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カプセルからこんにちは!女神様の為にチートで活躍します  作者: rayiーーレイ
第一章 王国脱出編
5/8

第5話 黒き魔物と怪しい商人

あれから1日、休憩しながらもかなりの距離を歩いた2人は野営地に到着していた。ミアンはやっと休めると思い野営地に入ろうとしたのだが……。


「待って、ここで寝るのは危ないかも」


『なんですの、急に。野営地は休む所ですよ?』


「休憩ならいいんだけど、寝るとなると、安全とは限らない。僕が寝てる時に襲われたらミアンは対処出来ないでしょ?」


『それはそうですけど、野営地以外でどこで寝るのよ?』


僕は上を指差す。


『また登りますの……高い所は苦手ですわ』


「野営地よりは、人目につかない分安全だし、何かあっても僕を起こすまでの時間くらい稼げるでしょ」


『ええ、そう言われると、そうなのかしら』


あまり納得はしていないようだが、渋々了承してくれた。


「じゃあ行くよ」


『きゃっ、またですのー』


僕は、ミアンをお姫様抱っこして、木の上へと駆け上がる。そして、今日寝る場所に最適そうな場所を探す。


「お、ここなら少し幅あるし、この凹みがお尻にフィットしそうな感じ当たりだよ」


腰をかける二人。


『うぅ、でも慣れませんわ』


「これから慣れるよ」


『これからって、街までずっと木の上ですの?』


「街までというか、野営する時はずっと木の上で良いと思ってるけど」


『それはダメです!木の上に現れる魔物だっていますの。世の中には、魔物避けの結界の付いたテントなどもありますの。安全を考えるなら木の上は良くないと思います』


凄い力説されたけど、そんなに嫌かな?まあ、確かに木の上に魔物が来ない保証はない。結界付きのテント、考えて見ても良いかも知れない。人間相手には効果がないのが怖い所だが。


「分かったよ。街に着いたら見に行こうか。でも人間相手には効かないなら木の上でテント広げるのが一番安全かな?」


何言ってるのこの人……みたいな顔してる。これだけあからさまな顔されれば僕も気付くよ。


『木の上がそんなに好きですの……。こんな場所にテント広げたら怖くて寝れませんわ』


うーん、テント広げるには確かに狭い。どうしても人への警戒心が拭えない。毒殺されかけ逃げ出して、盗賊に捕まる少女を発見。人間不信になるのも無理はない流れだ。


「何か考えるよ、とりあえず先に寝ていいよ」


『おやすみなさいですわ』


僕の肩に寄りかかり寝る少女、経った1日で随分と心を開いてくれたようだ。


ようやくゆっくりと見る事が出来る。僕はどれくらい上がったのか楽しみにステータスの確認をする。


◆ーレティス・アルファームー◆

種族:人族 年齢:10歳

レベル:5→21

生命値:60→1820

魔力値80→1840


力:30 →1810 体力:20→1800

知力:40→1820 敏捷:40→1820


◆レアスキル

治癒力増加

剣の極

成長促進

状態異常耐性

火炎魔法

氷結魔法

空間魔法

◆ユニークスキル

能力補正

魔素適合

◆レジェンドスキル

武具創造


◆加護

女神エアリルの加護

女神イデアの加護


◆ー➖ー➖ー➖ー➖ー➖ー◆


レベル21とは、随分と上がっていたようだ。成長促進の効果と、元Aランク冒険者を倒した事で多くの経験値が入ったようだ。人と魔物どっちが経験値多いんだろう。と物騒な考えになりそうだったので一先ず考えるのをやめて次へと移る。


レベル1当たり生命値と魔力値は今のところ10。その他の能力は5上がっている。後は能力補正の効果で100×レベル分上がっている。


能力補正、チート確定!普通は簡単には与えたらダメなやつだと僕でもすぐに分かる程にわかりやすいチートスキルだ。勇者とか英雄になるような人が貰うスキルだよ、これ。


僕はこの先も、レア以上から年に一度だけガチャを引ける。ユニーク以上が当たる可能性はまだある。エアリルこんな事して大丈夫だったのかな?と思ったが素直に感謝しておく。強くなれるに越した事はないよね。怒られるとしてもエアリルだしね。あ、でもイデア様に怒られるならありかもしれない……。


