは得ていないようだ。


「ここの店員さんも、自分達の店の悪行をご存知なのかしら?」

「店員は知らずに入ってるんじゃないかな?むしろ堂々としている店員や幹部は加担しているだろうけど、知ってしまって、辞めたら口止めとかありそうだし」


 ひとりの男性店員がマノーリアの姿を見て寄ってくる。


「いらっしゃいませ、お客様。何かお探しでしょうか?」

「いえ、旅の途中でこちらに立ち寄ったので、特に何かを探しているわけではないので…」


 マノーリアは店員を突き放そうとしたが、食いついてきたので、幹部であろう店員なので付き合う事にした。無言でこの店員にもシャドウをつける。


「それはそれは、お立ち寄りいただきありがとうございます!見るところ…お客様の魔装衣からすると…冒険者様でしょうか?」

「いえ、多少は剣術を護身術としてたしなみましたが、冒険者をできる程の腕はございません。この魔装衣と武具も護身用です。ですので冒険者様と共に旅をしています。」

「そうでしたか~とてもお美しい魔装衣ですこと、オーダーメイドの一級品とお見受けしますが?」

「さすがにロドリゲス商会本店の店員の方は、目利きに長けておりますわね」

「それほどでもございません。ところでこの街にはどのようなご用件で?あえて旧街道をご利用になられると言うことは、霊峰神殿かこの国より北へご用が?」


 マノーリアは、探りを入れられているようで、事実を教えたくないので適当に嘘をつく


「こちらの街に知人が入院しているので、旅の途中でお見舞いも目的のひとつにしようと思いまして、そういえばわたくし、お見舞いの品を忘れておりました。せっかくなので、何かないかしら?」


 マノーリアは、客のふりをしてそう尋ねると店員が答えて品を物色しはじめる。


「お見舞いの品ですか…そうしますと…」


 見舞いの品の定番とされるものが、マノーリアの前に用意された。


「どれも素敵で~迷ってしまいますね。」

「どちらも高品質で人気の商品でございます。こちらの品は王国製そちらは帝国製となります。」


 マノーリアの揃えられた、品以外を店内を見渡す。一冊の皮張りの手帳のようなものを手に取り、中をパラパラとめくる。A4サイズの少々手帳にしては大きいサイズだ。何か思いついたようで店員に声をかける。


「お見舞いの品は、申し訳あり見せんが、お花でも用意致します。せっかく素敵なお店に来たので、こちらの日記帳を三冊いただけますか?」


 店員は、少し驚いて対応する。所望された見舞いの品でなく、おそらく自身で使う日記帳を所望してきたのと、用意した見舞いの品よりも高価なもので、しかも三冊頼まれたので仕方がない、葵が手帳類の棚を見ると手帳の中でも高価な部類の品で、やはり庶民が日記を書く為に購入するには高価である。マノーリアは同じ日記帳の色違いを選び包装してもらう。マノーリアは、商品を受け取り葵に外に出るように促し外に出る。


「マニー、三冊も買ってどうするの?しかもあんな店で…」

「あそこで取り扱っている品はどれも適正価格よ、むしろ良心的とも言えるわ、ビナスゲートの首都は新街道へ迂回して出るか、旧街道で西側に出るしかないのよ、だから、ビナスゲートで高値をつけてもおかしくないのよ、さすがに表の商売で変なことはしていないわね。あの店員が幹部であれば、わたしの事を裕福な令嬢と思って、報告するかもしれないわね、野盗のリーダーに何か渡していた彼も、さっきロドリゲスに報告していたわよ、渡していたのは、ドレイク侯爵への書簡と注文の品のようね」

「シャドウで盗聴までできるんだ。魔法は万能だね。」

「騎士長の役職あればこその高位魔法だけどね、無許可で使用すれば、処罰されるわ」


 この世界の魔法は、中位の一部と高位魔法を使用するには許可が必要で、魔法協会に申請する必要がある。申請しても、下位の冒険者や一般の兵士では使用許可がおりない。


「一度、クローバー治療院に戻って、次の作戦会議ね。クーの情報も気になるし、アリスもシャドウも関係者につけているから、情報も入ってくるから、作戦を立てましょう。」

「ロドリゲスの動きは良いの?一番マークした方が良さそうだけど…」

「ご心配なく、既にロドリゲスと接触した彼のシャドウを分割してマークしているわ!」

「仕事早いね~」


 葵は、肩をすくめながら無用な心配だったと、マノーリアを称賛する。最年少で騎士長になったのは、やはり彼女の実力であることを納得する。ふたりはクローバー治療院へ到着し、梔子の帰りを待つ。ふたりにロゼッタがお茶を用意する。


「梔子さん遅いですね。」

「そこまで深追いはしていないだろうけど…確かに遅いわね?」

「クーなら大丈夫だろ」


 梔子は夜になっても帰って来ず、さすがに何か起きたのではないかと、皆が思い始めた時に、梔子の支獣のユキが飛び込んできた。


「ユキ!クーはどうしたの?」


 マノーリアがユキに尋ねると、ユキから梔子の声で喋り始めた。ユキが梔子と精神を同期させて、梔子の思考を声として発声させる。


「マニー、葵、ごめん捕まった!ドレイク元老院議員婦人が黒幕だよ!警戒して!邸宅は高位の魔法無効化を張り巡らしているし、どうにか脱出を試みるけど…あたしの事は気にしないで、あなた達が狙われる可能性が高いから、絶対に気をつけて!」

「クー絶対に助ける!ロゼッタ!ドレイク元老院議員婦人ってどんな人なの!?」

「元々は、元老院直轄の魔導師をされていた方だったはずよ、お名前はサラ様だったはずよ。まずは梔子さんの救出を優先致しましょう」

「クーが捕まるだけの実力者って事だな!」


 梔子ほどの手練れを捕らえる強者との戦いが、はじまりを告げたのだった。

お読みいただきありがとうございます。

引き続き次話をお読みいただければ幸いです。

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