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プロローグ

はじめまして、橘弥鷺(たちばなみさき)と申します。よろしくお願い致します。

このたび、STRAIN HOLEにご興味いただき誠にありがとうございます。是非、このまま作品をお読みいただければ幸いです。

この作品は、私自身の処女作となります。誤字や読みづらい文もあると思いますが、ご容赦いただければ幸いです。

作品設定で大まかな流れを作りましたが、実際に書き始めて、おそらく長編の作品になると思います。完結まで末永く、お付き合いいただければ幸いです。

 桜の葉が生い茂り、葉の色も青々と濃くなる5月の朝。

 神無月葵は、日課である5キロのジョギングをしていた。距離はあまり気にしていなかったが、彼が住む街で、唯一の名所である、約1キロの桜堤と人工湖周辺を走ると自宅から5キロになった。

 葵は東京の大学に通う2年生。埼玉県の自宅から大学まで、1時間半ばかりかかるが、共働きの両親の代わりと言ったら大袈裟だが、妹の双子の面倒や桜堤と超大型ホームセンターくらいしかないが、この田舎の街が居心地がよく、独り暮らしをする気にならなかった。

 葵が小学5年の頃に、母が仕事に復帰することとなり、葵も母が仕事をすることを応援したく、妹達の面倒を見る事をかって出た。

 今は、妹たちも高校生で、世話をやくこともなくなったが、兄妹3人仲良くやっている。

 帰宅しシャワーを浴び、リビングに入ると妹たちが朝食の準備をしていた。


「あーちゃんおはよー」

「おはようお兄ちゃん」


 最初にあいさつをしてきたのは双子の妹のユリ、その後に、スクランブルエッグを盛り付け終わった、双子の姉アヤメが続いた


「おはよう!」


 アヤメは背中まで伸びる長い黒髪で、見るからに真面目そうな高校3年生で、ユリはショートボブで茶髪の今時女子高生である。見た目や性格はかなり違うが、双子だからか仲が良い、兄である葵ですら二人がケンカした姿をここ数年見ていない。


「あーちゃん明日はバイトは?」

「明日は10時から18時までだったかな? ちょっとまって」


 葵は、ユリに聞かれスマホのスケジュールを確認する


「お兄ちゃん明日の誕生日楽しみにしていてね。パパとママも明日はお休みって言ってたから」

「うん合ってた。誕生日ね~20歳の誕生日が家族とか~」


 葵はユリに答え、アヤメの問に天井のシーリングファンあたりを見ながら答える。


「そういうなら、彼女さんと別れなければ良かったじゃん!」


 すかさずユリに触れられたくない話題をふられた


「ユリちゃん! たぶんお兄ちゃんは、その話触れてほしくないと思うよ」


 アヤメが朝食を配膳しながらユリに指摘するが、事実だからしかたない。葵は先月約1年交際していた彼女と別れたばかりだった。


「別にかまわないけどさ」

「パパとママは、お兄ちゃんと一緒にお酒呑めるって喜んでたよ」

「父さんとお母さんには、つきあってあげないとな」

「彼女のいな~い! あーちゃんに、かわいい妹ふたりが、素敵な誕生日にしてあげるからね~」


 ユリは、小悪魔的な笑顔で葵をからかうが、葵は無視するようにアヤメに話かける。


「アヤさぁ! なんか小説借りて良い?」

「いいよ、本棚にあるのはどれでも大丈夫…… ユリちゃん読んでるのある?」

「ユリはこれの続きかなぁ」


 ユリは、葵が選ぶ前に、自分が読む本を、リビングの本棚から、サッととっていく。アヤメの本好きが、家族内に蔓延し、アヤメのコレクションした本は、今ではリビングに本棚が置かれ、神無月家図書室となっている。アヤメが司書で、本を管理しているが、返却を忘れるのは、大概ユリか父だ。


「お兄ちゃん今日は学校電車?」

「あ、うん。最近夕立あるしこの前も雨降られたしね」


 葵は、大学までバイクで通うことがあり、バイクの方が下道でも電車より、少しばかり早く着くのだが、雨の日は雨具を着てまでは乗りたくないようだ。父親の影響でクルマとバイクが葵も好きになり、今乗っているのは250ccのオフロードバイクだ。メーカーが製造を終了する為、葵のバイクという名目で父が購入した。他に2台父が所有している。神無月家は仲の良い家庭といえる。この家庭環境が独り暮らしをしなかった理由でもあるだろう。たあいもない話をしながら、朝食を済ませ3人で駅に向かう。