◆ーーーー


その頃、神界では未だにイデアによる説教が続いていた。


『いたぁい。ごめんなさあぁい、もうしませんからぁ。ゆるじてぇ』


とても女神とは思えない、鼻水と涙でぐちゃぐちゃになった顔で懇願しているエアリルだ。


『ちゃんと、何かあったら相談するように言いましたよね?ユニークスキル2つに、レジェンドスキルが1つ?今回のお詫びでユニークスキルを一つ渡すだけでよかったでしょうに。ユニークスキル2つ持ちなんて勇者でもあり得ないのよ。それに、レジェンドスキルは中級神のスキルよ』


『へっ?』


『ようやく気付いたの?あの子が当てたスキルは貴女の神格よりも上のスキルよ』


『え、でも。ゴットランクが神のスキルと……』


『ゴットランクは上級神以上が使うようなスキルという意味よ。何故あんなのが入ってるかはきっとあの方のお戯れでしょうけど、普通は当たらないのよ。コモン、アンコモンスキルが膨大過ぎる事でね』


『わ、私ど、どうちたら……いいでしょうか』


『とりあえずあの方に相談してきます。でも、その前に後5000叩きしましょうね』


『いやあぁぁ、たずけてぇ、お嫁に行けなくなるー』


それにしても、エアリルが溜め込んだ神力程度じゃ、実際ここまでの効果は出せるはずもない。イデアは疑問に思いつつもエアリルのお尻が一回り大きく腫れ上がるまで叩き続けるのだった。


◆ーーーー


見張りを交代してから3時間程、僕は目を覚ます。綺麗な宝石のような瞳が目の前に。


「おはよう」


『え、っあ。はい。おはようですわ』


なんであんな近くに顔があったのか気にはなったが、顔を逸らされたので聞きそびれてしまった。


朝ご飯変わりに毎日の僕の夕食から抜いていたパンを食べる。


「じゃあ、今日も野営地毎に休憩でいこうか」


『はい』


2日目の旅路では、3つの野営地があるらしい。順調に進み、3つ目の野営地へと到着した僕達がそこで見たものは。


「これは……ミアンは見ない方が良い」


『なんですの、私なら大丈夫ですわ』


冒険者達だろうか、鎧は引き裂かれ、身体中は血塗れ。もはや生きてる者はいないだろう事が明白な程に悲惨な状況だった。


ミアンはその悲惨な現場を見てしまい、吐いてしまった。僕も耐性なければ確実に吐いてたな。


「見ない方が良いって言ったのに」


『ここまで酷いとは思いませんでしたわ……うっぷ。あっち向いててくださ、うっ、い』


見られたくなかったようだ。

安全の為に、ミアンが落ち着くまで木の上に登る。吐いたがやはり精神的に来るようだ。僕は……それ程感じる事はない。


『また木の上ですのね』


「でも、野営地が安全ではないのも分かったでしょ?僕達よりも戦いなれた冒険者達が少なくとも10人近くやられてるよ」


『うっ、言い返せませんわ。それよりも少し休みますね。限界です』


目を閉じてゆっくりするミアン。僕はその間に現場の確認をする。


鎧などの数から、少なくとも10人近くがやられている。鈍器で殴られたような人や、爪のようなもので切り裂かれた人もいる。一体何が?木の上推奨は嘘ではないが野営地が比較的安全だからみんなが利用するのはわかっている。


「まさか、人為的なものなのか?」


記憶の中にある小説などの1セリフを言ってみたかった。確証も根拠もない。ましてや推理力なんてものは備えてない。もう少し魔物の知識とかあれば別だったが……。ミアンが起きたら聞いてみるか。僕よりは知ってるはずだ。知らずに進むのは危ないと思うし。


暫くしてミアンが起きた。多少顔色は良くなった気がする。


「大丈夫?」


『ええ、もう平気ですわ』


「起きてすぐに悪いけど聞きたい事があるんだ」


『私で分かる事なら遠慮はいらないですわ』


「ミアンが寝てる間に降りて色々調べてきたんだけど、鈍器の様な物で殴られてる人、爪の様な物で切り裂かれてる人がいたんだ。魔物の事よく知らないからミアンならと思って」


