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序
微睡む、
微睡む。
微睡みながら、
落ちて
いく。
深い、
深い、
奈落の底へと
堕ちていく…。
†
それは、ある夜のこと。
綺麗な月夜の物語。
ああ、俺はまた此処に来てしまった。
果てぬ暗雲。
永久の海原。
終わらない月夜。
そう、此処は、『最果ての地』―――
「綺麗な月夜だね。」
誰かが言った。
「空も海も際限なく続いているかのように途方もなく、広大で…
まるで僕らの些細な生命なんて束の間の徒労のように思えてくるのに。
それでもあの月は、僕らの虚無や絶望を包み込み、僕らを明るく照らし続けてくれる。
―――例えそれが幻想でも、ね。」
女とも男ともつかぬ、妖しい、声。
俺はこの声を知っている。
「今度はいつまでここにいるつもり?」
いつ、まで…?
俺はいつまでこんなところに居るつもりなんだろう。
こんな、哀しいだけの世界に。
俺の悲愴な面持ちを見て、苦笑しながら声は言う。
「この世界も、君が言う程悪くはないと思うけどね。」
違う、俺は…此処に居たくない。