第6話 工房
姉ちゃんと再会を果たした翌日の朝、アレルを工房長にするという話となり、俺は早速その日の夜、仕事を終えた俺はアレルのもとを訪れていた。
「よう、アレル、調子はどうだ」
「おう、ユキか、まぁ、何とかやってるって状況だな」
「そうか、まぁ、製紙技術を中途半端で渡した俺が言うのもなんだが、無理はするなよ」
「ああ」
「それなんだが、実は、お前にまずこれを見せたくてな」
俺は姉ちゃんからもらった半紙とコピー用紙をアレルに渡した。
「こ、これは!!」
アレルは俺が渡した紙を奪うようにとるとじっと見つめたり、感触を確かめたりしていた。
「お、おい、ユキ、これはなんだ?」
「ああ、これは、俺の国の紙だ、そうだな、お前には話しておくか……」
俺はその後アレルに俺がこの世界の人間ではないことや俺の世界のことを話した。もちろんアレルは最初まったく信じなかった。しかし、さすがに製紙技術や俺のスマホ、またソフィアが信じていることを話すと信じたようだった。
「……し、しかし、信じられん、違う世界が存在するなんてな」
「それについては俺も同感だ、俺もこの世界に来るまでそうだったからな」
「そうか、まぁ、そうだよな……それで、お前の世界っていうのは魔法がなくて科学っていうのが発展しているんだろ」
「ああ、まぁな、でも、科学は種類が多いし、実は俺もよくわからないんだ。まぁ、そこんところは姉ちゃんに頼るしかないんだがな」
「姉ちゃん?」
「ん、ああ、実は、俺には姉ちゃんがいるんだけどな、その姉ちゃんと姫様の部屋でつながっていて会うことができるんだ。その紙も姫様の部屋で姉ちゃんから受け取ったものだ」
「どういうことだ」
アレルは不審そうに俺を見てきた。
「前に白い靄についてお前に聞いたことがあるだろ」
「あ、ああ、そんなこともあったな」
「その白い靄っていうのは、俺の世界とつながっているものなんだ。俺が通ってきたのもその白い靄だからな、それが昨日突然姫様の部屋に出現した。っで、よく見てみると向こう側に姉ちゃんがいたってわけだ。本来ならすぐに白い靄も消えてしまうんだけど、姉ちゃんがそのとき筒を突き入れたから、それからつながりぱなしになっているんだ」
「……へぇ、なるほどな、それでこの紙ってわけか」
「ああ、そういうことだ。それで、今後は姉ちゃんを通せば俺の世界の技術を仕入れることができるようになった。それに、印刷っていう技術も仕入れている。これと、紙を組み合わせることでより一層よくなる」
「インサツ、それはどういうものだ」
俺はアレルに印刷について話をした。アレルはそれを聞いて次第に興奮しながら聞いていた。
「ほ、本当にそんなことができるのか、いや、できるな、それがあれば本を作ることができるじゃないか、それもかなり安く、そうすれば今まで王侯貴族しか読むことができなかった本を平民でも買うことができるようになる」
「ああ、そうだな、といっても、まず、文字が読めなければ売れないけどな」
「た、確かにそうだな、だが、平民の中には読めるものも少ないがいる、そういう者たちがほかのものに教えれば……い、いける、いけるぞユキ」
「ああ、そうだな、でもよ、アレル、今のお前じゃ、この印刷はできないだろ」
俺の一言にアレルが我に返っていった。
「た、確かに、今紙のことで手一杯だからな」
「ああ、そこで、実は、これからが本題なんだが、姫様が新たな工房を作ることになってな。そこで、この技術をはじめ多くの技術の開発研究をすることなった」
「まぁ、そうだろうな、これで俺もお払い箱ってわけか」
アレルは少しあきらめたように、悲しそうに言った。
「何言ってるんだ、お前がそこの工房長になるんだよ」
「……はっ、はぁ」
さすがのアレルも驚愕を隠せていなかった。
「も、もう一度行ってくれ」
「なんだ、聞いていなかったのか、今度姫様が作る新しい工房の工房長にお前を指名したんだ」
