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曖昧パルティータ  作者: さいふぁ
prelude ―ずっと一緒にいれる距離―
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 あたしと悠麻(ゆうま)は、「生まれる前からお隣さん」だった。

 親同士が仲良しで、家も隣。

 出産のためにお母さん達が入院した病院でも、ベッドは隣同士。

 そんなお隣さん人生を送るあたし達はいわゆる幼なじみで、物心ついた時にはすでに、悠麻はあたしの家族だった。

 弟、お兄ちゃん、もしくは分身。

 あたしにとって、悠麻はそういう存在だ。

 悠麻の傍にいることはお父さんやお母さん、お兄ちゃんと一緒にいることと同じくらい自然で、普通だった。

 小学校を卒業して、中学校に入学して。

 あたし達の関係は、まったく変わらない。

 一緒に登校して、下校して。やっぱりお互いの家に入り浸って。悠麻の両親は仕事で家を空けることが多いから、あたしの家に泊まっていくようになったのもこの頃だ。悠麻とあたしの関係が謎めいてきたのも、周囲から恋人同士だと誤解されるようになったのも、この頃。

 なんとなく言いたいことは分かるけれど、あたし達の間に恋愛小説や少女マンガみたいな甘酸っぱい空気なんて、まったくない。

 友達以上、恋人未満。たしかにあたし達はそれに当てはまるんだろうけれど、あたしは悠麻が傍にいても抱きしめたいとかキスしたいと思ったことはないし、悠麻に対してときめいたのはカサカサ動いて飛ぶ黒光りするあの虫を一撃で退治してもらった時くらいだ。

 だから悠麻が高校生になってから女の子を取っかえ引っかえしていても「あーこいつアホだ」くらいにしか思わなかったし、あたし達は相変わらずお互いの家に入り浸って、一緒に遊んで、宿題で泣いて、鬼畜なテストで轟沈して。

 小さな頃から、ほとんど変わらない関係を保っている。

 こんなあたし達は、周囲から見れば、やっぱり不自然なんだろう。



 でもこれが、あたしと悠麻が十六年かけて築いてきたポジションなんだ。

 ずっとずっと一緒にいられる、距離なんだ。


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