3話 深夜の会話 続
――旅立てなかった。
目が完全に冴えてしまった。
うつ伏せになって枕の上に頬杖をつき、再び鏡を開く。
『私』とは声に出さなくても会話が出来るので、こういう時の話し相手に最適だろう。
両隣に兄弟が寝ているのだから。
ちなみに、さっき声を出していたのは唯の気分である。
『どうした。眠れないのか。』
(目が冴えた。)
『そうか。』
(…やっぱりあんたも昔より丸くなったよね?)
『そんな事ないでしょう?私は昔から優しかったと思うけれど。』
(昔は私が眠れない時、無理矢理寝かせてた。)
『ふむ。子供は寝て育つと言うからね。』
(オバケが見えるようになって怖がる私を、ね。)
『うーんと…その頃は確かに悪かったと思っているよ。時間が無くてあまり説明出来なかったからね。』
(本当だよ。あんたに名前をあげた後公園を出て直ぐに交通事故の地縛霊見ちゃって気絶した私を、公園に居た知り合いの母親が介抱してくれたんだから。後でどれだけお母さんに心配された事か…。)
『だから悪かったって。あの時は私も消滅の危機だったから詳しくは話していられなかったのさ。』
(まあ確かに、私も鏡を持ち歩いてなかったからあんたといつもは話せなかったからね。)
『鏡を買って貰う切っ掛けになったヤツ、大変だったものね。』
(ああ…。あの事件はトラウマだね。確かアレは私が小学一年生の夏休みの事件だったよね――)
まだまだ続く美玲と美玖の内緒話。
次回、夏休みに何が…?
ちなみに、両隣の兄弟達は爆睡中なのです。