ミアンは考える素振りをしながら、ボソボソ何かを言っている。


『多分ですけど、この辺りに出ると言われている魔物の中だと、オークやオーガ、森ウルフが該当すると思いますわ』


「豚と、鬼と狼か……」


『その言い方はあれですけど、合ってますわ。オークは大きな棒を武器として使うので今回の鈍器に当て嵌まりますわ。しかし、鎧などがめちゃくちゃなので、もしかしたらオーガのような力の強い魔物に殴られた可能性もありますの。それに、オーガには長い牙と爪がありますの。森ウルフではこれ程の被害は出ない気がしますが、上位種が出ていれば爪に関しては森ウルフのが近い気がしますわ』


思った以上の答えに僕は驚いている。じーっと、ミアンを思わずガン見している。


『ずっと見られてると恥ずかしいのだけれど』


「ごめん、僕と歳変わらないのに良く知ってるなと思って感心してた、魔物の事とか、全然僕知らないから」


『来年から、王都のセプテンブリス学院に通う予定でしたから必須科目の生物科の勉強をしてただけですわ、それに自分が嫁ぐ先の周辺の事くらい調べるのは当たり前ですの』


学院か……僕も本来なら再来年には通って学院満喫ライフを送ってたのかな。くっ、悔しくなんてないんだ。別に学園でハーレムでチートな生活なんて。


『なんか卑猥な顔をしてますの。お父様も時々そんな目を……』


卑猥な顔とは失礼な、顔は結構イケメンと言われる部類なはずだ。イデア様ならきっと。実際僕の顔ってどんな感じなのだろうか?髪は伸びていて薄い紫色なのはわかるけど、鏡なんてないから顔はわからない。ミアンに僕の顔ってどんな顔?なんて聞くわけにもいかない。


「そんな事ないよ。学院とか行く機会ないからさ、どんなのかなって想像してたんだよ」


『学院で女の子に囲まれてとか考えてたんですわね』


「な、なんでわかるの!?って、あっ」


思わず、答えてしまった。


『はぁ、やっぱり男の子の考えてる事なんて同じですのね。お父様もいつも女女、でしたわ』


「誤解だよ、僕は友達が居ないから女の子だけじゃなく、男の子とも仲良くしてる光景を浮かべてたんだよ」


『あら、そうですの?』


「うん、だからミアンが初めての友達かな」


『私が、初めて……』


「うん、ミアンが初めてだ」


なんか喜んでるみたいだし誤解は解けたようだ。さて、さっきの続きを、と思ったところで。誰かが来たようだ。慌てて喋ろうとしてるミアンの口を手で塞ぐ。


何するの!?と目で訴えるミアンに目で合図を送るが伝わらない。バレたらまずい気がする。こうなれば……。最後の手段。僕は手を話し息を吸って今にも叫びそうなミアンの口を僕の口で塞いだ。


目を見開いて驚く、ミアン。ちょっと悪い気がするけど、命の危険よりはマシだと思って欲しい。唇を話すとミアンは突然大人しくなった。僕は静かにと合図をし、木々の間から慎重に観察する。


黒いローブを着た僕達と同じくらいの男の子?何か魔法を唱えたと思ったら、闇に引きずりこまれるように死体が消えた。僕が驚き、瞬きを一瞬した後に再度見ると、男の子は消えていた。


爆発寸前だった、ミアンが限界からか、叫んだ。


『な、な、急に何するのよ!?』


顔が真っ赤だ。こんなに動揺するとは。中身は普通の女の子か。


「ごめん、野営地に誰か来たから、これが人為的ならバレたら殺されると思って。手だけだとミアン確実に叫んでたでしょ?だから、少しの間ミアンが驚くような事が必要だったんだよ」


