第1話 封印されし……いえ、ただのガチャの景品でした。
◆新規連載小説となります。少しずつ更新していきたいと思います。暖かい目での応援よろしくお願いします。
ーーガラガラガラ、と懐かしい音が聞こえた。
意識が戻り辺りを見回す。透明のカプセルのような物が沢山見える。そして何故だろうか、自分もその中にいるようだ。
ーーガラガラガラと再び音が聞こえる。
「うわっ、えっ、動いてる?わあ、落ちるってえええっ!」
体の重さが急に失われた。頭の中ではハテナマークが大量に出ていた。
「ぎゃあー、早い、早い、もう、無理ダメ」
絶叫系の乗り物は苦手だ。高速のスライダー、しかも、動きはめちゃくちゃだ。周りにあるカプセルにぶつかりながら左右に揺らされ突然スピードを上げ落ちていく。何度目のガラガラ音を聞いただろうか。僕の意識はもう、途切れ途切れだ。
ポンっと跳ねた。そう跳ねたのだ。すると、目の前には大きな人が、そして飛び跳ねた僕の入るカプセル掴み手に取る。
『はぁ、全くこのガチャ、出てくるまでが長過ぎるのよ、なんで20回も回さないと出ないのよ!詰め込み過ぎよ、全く』
何故か凄く怒ってるいるようだ。
『さてと、開けるわよ』
パキッと嫌な音が響く。大きな手に掴まれたカプセルに影が出来た、そう思った瞬間嫌な音と共にヒビが入る。
「えっ?ちょ、ちょっと開け方違う!って」
何を言っても聞こえていないのだが半ばパニックだ。カプセルにいた事についてもそうだが、まさか、自分が入ってるカプセルを握りつぶして開けようとするとは思っても見なかった。しかも、この手の大きさだ、間違えればミンチである。
『さーて、開いたわね。どれどれ……』
・・・目が合う。大きな美女が目を見開き口をパクパクしている。人に見えるが人間味はない。描かれたような整った顔をしている女性だ。薄紫色の髪は風でも当ててるかのように靡いている。
「こんにちは?……と言うかカプセルの開け方おかしいでしょ!危うく死ぬ所だったよ!」
・・・
「おーい。聞こえてないの?」
『聞こえてるわよ!と言うか、なんでガチャに人間が入ってるのよ。こんなのあり得ないわ』
どうやら本当にガチャの景品になっていたようだ。一体何故?そう思うが何も思い出せない。日本人、そして大学生だった。地球の知識も深くはないが一般の大学生の人生経験程度にはある。だが、名前すら出てこない。勿論両親の名前もだ。
「えーと、聞きたいのはこっちなんですけど。気付いたらカプセルに入れられ、急に動き出したと思ったら、カプセルを潰されかけるとかどんなドッキリ!?と言うかお姉さん大きすぎない?」
『よく喋る人間ね。と言うか輪廻を司るこの空間に居て良く平気ね。魂以外は存在出来ないはずなのだけれど』
輪廻?と言う事は……。
「僕は……『いえ、そんな悲しそうな顔をして貰って悪いけど生きてるわよ?理由は分からないわ。と言うか気持ち悪いわね、不気味よ』」
シリアスな感じになった方が良いと思ったのだが、生きてるようだ。
「それで僕はどうしたら?」
『知らないわよ、こんなの初めてだし、このガチャは魂と次の輪廻先を組み合わせるだけのものだもの。生きてる人間を輪廻に乗せたらどうなるかなんて分からないわよ』
ガチャで、次の輪廻が決まっていたのか……。何とも残念な事を知ってしまった。
『何よ、その残念な目は。言っとくけどね、このガチャは、不正が出来ないように取り入れられたのよ?気に入った者に対して肩入れしちゃう不正者が多くいたのが発覚したのよ』
死後の世界も大変そうだ。裏口入学的な感じかな?不正に入学先を決めれないようにガチャで入学先決めてるみたいな。うん、しっくりきた。
「それは、大変ですね。えーっと何と呼べば?」
『分かってくれるのね、私は下級女神のエアリルよ、人間にしては利口ね。私のペットにしてあげても良いわよ?小さいし余ったカプセルで飼えばいいわよね』
なんて事を言うんだこの女神は……。ペットだと?……だが、大きいが絶世こ美女だ、一緒に生活が出来ると思えばありなのか?そう思っていた時にある言葉が浮かぶ。
ーー美人は3日で飽きるーー
これだけの美女だ、1日で飽きるかも知れない。
『さて、貴方を飼う為のカプセルを取るわよ』
ガラガラガラ、ポンっ、と出てきたカプセルを開ける。パキッとヒビが入る音がする。
『難しいわね……少しくらい割れてても良いわよね?』
「す、すみません、ペットはお断りします」
え?って顔してるけど普通は断るよね?うーん、一概には言えないか。そう言うのが好きな人がいると知識にあるからな。だが、僕は違う!純粋な童貞大学生だった、はずだ。
『めんどくさいわね……ペットじゃダメなら上司に相談するしかないじゃない。はぁ、私は悪くない。うん、大丈夫、怒られる訳ないわ』
ブツブツと何か言いながら突然消えてしまった。流石死後の世界、何でもありだ。それにしてもこの部屋何もない。真っ白の空間の真ん中に大きなガチャがあるだけだ。眺めてみるととんでもない数のカプセルが入ってるだろう事がわかる。よくあの中から選ばれて出て来れたものだ。