「……」
アレルは茫然としていた。
「な、なんでだ、なんで、俺なんかが」
アレルは動揺を隠せないでいた。
「工房で作られるのは俺が向こうから持ってきた技術だ。だから工房長には俺の事情を知っているやつしか任せられない。そこらのやつではそれは無理だろ」
「あ、ああ、確かに、そうだな、俺もいまだに信じられんぐらいだからな」
「ああ、といってもそれだけじゃねぇ、お前、製紙技術で俺の中途半端な記憶から製品になるまでに作り上げただろ、姫様はそれについて高く評価してるんだ」
「そ、それで、俺を工房長に」
アレルはソフィアが自分を評価してくれているということでかなり喜んでいた。
「ああ、それにお前、魔法使えるだろ、それも理由の一つだよ」
「……な、なるほどな、わかった、その話、謹んで受けることにするぜ」
「そうか、それじゃ、早速姫様に報告しておくよ」
その後、俺とアレルは夜通し飲み明かした。といっても俺は酒を飲むわけにはいかないからもっぱら水だったが。
次の日俺は寝坊した。俺がソフィアを起こしに来ないことを不審に思った姉ちゃんが俺のスマホを鳴らしたことでようやく目を覚ました。
俺があわててソフィアを起こしに行くと当然姉ちゃんに叱られた。
俺はソフィアに寝坊を謝りつつアレルが工房長を引き受けたことを伝えた。
「本当ですか、アレル殿は、受けていただけたのですね」
「ああ、さすがにかなりびっくりしてたけどな」
「そうですか、それでは、早速話を進めていきましょう」
「そうだな、それで、まず何をすればいいんだ」
「そうですね、工房の設置に関する許可はすでにお父様からいただいておりますから、まずは場所ですね」
「場所か? そうだな、作るのは地球の技術だから、どうしても姉ちゃんの助言なんかが必要になってくる。だから、できれば工房でも姉ちゃんと普通に電話ができればいいと思うしな」
「そうね、あとは無線のLANなんかも使えるとたぶん便利だから、なるべくソフィアの私室のそばがいいんじゃない」
「はい、私もそう考えております。しかし、これは少し難しいことでもあります」
「どういうことだ」
「当然でしょ、工房で働くのは平民、つまり一般人を王女様の私室の近くに行かせるわけにはいかないでしょ」
俺はそれを聞いて納得した。
「なるほど、確かにそれは言えてるな」
「ええ、そうです。それに、もちろんアレル殿の意見を聞いてからですが、私は町から職人を雇いたいと考えています」
「町から?」
「はい、城内の職人にはそれぞれすでに仕事があります。そこで、さらに私の工房で働いていただくわけにはいきませんから」
ソフィアの言い分はもっともだった。
「確かにな。それじゃ、工房の入り口は城壁につけたほうがいいよな」
「ええ、その通りです」
その難問を考えながらあれこれと話し合った結果、工房を細長いものとして工房長をソフィアの私室から近い場所に設置することにした。
こうして場所を決めてしまえば建設は早いものであった。通常、平民なんかが使う施設や家などは、平民の大工が建設するが、王侯貴族が関わる施設は専門の貴族が土魔法を駆使して建設する。そのため、建設がとてつもなく速い、その速度は三日というものだった。しかもその短時間で作った割に、つくりはなんて言うかこう、見事だった。
「す、すげぇな、こんなものをあっという間に作っちまうなんて」
俺は改めて魔法っていうものはすごいと思った。ていうか反則だよな、これ。
そうこうしているうちに次の難題にぶつかっていた。
それは経営だった。工房の経営はソフィアが行うことになっている。そう、つまりはその従者である、俺の仕事だった。といっても俺はただの高校生、商業高校ならともかく、普通科、バイトはしたことあるけど経営なんてできるわけがなかった。
そこで、俺は姉ちゃんに相談した。
「というわけなんだけど、姉ちゃんできない」
「うーん、さすがのお姉ちゃんもこればっかりはねぇ」