『そ、そ、そんな不確定な事でキスしたんですの。乙女の唇はそんな安くないですわよ!』


「でも、実際見たらミアンも理由がわかるよ」


僕の方は来て先程の悲惨な野営地を覗くミアン。


『死体が……それに、血溜まりが出来ていたのにそれもない。どう言う事ですの?』


「黒いローブの黒髪黒眼の男の子が、何か魔法を唱えたら闇が現れて全てが消えてたんだ。瞬きした次の瞬間には男の子も消えてたけどね


『黒髪黒眼ですって!?しかも闇魔法』


「知ってるの?」


『知ってるも何も魔族の特徴そのものですわ。でも、何で魔族がこんな所に……』


魔族か……人間とは別の種族だっけ、確か魔法が得意で身体能力も高いが、繁殖力が低い。そんな記憶がある。小説と同じかはわからないけど。


「魔族がいると不味いの?」


『わかりませんわ。でも、魔族はここ数十年目撃されてないはずですわ。きっと何か企んでるのよ。早く伝えないと』


「無理というか、伝えたら確実に身元バレるし。身元明かさずにしたら信用ない僕らは信じてすら貰えない。むしろそんな数十年現れてない魔族が出たと言って証拠がなく話せば危ない子として捕まる気がする」


『でも、事実ですわ……』


わかるけど僕達子供の信用は限りなく低い。侯爵貴族であるミアンなら多少変わるだろうけど、確実に実家へと報告が行きミアンの自由はなくなるだろう。


「子供の信用なんてそんなもんだよ。だからこそ、信用をつける為に冒険者になるんだ。高ランク冒険者は貴族と同等の身分が保証されてるからね」


『私が、実家に戻れば……』


「戻った所で信じて貰えず終わる可能性のが高いよ。それなら、早く強くなるか、信用出来る人を見つけて協力を仰ぐのが妥当かな」


『分かりましたわ。私はレティスについていきますの。責任も取って貰わないといけないですもの』


責任?責任……。あっ。貴族の令嬢へのキスって確か。


「さっきのキスは、命が代価だから」


『そんな事関係ありませんわ。乙女の唇の価値の前には命なんて安いですわ』


そうなの?乙女の唇って命より価値が高いの!?


「まだ僕達10歳だし、成人してもミアンがそうしたいなら僕も考えるよ」


『それで良いですわ、それよりどうしますの?まだ魔族がいるかもしれませんわ』


「大丈夫だと思う。これだけ綺麗に出来るんだから処理終えたら此処には来ないはず。ただ、魔物が気になるかな……」


オーガとか、名前だけで強そうだもんな。僕なんか即死しそうだ。元Aランクに勝てた僕なら行けるか?いや、でもあれは罠張りまくり状況だったからノーカンだよな。


『レティスなら勝てますわよね?』


「え、無理じゃない?僕戦闘経験、盗賊のみだし」


『え?』「えっ?」


『嘘ですわよね?盗賊団を一人で潰してましたわよね』


「あれは、恥ずかしいからあまり言いたくないんだけど、罠を張りまくって少しずつ減らして。最後盗賊の頭も罠に嵌めて何とか勝てたんだよ。動き全然最初見えなくて焦ったもん」


そんな呆れた顔しなくても良いのに。


『それでも、頼もしいですわ。私は、風魔法が少し使えますわ。ゴブリン程度なら倒せるはずですわ』


「はず?」


『先生にはゴブリン程度なら倒せると言われたけれど実戦はまだなのよ』


そう言えば最初は普通スライムがゴブリンなはずなのに盗賊って、難易度高いよ女神様。


「じゃあ、街へ行く間に少しずつ魔法試そうか。オーガが出たら僕が時間稼ぐから出来るだけ街の方へ逃げる。って感じで!」


『ええ、わかりましたわ。でも無理はダメですから』



野営地を抜けミンクスの街へと向かう2人。旅は順調で、2日目の夜も木の上でゆっくりと寝られた。


3日目の昼頃、ようやくミンクスの街が見えて来たと思ったがなんだか騒がしいようだ。戦闘中?