「ふたりとも早いよぉ~ まだ余裕じゃん」

「そー言って、いつもギリで階段かけあがって、パンチラサービスしてんのだれだぁ~? 」

「あーちゃんウザイ! 」

「事実だろ! 」

「ユリちゃんスカート短いからね…… 気をつけた方がいいね」

「アヤちゃんに言われるとね…… 気をつけるね」


 アヤメのスカートは、膝上5センチ位だが、ユリはさらに短くしている。

 葵たちが住む街の駅は、数年前に新築され改札口が2階となった。以前は古い平屋で小さな駅舎だったが、改札口を入ると目の前がのぼりのホームだった為、朝は便利だった。葵達が子供の頃から駅前の再開発が始まり、ロータリーが広くとられている。再開発と言っても大きな建物はなく駅前でも空は広く見える。

 妹の双子とは3駅先まで一緒で、ふたりとも公立の女子高に通っている。

 妹たちの降りる駅は乗り換え客もいる為、席が空くことが多く、今日もいつも通り葵はふたりを見送り席に座る。

 バックから小説を取り出し読み始める。アヤメの影響で家にあったライトノベルの小説を暇なときに読み始めたらハマり、最近では葵もアヤメが買わなそうな、ライトノベルを葵が購入し、神無月家図書室のレパートリーを増やしている。

 葵は、本に読みふけっていたが、急に睡魔に襲われた。

(あれ? いつも眠くならないのに…… 昨日も別に寝るの遅くなかったよなぁ)

 葵は、睡魔に勝てずに、そのまま寝てしまう。


 葵の意識が、浮上してくると共に、肩を揺すられ、声をかけられていることに気がつく


「……方! 」

「起きろ! 旅の方! 」


 葵は、寝ぼけながら声の方に顔を向け、終点駅まで寝てしまったかと、一気に目を覚ます。

 だが、葵の目の前には、電車の車内とは、まったく違う光景が広がっていた。駅員さんに声をかけられたと思ったが、声の主は金髪の初老の男性で、どう見ても日本人ではなかった。顔立ちもうそうだが、服装も現代日本の服装でない。葵は、周りを見渡すと電車内ではなく木製の椅子に幌の張った車内にいた。

 先程の男性が誰かと話している。方向を見ると馬でなくて恐竜? いや地竜というのか正面を見据えて何か威嚇している。


「何匹いる? 」

「15匹くらいは見えますね~ 」

「恐らく…… 20から30ってところか? 私は剣専門だが、主人は武器が使えますかな? 」

「私はもともとレンジャーでした。弓とこの地竜に戦わせることができます」

「上出来だ! 援護を頼む。さすがに全部は無理だが、ある程度倒して逃げるか?」

「そうですね。そうしましょう。後ろの兄さん目が覚めたかい? 」


 幌馬車を引く主人が、前を向いたまま葵に声だけかける


「旅の方! 街道の結界が破壊され、正面にゴブリン達が待ち構えている。たかがゴブリンだが、見えるだけで数が多い! 旅の方戦えるか? 」

「えっ? あ~? へっ? 」


 葵は、初老の金髪の男性の言っている意味がわからない

(あれ? まだ夢か? ラノベ読みながら寝たからか? )

 葵は、夢と思いつつも妙にリアルな感覚を感じながら、それでも夢と自分に言い聞かせ、初老の男性にテキトーに話を合わせる。


「それほど、強くないと思いますが、剣か刀があれば」

「兄さんの椅子の下が物入れだ! そこに武器は入れてあるから好きなの使ってくれ! 」

「あっ! はい」


 葵は物入れを物色し、剣とサーベルを取り出したが、剣は思ったより重かったのでサーベルを選んだ。

(微妙な重さを感じるなんてどんな夢だよ! )


「主人! 我々が出たら、地竜にも命じてくれ! 後騎士団にも救援信号も頼む! いくぞ! 旅の方!」

「承知! ダンナと兄さんも気張ってくれ! ラストスタンドの王都はすぐだ、騎士団もすぐに来るからな! お前のしっぽは最強だ! ふたりに負けんなよ!」


 馬車の主人が初老の男性に返答しつつ、地竜に命じ、腕輪をつけた左手を掲げると赤い光が、空高くレーザー光線のように、一筋の線を残す。主人が手を下ろしても、その光は、宙に浮くように残像を残している。主人は、自分の下から弓と矢筒を出し、戦闘体制に入る。

