怖い話
家というと、落ち着く場所だったり、何となく特定の部屋の前を急いで通ったり、家族団欒を楽しんだり、ただ帰って寝て起きて家を出るっていう人もいると思います。
特定の恐怖というと、夜寝る時に視線を感じるとか、枕元に誰か立っていそう、ドアやカーテンや家具の隙間が怖い、暗闇を見つめて居ると誰かがこっちを見てそう、布団から足を出してたら捕まれそうとか思う人も居るのでは無いでしょうか。
これはそんな妄想が創り出した幻なのか、実際に起きた出来事なのか、私には判断できません。
ただ今から読んで頂くのは私が実際に体験した出来事です。
それが偶像であったのか。ただ恐怖心からの妄想か。では恐怖心が無かったのに見たあれは何なのか。
皆さんはそんな不思議な体験をした事がありますか?
これは私が体験した話です。
小学校の年長さんくらいのある夏のことです。
その夜、リビングで家族全員でテレビを観ていました。
「眠たいから寝るわ」
2つ上の兄が言って階段で3階にある私と兄の二段ベッドを置いている寝室へと行きました。
…しばらくすると。
「玲奈ちょっと来てー!」
「嫌やー!」
私はテレビに夢中だったのですぐに断りました。
「来てー!」
「なんでー?」
「いいから、来てー!」
なんて事を繰り返していると母に「いいから行ってき」と言われたので渋々、寝室へと向かいました。
階段を登っていると部屋が明るくなっていました。
寝るって言うてたのになんで電気点いてるんやろ、なんて考えながら階段を一段ずつ登っていました。
「何ー?」
「あそこの窓見て」
縦40cm、横20cmくらいの大きさの型番ガラスという、ガラスの片側の表面に凹凸のある窓を指差していました。
その窓を見てみると真ん中に丸い影のようなものが、はっきりとそこにありました。
その影をよく見ると、紐のようなもので球を吊り下げている様にも見えました。
でも、今は夜。いくら住宅街といってもその窓から近隣の家の灯りは見えません。
それなのに、明るい部屋ではっきりとそれが見えたのです。
「最初は暗くした時見えててん!けどな!どんどん明るくしても見えるねん!」
兄は興奮した様に話してきました。
「前に行ってみよか?」
私は怖いのに、何故かそんな事を言ってしまいました。
「行ってみて」
怖い、でも何か気になる。そんな気持ちだったと思います。
一歩、一歩ゆっくりと窓に近づいて行きました。
部屋の入口から窓まで近いずなのに、何処か遠く感じました。
ゆっくり近くに行くつれ、影がどんどん薄くなっていました。
二段ベッドと窓の中間より前あたりで一度止まり兄の方を振り返りました。
「なんもないで」
「落ちた!」
私はもう一度その窓を見ました。
けれど、やっぱりそこには何も見えませんでした。
私達は怖くなり、部屋を飛び出し、駆け足で階段を降りました。
急いで来た私達を見て両親はびっくりしていました。
私と兄は今まであった事を全て話しました。
すると「コウモリやろ」「気のせいや」などと言われました。
私と兄はその言葉は信じられませんでした。
興奮して眠気なんてなかったはずなのに、何故か急に眠気が来たので私はそのままあの寝室へ行き眠りにつきました。
兄は怖かったのか、暫く部屋に来ませんでした。
翌日、学校へ行く時にその窓や窓の下、地面を見ても何も落ちてませんでした。
怖くなり、走って学校に向かいました。
それから1.2年後くらいの冬の事です。
あの夏の日の事など忘れて、私と兄はベッドの上でしばらく他愛もない話をしていました。
私が二段ベッドの上で下に兄が寝ていました。
私が座りながら話している時、ふとあの窓を見ました。
すると、そこに横を向いた人影がありました。
「うわっ!」
「えっ!何っ!どうしたんっ⁉︎」
兄の言葉に返すこともできず、私は布団を頭まで被っていました。
(どうしよ。どうしよ。また見てもーた。どうしよ。)
なんて事を考えているといつのまにか兄の声が聞こえなくなっていたので寝たと思いました。
あの影はまだ窓に居るのか気になり寝転んだ状態で窓を見ました。
そこには何もいませんでした。
(よかったー。おらんくなってる。)
と、ホッとしました。
でも、よくよく考えてみるとあの時私は窓を真正面から見ていました。
(でも寝転んだ状態だと正面じゃない。正面からやったから見えたんかも)