「何か様子が変だよ……」


『街壁の上に旗が上がってますわ。魔物に襲われてる時の旗ですわね。商人とか戦えない人が近寄らないように出す旗よ』


「大丈夫かな?」


『ミンクスはそこそこ大きい街だし、ダンジョンがあるから、冒険者も多いわよ。それでダメなら私達が行っても仕方ないわよ』


優秀な冒険者達がいるなら、手を出さない方が良さそうだ。もっとレベル上げないとチートの持ち腐れだ。しかし、これはレベル上げチャンスな気がする。行きたいけど……ミアン置いてけないしな。せめて街に入れれば。


「って、何か押されてない?段々街に魔物が近付いてる気がするけど」


『私にはわからないけど、レティスが言うならそうなのかも。あまりよろしくないわね』


冒険者達がいなければ試したい魔法がある。魔力が増えたが機会がなくて試せてないのだ。今打てば確実に冒険者達まで巻き添えだ。


「魔物が勝ったらどうなるの?」


『街壁に籠る事になるから、すぐにどうこうなる事はないわよ。ただ、街にはいれなくなるわね、後は街壁の上から少しずつ倒して援軍待ちってとこかしら』


「あっ、撤退してくみたい。何か黒い魔物が沢山いるよ」


煙が晴れようやく、魔物がはっきり見えるようになった。


『黒い色の魔物なんて、私の知識にはないわね』


どう見ても黒いよな。漆黒と言っても良いくらいに黒い。冒険者は撤退して街壁の上から騎士らしき人達と冒険者が弓や魔法で攻撃している。魔物達は硬い門を破れないようだ。


「暫く木の上で野営かな。宿屋でゆっくりと思ってたけど」


『木の上……仕方ないですわね』


野営地での出来事から少しずつ木の上の便利さをミアンも感じてくれてるようだ。


木の上に登り様子を見る事にした僕達。暫くするととても大きな音が響いた。ーーやがて、悲鳴や、叫び声が聞こえ始める。


「街門が、破壊されてる」


『うそ、ですわよね』


「ほんとだよ、ミアンは危ないからここで待ってて。僕は様子を見てくるから」


『だ、ダメですわ。門を破壊するなんて普通じゃないですもの。行ったら危ないですわ』


分かってるけど、経験値を得るチャンスなんだよね。ミアンの心配とは裏腹にボーナスステージのように考えてるレティス。


「危ない事はしない、すぐ戻るから」


僕は木から降り、街へと走る。街壁を見ると人がいなくなっている。中に入られては上から攻撃する利点もないか。僕的にはチャンスだ。僕は魔物の群れに向けて魔法を放つ。


「インフェルノ」


火魔法の上級魔法の一つだ。今の僕では3発が限界の大技だ。


炎の海、一言で言うとそんな光景。炎に包まれた範囲の魔物ら燃え尽き死滅する。


外の魔物を一気に減らした僕は門へと入る。そこは乱戦とかし、悪夢のような光景が広がっていた。剣を抜き、苦戦している人を助けていく。やがて、大きな広場のような所へと出た。そこでは、4mはありそうな大きな牙の生えた黒い化け物と戦ってる人達がいた。あれは、記憶にある漫画などでよく知るオーガに似ている。


黒オーガの拳を剣で逸らし、耐性が崩れた所で、斬る。かなりの腕前なのが分かる。しかし、威力と踏み込みが足りていない、かすり傷程度にしか効いてないように見える。


もう一人は魔法使い。オーガの攻撃を上手くずらし剣士の女性がより有利に戦えるように魔法を使っている。そして神官服の女性が、回復とバリアを繰り返し剣士の女性を支えている。


あの細い腕では、逸らしててもかなりのダメージが蓄積されそうだ。僕のが細いから、能力に腕の細さは関係ないのだけど。



ーー黒オーガは笑っている。


そんな気がした。次の瞬間黒オーガの体から黒いモヤが出始める。そして先程と変わらない早さのパンチ。剣士の女性が逸らそうとするが、パキンッと甲高い音をして剣が折れる。そして脚で蹴られ吹き飛ばされる。


吹き飛ばした方向にいたのは魔法使い。魔力切か、避ける事も出来ず一緒に吹き飛ばされる。


「これはまずそうだ……」


勝てるか勝てないかではない。先程倒した多くの魔物。レベルが上がった強さを試したい。そう思ったレティス。火炎魔法の下級魔法である、フレアアローは、火魔法の上級魔法の倍以上の魔力が必要な魔法。連発は出来ない、が。当たれば威力は十分。