「だよなぁ」
俺はもしかしたらと思ったが、さすがの姉ちゃんもできないことがあるようで、なぜか少しほっとしていた。しかし、ほっともしていられない。
「お父さんならわかると思うわよ、何せ、一応経営者なんだから」
「そういえば、そうだった。すっかり忘れてたよ」
「ふふふっ、そんなこというとお父さん泣くわよ」
そう、実は俺の親父は会社を経営している。といっても吹けば飛びそうなほど小さな会社だった。そのため、俺もすっかり親父が経営者だってこと忘れていた。
というわけで俺は早速親父に相談するために電話をした。
「ああ、親父、俺だけど、実はさ……」
俺は親父に工房経営について聞いてみた。
「なるほどな、工房か、まぁ、お姉ちゃんから大体は聞いていたからな、よし、ちょっとお待ってなさい」
そういって親父は電話を切ってしまった。
それから数日が立ち、姉ちゃんを通してこの世界の通貨について尋ねてきたリ、直接電話で細かいことを聞いてきたりしてきた。
そして、さらに数日がたったある日、小さなノートパソコンを渡された。
「なにこれ」
「お父さんが、これをユキにって」
「親父が?」
俺はなんでパソコンを渡してきたのかわからなかった。
「あと、それから、これ、ソーラーでパソコンを充電できるようにって」
「うん、わかった、っで、これで、どうするの」
「えっとね……」
俺はそのあと姉ちゃんにパソコンの使い道を聞いた。
話しによると、どうやら経営をするためには帳簿をつけなければならいようで、その日に購入したものや収入などをこと細かく書かなければならない。
といってもそれを書くのは職人たちであり、それをまとめる工房長のアレルだ。俺のすることは、アレルから受け取ったものを日本語に翻訳しながらパソコンで打ち込むだけらしい。まぁ、それでもかなり大変なことなんだけど。
俺が姉ちゃんとそんなやり取りをしている間、ソフィアはアレルを工房長にするために動いていた。普通に考えれば、アレルがいる工房の工房長に、直接アレルを渡すように言えばいいと思うが、話はそう単純なものではないらしい。ソフィアにはそれをする権限がなくまず、国王に嘆願書を書いて渡す必要があった。そこで、まず国王になぜ平民のアレルなのかと詰問されつつ、もっと他にふさわしいものがいるだろうと進められていた。
実は俺が異世界の住人であることはソフィアとソフィアの騎士たち、そしてアレルしか知らないことであり、当然国王も知らない。だから、余計に説得に時間がかかった。
しかし、ソフィアは貴族たちからある陰口を言われていることもあり、貴族たちが基本苦手だった。だからこそというと、国王もようやく納得して嘆願書を受け入れた。
それからさらに国王が、工房など平民たちを統括する下級貴族で、製紙実験のときに現れた、残念男爵ことベルマン男爵に伝えられた。ベルマン男爵もまたアレルのような見習いではなくもっとふさわしいものがいるといいだしたが、国王のごり押しにより何とかアレルがいる工房の工房長に話が降りたのだった。
そこでもまたほかにいるだろうという話が上がったが、国王の命令とソフィアの指名とあって快くアレルは送り出せれることとなった。
こうしてようやくアレルはソフィアの工房の工房長になることができた。
そして、今日すべての準備が整いようやくソフィアの工房が出来上がった。
工房の名前はソフィアの工房ということでソフィア工房と名付けられた。
「ようやく、始まるな」
「ああ、職人たちも腕利きを街から雇ったからな」
「はい、これからお願いしますね。アレル殿」
「い、いえ、持ったないお言葉です」
ソフィアの激励にアレルが恐縮していた。
「さて、これからだけど、とりあえず最初は製紙をしながら印刷技術の開発に入ってもらいたい」
「ああ、もちろんだ、といっても、まずは職人たちに製紙の技術を叩きこまないとならないがな」