怖いはずなのに、見たくないはずなのに、何故その時そう思ったのか分かりませんが、私は正面から窓を見ることにしました。
するとそこには、左右にゆっくりと揺れ動く影がありました。
私は小さな悲鳴をあげて布団に潜りました。
(なんで揺れてんの!なんでおんの!なんで…なんで⁉︎)
怖いけど気になる、そんな興味本位でまた、窓を正面から布団を被ったまま見ました。
(今度は止まってる…。でも最初と地位が違う?手?みたいなん見える…。)
そこには肘直角を曲げて、手のひらを下にした状態で横を向いた影がありました。
怖いはずなのに私は、その影をジッと見つめていました。
すると、手がゆっくりと握られ、ゆっくりと開いてを繰り返し始めました。
私はその動作がまるで「来い」と呼ばれている様な感覚になり、怖くなってまた布団に潜り込みました。
(怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。)
そんな事を思いながら布団で蹲っていると、気が付いたら朝になっていました。
下に降り、朝ごはんを食べていると父に「昨日見えたんは隣の家の人ちゃうか」と、言われました。
でも、あの影ははっきりと見えたし、隣のベランダは窓からは遠いから位置的におかしいのです。
でも何より父が知っていたことの方が疑問に思いました。
あの時、兄にも私と同じものが見えたんでしょうか。
兄はあれを正面から見たのでしょうか。
もし、寝転んだ状態で見えていたのなら、何故私は正面からしか見えなかったのでしょうか。
それからしばらくして私達は中学生になり、兄が受験ということで、今まで勉強机を置いていた子供部屋と、二段ベッドのある寝室どちらかを自分達の部屋にすることになりました。
私は迷わず「寝室がいい」と言いました。
広いからという表向きの理由。
子供部屋はドアから入って正面に大きめの窓があるのですが、その窓と向かい合うように私の机が置いてありました。
いつもドアに背を向けて宿題などしていたのですが、その度に後ろから視線を感じていました。
ドアが開いていても、閉まってしても家に1人の時は必ず誰かに見られている感覚がありました。他にも階段を登った時に子供部屋の方から、視線を感じることもありました。
なので私はその部屋が絶対に嫌でした。
部屋が分かれてしばらく経ったある夏の日。
あの冬から窓にカーテンをつけることになって気にすることもなかったのですが、その日は暑くてカーテンを開けて窓も少しだけ開けていました。
間接照明を点けて、漫画を読んでいる時にふと、その窓を見ました。
そこには、大きな手の影がありました。
窓を開けていたので窓と壁の間に隙間があるのですが、そこを見ると何も無く、影だけがはっきりと見えていました。
その時の私は今までの事で慣れてしまったのか。
(あぁ、またか。もういいよ。早く帰りな。)
何て事を思いながらそのまま寝ました。
それから、あの窓もカーテンも開けることはありません。
けれどたまに、部屋にいるとクローゼットの中で何か落ちた様な「ガタンッ」と音がしたり、壁を殴った様な「ドンッ」という音が聞こえたりします。
でもクローゼットを開けても何も落ちてないし、私の部屋の隣は吹き抜けになっているので、誰かが棒を使って叩いたり、わざわざ部屋の前まで来て壁を叩いて隠れるなんて事も出来ません。
部屋にいる時だけじゃなく、1人でリビングでテレビを観ている時も上から物音が聞こえることもあります。
それは私だけじゃ無く、他の家族にも聞こえるようです。
この家に他の住人が住んでいるのでしょうか。
それとも、誰かが憑いて来てしまったのでしょうか。
それから数年経った今では、大きな物音が聞こえる事は無く、家鳴りの様な「パキッ」という音が稀になるくらいです。
ただ、兄の部屋になったあそこは、階段を上がった時に扉が開いていると視線を度々感じます。
でも家にいる犬が吠える事は無いので、もし居たとしても害はないと思っています。
実際に家で音を聞いた母は「座敷童子がある!」と言っています。
なのでうちでは座敷童が居るということになってます。
座敷童って言われると途端に恐怖心は無くなりますよね。
違う意味で怖くはなりますが…。
でも、実際にあった怪奇現象もラップ音も座敷童かもしれないし、幽霊かもしれない。あるいは、唯の妄想かもしれない。
真実はどっちなんでしょうね。