神官さんには悪いけど……。これが最適。

僕は彼女へと近づくオーガの隙を狙う。狙うは彼女に狙いを定め動いた瞬間。どちらが速いか勝負だ。


オーガの迫力に、腰が抜けた神官の女性。オーガはニヤリと笑い、拳を構える。そして振り下ろそうとした瞬間。


ーーフレアアロー。


マグマが圧縮された矢。僕の感想はそんな感じだ。マグマアローでも良かったんだけど、フレアアローが正式名称見たいなのでそのまま使う事にした。


僕の放った矢はオーガの顔を捉え、消し炭に変える。溶けた、いや、消えた?と言う方が正しい表現かも知れない。一瞬でオーガの顔が消

えたのだ。勿論……死んでいる。


僕は家を壊した事に後ろめたさを感じその場を去る。


ミアンのいる木へと戻る最中。


形勢逆転って感じかな。リーダーがいなくなった影響からか、魔物がかなり弱まっているように見える。漆黒だった体の色が今では灰色だ。


「これなら大丈夫そうだ」


僕は、門を出て木へと登る。


『遅い。心配したわよ!』


「ごめん、街の中心まで見にいってたら遅くなった。でももう大丈夫そう、冒険者達が押してたから」


『そ、そう。なら良かったわ』



◆ーーー


その頃神界では、イデア様の罰を終えたエアリルがレティスを見ていた。丁度黒オーガをレティスが葬る少し前からだ。


『何で!え?なんで、逃げるのよー!!街を救った英雄になれるじゃない!!』


女神の試験の成績に繋がるチャンスをあっさり捨てたレティス。


エアリルは意味がわからないと言った感じで、文句を叫ぶ。勿論レティスに聞こえないのだが。


『まさか、私の試験の事忘れてる?なんて事ないわよね……』


◆ーーー


門へと入れるようになったのは次の日の昼頃だった。かなり被害があったはずだが早いものだ。


「かなり建物とかも壊れてたけど、もう入れるんだね」


『メインの通りを修復しただけだと思うわよ。商人や、外から来る人をずっと待たす訳にもいかないでしょ。物も売り切りが多いから、今日は大安売りをしてるはずよ。商人達の中でも、アイテム袋持ちの商人は買い漁って隣の街にでも売るのではないかしら。街の人からすると腐るだけのものが売れるのはとても有り難いのよ、これから復旧とはいえ、全ては保証されないから』


へえ、転売ってやつか。僕の収納なら結構入るし長持ちするから買っておくのもありだ。盗賊から頂いたお金だし、街の人の役に立つなら尚良い。そう言えば一体いくらあるのだろうか?金額数えなくても分かれば良いんだけどな、と思い収納袋の中のお金をイメージすると。


◆白金貨22枚

◆金貨758枚

◆銀貨220枚

◆銅貨60枚


と表示された。価値があまり分からない。


「ミアン、お金に付いて教えて欲しいんだけど。銀貨と金貨と白金貨どう違うの?」


銀貨までは、僕がまだ隔離される前使った事がある。りんごは大体100銅貨、銀貨1枚程だった。


『それは知らなさ過ぎよ。どうやって生きてきたのよ』


「違うよ、銀貨までしか使った事がないだけだよ」


『分かりましたわ、わかる範囲で説明しますわ』


銅貨100枚→銀貨1枚

銀貨100枚→金貨1枚

金貨100枚→白金貨1枚

白金貨100枚→王白金貨1枚


という事は。


銅貨1枚→1円

銀貨1枚→100円

金貨1枚→1万円

白金貨1枚→100万円

王白金貨1枚→1億円


こんな感じかな。


僕の所持金は、大体3000万程のようだ。


「月にどれくらいお金って使うの?」


『先生に聞いた範囲しか知らないですけど、庶民の月の生活費は大体金貨10枚程と聞いてますわ』


大体10万円か。3000万あれば300ヶ月生活出来る計算になる。庶民という言葉が差す範囲がわからないけどね。


「ありがとう、それじゃあ行こうか」


『ええ、ちなみに私は無一文よ!だから、その……』


ドヤ顔で言ったかと思えば、モジモジと言いづらそうだ。


「大丈夫だよ、僕が面倒見るからさ」


『あ、ありがとう。いつか返しますわ』


「いいよ、別に。僕が責任を取るんでしょ?なら同じさ」


真っ赤な顔してモジモジしている。貴族のお嬢様はこういう耐性ないのはお約束?


