綺麗
【ハロルド・ローレンス】
盲目の少年、彼を屋敷に連れ帰り
迎えてくれた使用人達を驚かせてしまったが
簡単に説明した。
彼を路地裏でひろったこと
彼は目が見えないということ
「ここは私の屋敷だよ、君の目の前に使用人達がいるんだ、
自分の名前、言ってごらん。挨拶するんだ。」
「はい、ぼ、僕はスチュアートと言います、これからよろしくお願いします…」
彼は丁寧に自己紹介をしてくれた。
「使用人達には、また自己紹介してもらうから、君には私の娘も紹介しよう。」
そう言って私は彼の手を引いた。
使用人の一人に聞くと、彼女は奥の音楽室にいるらしい。
音楽室のドアを開けると、聞き慣れた可愛らしい歌声が聞こえた。
ふと、握っていた彼の手が緩む。
「……綺麗…」
自然に私も微笑む。
私の娘は、歌が好きで、とても美しいこえで歌う。
だから、演奏会や夜会に招待され、そこで歌うことだってあった。
「ジュリア」
声を掛けると、彼女はくるりとふりむき、駆け寄ってきた。
「お父様!お帰りなさいっ!ずっと待ってたのよ。」
「おそくなったね、すまないすまない、ほら、ジュリア。」
「あら?貴方、だあれ?」
「あ、えっと…」
「ジュリア、彼はね、スチュアートといって…目が見えないんだ、
新しい家族になる、お前の姉弟になるんだよ。スチュアート、私の娘のジュリアだ」
するとスチュアートは私の手をはなし、
「スチュアートです、よろしく…」
「私は、ジュリア…スチュアート、よろしくねっ」
ジュリアは両手でスチュアートの手を握り、彼の顔を覗き込み
満面の笑みを浮かべた。
その光景は何とも微笑ましいもので、
これなら、心配はないなと思った。
「これから私達は、家族だ。」