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第一章 2 春 『これまでの人生500文字』
彼、桐島敬は今から20年前の7月2日に生を受けた、極々平凡な中流家庭出身の日本男児である。
桐島敬ほど平凡で空白だらけな人生を歩んだ人間は、そうはいないだろう。簡略的に語るのであれば、10分で事足りてしまう人生。
地元の幼稚園、小学校を卒業し、地元の中学へそのまま進学。地元の高校を卒業した後、一人暮らしに憧れて、『普通』という言葉がピッタリな、これといった何の特徴もない平凡な都内の大学へ進学。普通も普通。THE・普通の人生というのが、桐島敬の20年だった。
いくらか補足するのであれば、彼には友達が1人もいなければ恋人もいない。最近、大学もサボり気味で、やっている事といえば、部屋で1人寂しくゲームをするか、バイトに出てほんの僅かな小銭を稼ぐかのどちらかである。
人生に目標もなく、やりたい事もなければ、希望ない。いつ死んでもいい。いつ終わってしまってもいい。でも、死ぬのは怖いから頑張って今日も生きてる。
それが桐島敬の全てであった。