 葵は、馬車の前に出ると数十メートル先に、150センチくらいの緑色の怪物の群を認識する。2足歩行はしているが、人間とは明らかに違う容姿をし、こちらを威嚇し会話もできないようだ。

 葵は、自分の感情に違和感を感じる。今から生き物を殺すにしては、自分が冷静な気がするし、あの怪物を殺さないといけないと感じている。この状況に恐怖心でなく、高揚している感覚を覚える。

(どこまでリアルなんだよ…)

 葵は、ゴブリンの強さがわからないので、正面にいる比較的小さめのゴブリンに仕掛ける。葵が剣を選んだのは、高校1年まで剣道をやっていたことから、とっさに武器として選んだのだった。

 葵は、ゴブリンの頭上にサーベルを振り下ろすが、ゴブリンは、持っていたこん棒で防御のかまえをとる。かわされるとわかった瞬間に、葵はサーベルをとっさに右横に傾けて、がら空きの横腹から切り裂く。

(案外、俺強いのか? )

 葵の後ろから、槍を持ったゴブリンが迫ってきたが、槍の突きをサーベルではらい、そのまま間合いを縮め、ゴブリンの喉元に突きをはなち2匹目を倒す。

 しかし、多勢に無勢の状況は変わらず。葵も初老の男性も囲まれる。地竜もゴブリンが戦うなかで知恵をつけたのか、距離をとられ槍や投てき具を持ったゴブリンに囲まれている。

 葵は奮戦しなんとか7匹のゴブリンを倒すが、既に肩で息をしている。

(夢なら死ねば目が覚めるか? けど、なんかスゲーいたいんですけど)

 葵は、致命的ダメージは受けていないものの、疲労感はかなり感じている。心が折れたら周りのゴブリンが、距離をつめてくること理解している。

(ここらが限界か? なんて最悪な夢だよ! 絶対に目覚めが悪いよなぁ)

 葵が諦めようとした時、後方から女性の声がした。


「あきらめないで! 3数えたら後ろに下がって! 後ろは気にしなくていいよ! いくよ! 1,2,3! 下がって!」


 葵は、その言葉に従い前方だけ警戒し後方に下がる。その瞬間に、葵の後方で囲んでいたゴブリンが数匹絶命する。そのゴブリンの隙間から少女が現れ葵と入れ替わり、ゴブリンの前にたった。少女が、両手に持ったショートソードで、前方のゴブリンに切りつけ、前方のゴブリン数匹も絶命する。少女は何もない場所をまるで空気の壁が存在するように、空気を蹴り初老の男性に群がるゴブリンを斬り倒す。そして、少女が地竜を見て叫ぶ。


「かわいい地竜くん! ドラゴンの眷属としての力を見せなさい! 私が力を貸してあげる! サラマンダーナパーム!」


 彼女が叫び、胸元にあるネックレスから、淡い光が地竜へ降り注ぐと、地竜が咆哮を上げ、周りのゴブリンを見渡した。次の瞬間に地竜が炎を吹いて周りのゴブリンを焼き払った。


「間に合ってよかったぁ~! 地竜くんカッコよかったよぉ~ 」


 その少女は地竜に近寄り撫でながら地竜を労う。


「すぐに王都の守備兵が来てくれるから、結界もなおるから平気かな? 」

「あなた様はロスビナスの使節団の方ですかな? おかげさまで命拾いをしました。」


 初老の男性が感謝を伝えると


「いえいえ、私はロスビナス使節団の文月梔子ふみつきくちなしと言います。普段は騎士団の斥候隊隊長してます。無事で何よりでした!」


 少女はそう答えた。少女は肩までサラサラした白髪で、白髪といっても艶がありとても美しい髪色をしており、スレンダーで健康的な美少女だった。フードのついた緑と黄色を基調とした服は、帯のような物で縛られ、後ろに帯が長く揺らめいている。胸元に小さめの防具を装備し、手にはグローブをはめている。下はホットパンツに白のハイカットのスニーカーような靴を履き、ニーハイのタイツの上に膝当てをつけている。武器は腰にウエストバックのような鞘にショートソードとソードブレイカーを装備している。男3人と地竜で危機的状況だった局面を、彼女ひとりで覆す力を持っているのに、気さくで明るい印象を持っていて、猫のようなイタズラ好きの笑顔見せていた…… いや猫なのかもしれない…… 彼女の容姿で最も葵を驚かせたのは耳としっぽだった。彼女の頭の上には、猫のような耳とお尻の上から猫のしっぽがはえている。