「そうだな、まぁ、そのあたりは任せる」
「おう、任せろ」
それから俺とソフィアは通常の仕事に戻りアレルは最後の準備へと取り掛かっていた。
そして、次の日、本格的にソフィア工房が始まった。まず、最初にソフィアが挨拶をして、アレルが挨拶をした。職人たちはソフィアの言葉に感動して、アレルの言葉に気を引き締めていた。俺はというと、そんな職人たちとそれを見つめるソフィアを眺めていた。
この時、俺はやることがなかったからだ。
こうしてソフィア工房がはじまり、早速新人職人たちを集めて製紙技術を叩きこみ始めていた。俺とソフィアはそんな様子を見ながら、邪魔にならないようにと静かに工房を後にしたのだった。
それから数日工房の業務も滞りなく進み、職人たちの中から製紙をするもの、新技術の開発をするものと担当が、アレルによって指名されていった。
俺はそんな職人たちが書いた収支をアレルがまとめた紙をパソコンに入力して親父にデータを送るという作業を毎日寝る前による行っている。おかげで寝不足だ、まぁ、親父や姉ちゃんもそれに付き合っているから俺としては何も言えないけどね。
さらに数日が多々ある日俺はアレルと工房について話し合うために工房内にあるアレルの部屋にいた。実はアレルは工房の中に住んでいるのだった。
「思っていたより早く開発も進みそうだな」
「ああ、ユキが持ってきてくれた技術は結構正確だからな、助かる」
「そうか、こっちの言葉に直すの結構面倒だけどな」
「あはは、確かにそうだろうな。それにしてもユキ」
「あん、なんだ」
「お前、ずいぶんと気合入れてるよな」
「ああ、そのことか、実はな……」
俺はアレルにソフィアが貴族連中に言われている陰口を教えた。
俺がその陰口を聞いたのは、ソフィアの従者となって間もないころだ。そのとき王侯貴族たちでよくあるパーティーが行われていた。俺は従者としてそれに参加していた。といっても会場の隅で優雅にふるまうソフィアを眺めているだけだった。そんな時たまたま近くにいた貴族の二人が話しているのが聞こえた。
「……ええ、もちろんです。お任せください」
「そうですか、それはありがとうございます」
どうやら一方の貴族がもう一方の貴族に産地の貴重品を譲るという話らしい。俺は特に興味もなく何気なくその話を聞いていた。すると気になる単語が出てきた。
「……そういえば聞きましたか、あのユーズレスプリンセスがどこの誰かもわからない平民を従者にしたそうですよ」
「ええ、聞きました。何を考えているのか、王女としての自覚が足りないんではないですかねぇ」
「全くですな」
そんな会話だった。よくわからなかったがたぶんユーズレスプリンセスというのはソフィアのことで、平民の従者とはたぶん俺のことだろうと思う。
俺ことに関しては事実だし、まぁ、気にしなかったそれよりもユーズレスプリンセスという言葉が気になった。
「なんだ、あれは」
俺がそうつぶやいたとき後ろから突然声がした。
「失礼します。あなた様がソフィア殿下の従者でございますね」
「え、ええ、そうですが、何か?」
「はい、私は、ダリマール公爵家で執事をしております。セバレスと申します。以後お見知りおきをお願いいたします」
そういってセバレスさんは深々と頭を下げた。その風体はまさに執事を絵に描いたようで、俺は思わずその所作に見とれていた。
「あ、ああ、えっと、お、あ、いや、私は、ソフィア殿下の従者、ユキといいます。こちらこそよろしくお願いします」
「ご丁寧にあいさつ痛み入ります」
「い、いえ、こちらこそ」
どうやらセバレスさんは俺に挨拶をしに来てくれたようだった。
「あ、あの、セバレスさん、ちょっといいですか?」
俺は思い切ってセバレスさんにさっきのことを聞いてみた。
「はい、何でございましょう?」
「実はさっき……」
俺は先ほどのことを簡単に説明した。