『はぃ……』


可愛い、素直にそう思ってしまった。



街の門へと到着すると、街に入れず集まって安全な場所で待機していた、商人達で列をなしていた。


「一番近くに待機してたのに出遅れたね」


『ええ、商人達も必死ですもの。特に食糧を運ぶ商人は腐っては大損害。それに、安売りされてるこの状態では損は確定なので荷を早めに軽くして次の街へと向かう方も多いはず。急ぐのも無理ないですわね』


なるほどなー、我先にと並ぶ訳だ。


『嬢ちゃん、詳しいやないか。わいも食糧運んどるが出遅れ組や、全く災難やったわ』


『その割には余裕そうですわね』


「全然急いでは見えないね」


『まあ、わいは、趣味で商売しとるだけやからな。損も商売の醍醐味って訳や。儲かってばかりじゃつまらんやろ?』


商売人は、儲かってばかりの方が有難いのでは?と思うが趣味ならそういうものなのだろうか。見た感じは普通の気の良さそうなお兄さんって感じだが。


『そんな商人聞いた事ないですわ。儲けてこそ商売人でしょう?』


「趣味だと違うんじゃない?」


『そや、趣味なら色んな体験が刺激になるんや』


『変な方ですの』


『その方が覚えて貰えるやろ?わいは、アニマリン商会のノジカってもんや。もう忘れへんやろ?あんさんらも自己紹介頼むわ』


「僕は、レティス旅人です」


『何答えてるのよ、レティス。私達見たいな子供に話しかけてくるなんて如何にも怪しいじゃない』


『怪しいなんて酷いわー。お兄さん泣いちゃうで?』


『じゃあ、目的は何よ』


『商売人の感や。如何にも貴族のお嬢様らしき口調の少女と古着を着ているが立派な剣を持つ少年。これは、何か楽しそうな予感がするって思ってな』


『なっ』


僕達は警戒心を高める。


『そんな警戒せんでも大丈夫や。それにそんな簡単に認めるような返事しちゃダメやで。正解と認めてるようなもんや。これは先輩からのアドバイスみたいなもんやな。隠すならもう少し、格好とか口調を気にしんと、バレる人にはすぐバレる』


如何にもお嬢様な服装のミアンと、古着で綺麗とは言い難い僕の姿に似つかわしくない綺麗な剣。ミアンの口調はともかく怪しいな。意外と良い人か?


『それで、要求は何よ』


『警戒いらんていうてるんやけどなあ。まあ、アニマリン商会をご贔屓に。ってとこで落とし所にしようやないか。わいの名前出せば安くして貰えるで』


『アニマリン商会なんて聞いた事ないわよ』


『まあ、縁があればって事で、わいは先に行かせて貰うで』


「あっ」『あっ』


僕達にそう言い残して、順番を抜かして門を抜けて行ってしまった。最後までよくわからない人。


「良い人なのか悪い人なのかわかんないね」


『悪い人に決まってるわよ、順番抜かしたのよ』


ミアンは苦手そうだ。


『次』


僕達の番だ。


「はい、旅人2人です」


『身分証を』


「冒険者になりたくて、田舎から出てきたので持ってないです」


『そうか、なら2人で銀貨5枚だ。早めに作るんだぞ』


「はい、ありがとうございます」


特に何も言われずに入る事が出来たようだ。

じっくり見られた時は少し焦ったが、子供だし問題ないと思われたのだろう。


『街来るまでに凄く疲れた気分だわ』


「まあ、今日は木の上ではないから、少しゆっくり出来るよ。まずは宿探しだ」



◆ーーーーー


『何だと?ミアンが盗賊に……。これでは儂の計画が進まんじゃないか!本当に役立たずめ。死ぬなら死ぬで嫁いでからすればいいものの』


『貴方どうするの?これでは、アルファム領を乗っとるなんて出来ないじゃない。多くの食糧を保有するアルファム領なしでは、厳しくてよ』


『分かっておる。すぐにあの方に連絡して対策を練るからお前は心配無用だ。それより少しでも多くの食糧を集め続けるのだ』


『ええ、貴方の進む道が私の望み。失礼しますわ』





◆本日もお読み頂きありがとうございます!

評価応援よろしくお願いします。


次回も是非お読みください。

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