表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王喜劇、流転し悲劇へと  作者: 雪平 淡火
悲劇、転生、驚愕
2/3

生まれ出づる所、地獄につき注意。

 意識が浮上する。

 目蓋の向こう側に光を感じる。

(死んだ、いや、殺されたはずなのに…なんで意識が?)

 目を開こうとするが、思うようにいかない。

(やはり、死んだのか?しかし、感覚はぼんやりとだがあるのは…)

 そのとき、体の下に手を差し込まれる感覚と共に、浮遊感が生まれた。

「元気な男の子ですよ!リーザさん!」

(………どういう状況だ?これは)


 なんとか開いたその目には、小さくなった俺の体を抱える、メイドの姿が写っていた。




 それから数年、俺は、いや。僕は四歳になった。

 だというのに、いまだ歩くことができないのだ。

 そう、先天性の下半身不随である。

 誰かを守らせてくれ、その願いすらかなわない人生。俺には、守る力すらなかったのだ。

「母さま、外に遊びにいきたい…」

「だめよフルー。あなたは外で遊べるような体ではないの」

 フルー。それが今の俺の名前だ。

「でも母さま、エルは問題無いって言ってた…!」

 僕の母さまの名前はリーザ。赤毛の美しい女性だ。そしてエルというのは僕の傍付きのメイド。エルフの少女である。

 この家は村の外れにある。その理由は、とても醜い。

 我が家系は、剣に秀でた者が多く排出されてきた。

 その父親と結婚から四年という長い時間をかけ母から生まれた子供が僕だ。

 しかし、足は動かず、優れた頭脳を持つわけでもなく、期待に沿わぬ出来損ないが生まれたというわけだ。

 そのことを世間から隠すため、離れを建て、死産による精神的ショックの療養という名目で母はこの屋敷に軟禁されている。

 僕は死んだものとされたのだ。父に。

 唯一俺と向き合ってくれたのが、エルである。

 魔法という技術に優れている彼女は、俺のなかにある魔力に気づき、目にかけてくれているのだ。

「坊っちゃん、坊っちゃん!」

 母に外出の許可を出してもらえなかった僕は、自室で読書をしていた。するとドアを蹴破るようにして飛び込んできたエルは、興奮したように捲し立てた。

「坊っちゃん!やっと魔晶石の鉱脈を見つけてきましたよ!誉めてください!」

「ほんとかエル!さすがだ!」

「はい!」

 ()はコートを掴むとエルの手を引き急いで屋根裏へと転移(・・)する。

「ぼ、坊っちゃん?褒美はそれだけですか?キスの一つくらい…」

 エルがボソボソと何か言っているが、興奮している俺には聞こえない。聞き取れない。聞く気が無い。

「ようやく、守る力へ手がかかる…!」

 これは、俺が三歳のときにエルと考えた俺の力を取り戻す計画だ。

 忘れもしない、一年前のあの日を。

 あのとき、エルと()は知り合ったのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