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第一章 1 春 『出会いのシーズン』
「桐嶋敬さん、ですね? 今日は貴方にとあるハッピーなニュースをお知らせに参ったのですが……中に入っても大丈夫ですか?」
「…………へ?」
自分の部屋の玄関先で唐突にそんなことを告げられ、思わず彼は素っ頓狂な言葉を漏らしてしまった。
突然のことで、何がなんだか分からない。
部屋で昼寝をしていると突然、インターホンが鳴り、
「セールスマンかな?」と警戒しながらドアを開けたら青年がいたのだ。
年は彼の少し下くらいだろうか。
身長は彼より少し低く、外国人かと見間違うほどの、端正な顔立ちをしていた。
全身をかっちりとした白のスーツで包んでいる。
お洒落なおかっぱ、という言葉の似合うヘンテコな髪型に、透き通った水色の瞳。
そしてその瞳は、状況が掴めず固まったままの彼をじっと見ていた。
彼は後に、インターホンの音など無視して、昼寝を決め込んでおけば良かったんだと後悔する事になる。
まぁ、結論から言うと。
その青年はセールスマンよりも遥かに厄介な存在だった。