回顧 sideフランソワ 2
俺は不思議だった。
何故、彼女がこんなにも不遇な立場に追いやられているのかが。
この国以外なら、彼女は大切に育てられ、守られ、愛されるはずだから。
何故なら彼女は、精霊の乙女なのだから。
俺がそれに気付いたのは、毎日の日課である魔力を注入をしていた時。
初めて彼女に話しかけて、彼女に俺という人間が認知された日、日課である魔石への魔力が何時もより多く注入されたからだ。
俺は父上に彼女の事を話し、我が国に連れてこれないか相談した。
結果はあまり良いものではなかった。
精霊の乙女であるならば、余計に慎重にならざるを得ないと……。
しかし俺は諦めず、何度も彼女の現状等を相談した。
そしてやっと条件付きでOKが出た。
その条件は、彼女が自分から我が国に行きたいと言うこと。
俺は彼女に「辛かったら家を出て、俺のところに来ないか」みたいな感じだったと思う。
兎に角彼女を連れ出したくて、色々言ったような気がする。
そしてあの日、彼女は婚約破棄された。
それも学校の中庭で。
誰かに見られるかわからない中庭で、女を連れてあの男は婚約破棄をしたのだ。
それでも彼女は取り乱す事なく、明日まで報告するのは待って欲しいと言ったそうだ。
あの男は了解したはずなのに、下校時間迄には殆どの生徒が婚約破棄を知っていた。
俺は腸が煮えくり返ったね。
苛立ちからあまり寝付けなかった俺は、早朝から図書室へと向かった。
本でも読んで落ち着きたかったのと、もしかしたら彼女が来るかも……と言う淡い期待からだった。
そして彼女が来て、俺のところに行きたいと告げられ、心の中でガッツポーズしたよ。
しかしそれだけ告げると、彼女が崩れ落ちるように倒れた。
慌てて駆け寄ると、熱があった。
俺が借りている家に連れていこうと彼女を抱き上げた時、後頭部がヌルリとした。
何だろうと手を見ると、赤く濡れていた。
なんて事だ!
頭を触ると大きなこぶもあったから転んだのだろうか……。
考えたくはないが、まさか……!
転移陣に使う魔石は、彼女のお陰で余裕がある。
俺は急いで実家の離れに連れて行った。
叔父が医者をしているので診てもらった。
頭の傷は、机等の角にぶつけたのではないかとの事だった。
倒れた事で、脳震盪の心配もされた。
目が覚めるまで、彼女の側に付いていたかったのに、俺の不在が向こうの国にばれては不味いと、普段通りの生活をするようにと言われ、泣く泣く彼女の側を離れた。
まさか4日もの間、彼女が眠り続けるとは思わなかった。
目が覚めたと連絡が来て、慌てて彼女下に言って更に驚かされた。
彼女は記憶を失っていたのだ。