暫くして戻ってきたエアリル様、いやエアリルでいいか。人をペットにしようとするような女神だしな。
『イデア様、これです……』
指でちょんちょん付いてくるエアリル。
「ちょんちょんやめてよ!しかもその汚い物触るかのような動き」
『まあ、本当に人間ね』
優しそうな表情のお姉さんだ。エアリルが20歳くらいとしたら30歳くらいの見た目だ。美女なのだが、母親のような優しい笑みを浮かべている。
「貴女は?」
『私は上級女神のイデア。この子の教育係りみたいなものかしらね』
「大変ですね」
『ええ、本当に』
『ちょっと2人して何和んでるのよ!と言うか悪口?なんでイデア様には、礼儀正しいのよ、私も女神なのに……態度が違いすぎるわ』
「エアリルは、何というか女神感が顔だけ」
『しかも、呼び捨て!?何、私ってそんな残念……なんですか?イデア様』
『私はそこまで言ってないわよ?貴女もそのうち女神として認められるでしょう』
『イデア様まで……。良いわよ、どんどんガチャ回して、出世してやるんだから!』
「イデア様、僕はどうなるのでしょうか?」
『そうね、私の考えとしては貴方には申し訳ないのだけど、エアリルの下級神としての試験の題材となって欲しいと思ってるわ』
「試験ですか?」
『ええ、エアリルは下級神、100年毎に成果を見せないと下級神から落ちてしまうのよ。でも……あんな感じでしょ?このままだと落ちてしまうと思うのよ。教育係としてはきちんとした女神になって欲しいの』
『私落ちるの!?そんな風に思われてたの!?』
あたふたして残念感凄い。先程までは言いたくないが美女だと思ってたし、女神と言われて実は納得はしていたのだ。
「僕は何をすれば良いのですか?」
『別の世界での輪廻に入って貰い、その世界で目に見えた活躍をして欲しいの。色々な世界があるけど、魔神が世界を破壊しようとして滅びかけた世界を救う。とかしてくれたらエアリルは昇進ね。でも、そんな無茶は言わないわよ』
凄いメリット提示されても、流石にそれは受けたくない。戦闘狂な頭の持ち主なら別だろうがね。
「では、どんな世界に……」
『今は魔王も、魔神もいない世界。そのうち危機があるかも知れない。そんな世界へ行って欲しいの』
「平和って事ですか?」
『貴方の平和の解釈はわからない。凶悪な魔物はいるし、人族は争い、魔族との仲も最悪。どうかしら?』
戦争、それに魔族か……。とてもファンタジーで興味はあるが平和とは言えなさそうだ。でもそれは平和な日本でも同じだ。少し離れた外国では争いは当たり前にあった。身近ではないが理解できる範囲だ。となると、後はそれをする僕のメリット。
『ええ、分かってるわよ。貴方へのメリットよね』
顔に出ていたのだろうか、言う前に言われてしまった。
「はい」
『私がお願いしたのに申し訳ないけど、エアリルの試験だから、私から貴方に何かしてあげる事は殆ど出来ないの。転生先をなるべく良くしてあげるくらいね。ただ、下級とは言えエアリルは女神。その世界で貴方が生きやすいようにする為の手助けくらいは出来るから期待しても良いわよ。何か希望はある?』
「最強にして!とかは無茶ですよね?」
『そうね、エアリルの力では消滅する程に力を使っても難しいわね』
消滅と聞いてまたもや、あたふたしている。うーん、あんまり力がないなら少し楽になる程度の期待しか出来ないか。
「明確な力を具現化する程、女神パワーのようなものがいるって事です?」
『その通りよ。力が明確な程、神としての力を使うわね』
という事は……。うん、行けるかもしれない。
「では、ガチャのようにランダムにすればコスト的には低くなると言うことであってますか?」
『ええ、でもそれをした場合、後悔しても選び直せないのでおすすめはしませんね』
この大量のガチャの中から選ばれた稀な存在である僕。きっと良いものが当たるはずだ。ただ、一度きりのガチャはつまらない。ーーせめて。
「一年に一度ランダムで何か才能的なのを貰うとかはどうでしょうか?」
これですごく下らない才能しか貰えないなら5年、10年、人生一度きりにかけるのもやむなしだ。
『それくらいならエアリルでも問題ないわね。一年に一度スキルが得られるガチャ。エアリル聞いてたわね?』
『は、はい。イデア様。じゃあ、行くわよ私の試験の為に頑張りなさいよ!』
ーーエアリルが神々しく光ったと思った途端に何かが体に入ってくる。これで1年に一度引けるのかな?と言うか……1年っていつから?365日?聞くの忘れてた!!
『出来たわ。イデア様お願いします』
『はい、では貴方を転生させます。貴方の今後に幸あれ』
ちょっとま、はぁぁ。なんだこの癒される温かい光は。まさに女神様……。僕は聞く事を完全に忘れイデア様をいつまでも見つめていた。
『なんで、私に視線すら合わさないのよ!!』
とか完全に聞こえていたがせっかく記憶に残すならやはりイデア様だろう。
こうして僕は知らない世界に転生した。
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