「……なるほど、そういうことでございますか。ええ、確かにソフィア殿下は貴族の一部の貴族の方々からそのように揶揄されておられます」
「揶揄? 馬鹿にされているってことですか?」
「はい、端的に言いますとそうでございます」
「な、なぜですか?」
俺はさらに尋ねた。
「ユキ様はソフィア様のお年をご存じでございますか?」
「え、あ、はい、たしか、俺と同じで十六だったかと」
「ええ、そうです。そして、十六となれば、すでに婚姻を結んでいてもおかしくない年です」
「えっ」
俺は驚いた。それはそうだ、現代日本で生きている俺にとって十六といえばまだ、高校生、結婚なんて考える年じゃない。まぁ、確かに、法律上できるけど、それだけだった。
だからといってそれを言うわけにもいかず、驚いたままでいるとセバレスさんがそれを察してきた。
「平民の我々にはあまりなじみのないことかもしれません。平民はあまりそういったことにはこだわりはありませんから」
「え、ええ、そうですね。しかし、それと先ほどのことは、どういった関係が?」
俺は疑問を投げかけた。
「はい、ですから、ソフィア殿下は本来であれば、すでに婚姻を結ばれておられるはずなのです。ですが、いまだ、殿下は婚姻を結ばれておりません。それには理由があるのです」
「理由? ですか」
「はい、王族の姫君となれば相手に制限ができてしまいます。もちろんこれは法律で定められているわけではないのですが、姫君が嫁ぐ家は公爵家か他国の王子しかありません。さらに、未婚の方でなければならないのです」
そう、そうしなければ姫を軽んじるとして許されないそうだ。
「な、なるほど、ですが、それと……」
俺はさらに疑問に思った。
「ソフィア殿下にはその相手がおりません。そのため、縁を結ぶことができない役に立たない姫君ということでユーズレスプリンセスと言われておられているのです」
俺は衝撃を受けた。それはどう考えてもソフィアだけの問題じゃないだろうと思ったからだ。
「そ、そんな馬鹿なことが……」
「はい、その通りでございます。もちろん我が主を含め、公爵家、他国の王子が生まれなかったことにあります。我が主もそれについては嘆いております。しかし、これらは極めて政治的な理由も含まれております」
「政治?」
俺はますますわからなかった。
「はい、ユキ様はソフィア殿下のご兄弟についてご存知ですか?」
「ああ、えっと、確か、ソフィア殿下が第二王女だったから、上にお姉さんがいるってことはわかりますが、それ以外は?」
「そうですか、確かに、第一王女アナベル様がおられます。アナベル様はすでに隣国のアサーリース王国の第一王子に嫁がれました。実はそのほかにも第一王子ユミル様と、第二王子カナン様がおられます。本来であれば第一王子であるユミル様が次期国王となられるのですが、何分少し問題がありまして、さらに、カナン様はまだ、二歳と幼い、それでいて、ソフィア様はとても聡明な方です。我が国では伝統的に男性が王となっておりますが、過去には女王も存在されています。ですから貴族の中にはソフィア様を次期国王にと押すものも多くいるです。先ほどの彼らは、それに対してユミル様を押されている方々なのです」
俺はそこまで聞いて何となくわかった。どの時代もどこの場所でも権力者たちが考えることは一緒なんだなと無駄に感心してしまった。
「とまぁ、こんなことがあってよ、それで、この工房が功績を出せばそれは姫様の功績になるだろ、だから、気合を入れてるってわけだ」
「……」
俺が説明をするとアレルはそれを黙って聞いていた。
「……アレル、どうした?」
黙っていたアレルに俺は尋ねた。
「ユキ、それは本当のことなんだな」
「ん、ああ、そうだ」
「そうか、わかった。ユキ、俺も協力するぜ。というよりさせてくれ、俺たちで姫様の汚名を吹き飛ばすぞ」
「ああ、もちろんだ」
こうして俺とアレルは気合を新たに工房をスタートさせたのだった。




