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〜天国と地獄〜

 あの後、クラスメイトから嫌というほど責められ、帰るのがすっかり遅くなってしまった。


 僕が日が暮れた後に帰るなんていつぶりだろう……いやもしかしたら初めてなんじゃないか?


「……あー、疲れたぁ。」


 僕は家に着いてすぐさま自分の部屋に直行し、息絶えるかのようにベットに倒れこんだ。

 そして一度、大きなため息をついた後に、今日の彼女とのやり取りを思い出した。


「白花さんがせっかく好きって言ってくれたのに、その返事が結婚を前提にって……あれ俺、絶対嫌われたよなぁ」


 哀しくも、クラスメイトから責められた時に初めて今回の一部始終を整理でき、自分がどんな事を彼女に言ったのか理解したのだ。

 全てを理解した時の全身の血は凍りつき、呼吸すらまともにできないあの感覚は言葉では言い表せない。

 僕はあの一言で、高校生活と人生最大のチャンスを棒に振ったのだと思うと、全ての事に対しどうでもよくなってしまった。


 その日は何もする気が起きず、お風呂もご飯も食べずに、そのまま就寝した。


 次の日の朝、いつもの僕ならば登校する1時間前には起き遅刻などしないのだが、今日はどうしても学校に行きたくないという気持ちが勝り、起きる事ができず生まれて初めてズル休みというものをしてしまった。

 親は何か僕から感じ取ってくれたらしく、何も言わずにそのまま学校を休ませてくれた。


 その日の夕方頃、我が家に誰か訪ねてきたらしく玄関で母親と誰かが話してるのが、途切れ途切れながら聞こえてきた。

 僕は、ご近所さんと盛り上がってるのかと思い、もう一眠りしようと布団を自身に被せ目を閉じた。

 少し静かになったなと思ったら母親が二階の僕の部屋に上がって来て


「智、クラスメイトの白花さんがお見舞いに来てくれたわよ」


 一瞬、自身の身体が硬直したのがわかった。


 どうやら、学校を休んだ僕に書類を届けるよう、学級委員長である彼女が先生に頼まれたみたいだ。


 僕は正直あんな事を言ってしまった後に、彼女に会う勇気はなく、体調が悪いから申し訳ないが帰って欲しいと伝えてくれと親に頼んだが、どうやら向こうがどうしても僕と会いたいと言ってるらしく、僕も覚悟を決め彼女が待つ玄関に向かった。


 これで僕と彼女が2人きりになるのは二度目だ。


 本来、誰もが羨むはずのこの状況だが、僕は嬉しさよりも何を言われるのか不安で、彼女の顔を見ることができずお腹あたりをずっと見ていた。


 あまりにも彼女が喋り出さないので、ちらっと彼女の顔を見てみたら、なんと目の前には口は小刻みに震え、顔は真っ赤に熟れたリンゴのようになっている彼女がいた。

 昨日の一件から思ったが、なぜだろうか僕と2人きりでいる時の彼女は、普段の彼女からは想像できないぐらい活発さがない。しかし


(かわいい……)


 不思議な事にどんな彼女を見ても癒され、心が軽くなる。

 どうやらやはり天使は実在するらしい。こんなに可愛い天使のような彼女を、ヒロインにした小説なんて面白そうだな……


 とまぁ、そんなことを考えていたら彼女が何かを決めたみたいに小さくコクっと頷き、話し始めた。


「昨日はごめんなさい、私が誘ったのに先に帰ってしまって……あの……智くんが言ってくれた事、すごく嬉しかったです! 正直あんなこと言ってくれると思わなくて恥ずかしくなっちゃって……」


 僕の脳内はフリーズした。


当然だ、僕は彼女から怒られる覚悟をしていたのに、怒られるどころか逆に嬉しかったと言われてしまったのだから。


 頭が混乱している僕を、彼女は構うことなく続け


「それで、空いてたらでいいんですけど……友達として……友達として明日体調が良くなってたら一緒にお出掛けしませんか? 」


と彼女は恐る恐る僕の顔を覗き込むように聞いてきた。


僕は知っている。彼女は他人を思いやれるとても優しい子だと言うことを……


気を使ってくれてるのか、本心で言ってくれてるのか正直今の僕にはわからなかったが、どちらにしろ嬉しかった。本当だ。

昨日まで音も光もない、まるで深海の中を彷徨っていた僕の心が、一瞬で大空へ舞ったそんな気がした。


 そして、僕は彼女が好きだと思う自分自身の気持ちを素直に受け入れ、彼女と出掛けることを承諾した。


 

  続く

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