(俺、重症かも? 猫耳美少女の夢見るとか、ヤバイな)

 梔子が葵の方に顔を向けて葵に問う。


「お疲れ様! 名前は? 」

「神無月葵です」


 梔子が葵を目文するように見ながら小さく目を見開く


「葵くんもしかして日本人? 」

「はい えっ? 日本を知ってるんですか? 」


 ふたりのやり取りを見て幌馬車の主人が思わず声をだす。


「兄さん、石無しかよ! だからゴブリンが…… 」

「今の発言は、国際問題になりますよ! 日本人が魔物を呼ぶというのも間違いです。日本人を石無しって呼ぶのも問題! 発言に気をつけて下さいね! お二人には申し訳ないけど葵くんが日本人なら保護が優先だからわたしは葵くん連れて先に王都に戻ります」

「すみません…… 」


 梔子が主人をキッとにらみ、発言を無言で制止し、早口で一方的に伝え、主人の謝罪は興味がないように指笛を鳴らす。すると大きなハヤブサが現れる。


「キー! 」

「葵くん乗って! 」

「えっ! あー 」

「早く! 」

「あっハイ! 」


 言われるがまま、梔子が乗るハヤブサの後ろに葵もまたがる。そのまま大きなハヤブサは、一気に上昇し、風を捉えて、はばたくのを止め風に乗る。梔子が葵に声をかける。


「すぐに王都の使節団の宿舎に行くね! 空飛んでて怖くない? 」

「うん、大丈夫です。」

「かしこまらなくていいよ! 何が起こっているか葵くんもわからないよね! 葵くんっていくつなの? 」

「19歳…… 明日で20歳になるけど…… 文月さんそれよりこれはいったい? 」


 葵もずっと夢だと思っていたが、手に伝わる感覚や、頬にあたる風の感覚があまりにも現実感を感じる。現実を感じるのは感覚だけでなく匂いも強く感じる。戦っていた時はゴブリン独特の臭いや周りが血生臭かったが、今は前に乗る梔子から甘い香りがする。


「あたしは18歳ね。梔子でいいよ! 親しい人はみんなクーとか呼んでくれるよ。葵くん疲れているよね? これ飲んで! 詳しいことは騎士長からね、あたしは説明するの苦手だから」


 梔子がそういいながら、葵に親指サイズの小瓶を渡す。中には黄緑色の液体が入っている。葵はふたをあけ一口で飲み込む。すると疲労感やかすり傷が一気に回復した。


「回復ポーション? 」

「正解! 元気になったぁ? 」


 梔子も葵が回復して安心したのと安全圏に入ったのか、柔らかく少し幼い口調になる。


「それと、騎士長って言っても、あたしの幼なじみの女の子だから、緊張しなくて平気だから、騎士長って聞くと、強面の男の人、想像しちゃうよね~ でも~ 葵くんは別の意味で緊張するかもね! 美人で強いんだよ~ 」

「そうなんだ…… 失礼がないようにしないとね。歳が近いとは言え騎士長さんだから初対面からはね。敬意ははらわないとね…… 梔子さんも隊長なんですよね……? 」

「あたしは別に気にしな~い。葵くんとは友達になりたいし、日本の事とかも気になるし。あっ もう着くからしっかりつかまっててね!」


 葵は、この現象を異世界転移ではないかと、疑いはじめるが、葵の常識が邪魔をする。そんなわけないと……

 神無月葵は、19歳最後の日に、非常識な異世界転移現象に巻き込まれ、新たな世界での人生を歩む事になるのであった。

お読みいただきありがとうございます。


次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。


ブックマーク、評価、感想、レビュー何かひとつでもちょうだいいただければ、励みとなりますのでよろしくお願いいたします。


ぜひ、下の☆印にて評価と感想をお聞かせいただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 話に流れがあり読みやすくワクワクしました。 続きが楽しみです!! [一言] とても読みやすく展開も分かりやすいのでよかったです! 続きがどんどん気になりましたー!続きも読ませて頂きます!
[一言] これからも面白作品を楽しみにしています。 応援しています。
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