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第一章 3 春 『強引なソイツは』


「あ、あの。1つだけ聞いてもいいですか?」

「どうぞ?」

 

 相手のイケメンが頷いたので、俺は尋ねた。


「……あなた誰ですか?」

 

 大切な質問だった。

 名乗ってもいないのに俺の名前を知っていて、相手の格好は白のスーツと、どこかおかしい。

 不審者以外の何者でもない。

 怖い。

 正直、めちゃくちゃ怖すぎる。

 

 すると目の前の青年は真っ直ぐな瞳を俺に向けたまま、こう言った。


「あなた誰って。天使ですけど?」

 

 …………………………俺は確信した。


 うん、ヤバい。こいつはヤバい。

 きっと頭がおかしいのだろう。

 

 怖くなってきた俺は、適当な言葉でこの場を切り上げ、相手には帰ってもらうことにした。


「そ、そうですか。天使……でしたか。それは良かったです。それじゃあ帰る時は急な段差に気をつけて頂いて……」


 俺のその言葉に、ドアを掴んでいる目の前の青年の手に力が込められた。


「そうなのですよ。今日は最高にハッピーなお知らせをお伝えしようと天界から遥々ここまで馳せ参じたわけで……。とりあえず、中に入れて頂けますか?」

「いやいや。あの僕、今日は用事があって忙しいので! マジで忙しいんで! ウソじゃないんで! だから今日のところはどうかお引き取りを!」

 

 俺はそう言いながら無理やりにでも扉を閉めてやろうとドアノブに力を込めた。

 

 だが、そんな俺の手を相手の青年が必死に掴んで離さない。


「待って待って。閉めようとしないで下さい。 めちゃくちゃハッピーな話ですから! 貴方の人生、360度変わるような素晴らしい話ですからッ!


「それを言うなら、人生180度変わる、だろ⁉︎ 360度ってあんたそれ、一周しちゃってるじゃないか! くっ! お、おい離せ! この不審者!」

 

 俺たちがアパートの玄関にて大声で叫んでいたせいか、ご近所さんや通行人たちが白い目でこちらを見て、ヒソヒソと話をしていた。

 

 太陽が南の空で輝く真っ昼間のせいか、やたら目立つ。


「やだ。何あれ……」

「イヤだわぁ、真っ昼間から大騒ぎして……」

 

 …………マズイな。いよいよ住人である俺の肩身が狭くなってくる。


「わ、分かった! 中で話を聞いてあげるからもう大声で叫ばないでくれ……!」

「へへ。最初からそう言えばいいのですよ。それじゃあ、お邪魔しますということで……」

 

 口元をニヤリと歪ませながら青年はそう言うと、脱いだ靴を綺麗に揃え、居間に向かって飛び跳ねるように歩いていった。

 

 くそ! なんか面倒くさいことになったぞ……。

 

 俺はため息を吐きながらも、やがて仕方がなく彼に続いて靴を脱いだのだった。

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