表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

*なしくずし

「セレン」

「ん?」

 振り返った男にベリルは口の端をつり上げた。

「この近くに『広い場所』はあるか?」

「……南100kmに廃墟がある」

「! 何をするつもりなんだ」

 雰囲気の変わったベリルとセレンに白銀が問いかける。

「逃げ続ける訳にもいかんのでね」

「1人で戦うつもりか」

 リャムカは呆れたように発した。ベリルはニヤリと笑みを浮かべ口を開く。

「武器の設計図は破棄し科学者たちも解放した。私の手元にある唯一の商品を大切に持ち帰りたいだろう」

 相手は手荒なことが出来ない事を踏まえたうえでの戦闘。それでもたった1人で迎え撃つ度胸には感心する。

 ベリルは他に3つほどの武器とバッテリーやらを選びセレンにクレジットカードを手渡した。

「迷惑をかけたな」

 白銀たちに言って工場のわきに止めてある反重力バイクに足を向ける。

「……」

 白銀たちは互いに顔を見合わせた。

「はぁ~……」

 大きな溜息と共に白銀はベリルに歩み寄った。


「おい」

「ん?」

 バイクにまたがってエンジンをかけようとしたベリルを呼び止める。

「……20万でどうだ」

「そんな程度でいいのか?」

 返ってきた意外な言葉に白銀は一瞬、声を詰まらせた。

「何人だ?」

「え?」

 訊かれてみんなの方を振り返る。いち依頼に付き20万で言ったんだが、20万×人数で計算しているのか……?

「この件は20万では安すぎる」

「全員分払えるっていうのか」

 それにベリルは指ぬきグローブをはめながら応えた。

「誰が受けるか話し合ってくれ」


「えっ!? 1人20万クレジットも出してくれるって?」

「すげーじゃん!」

「どうするのじゃ?」

「どうするも、受けたい奴は言ってくれ」

 すかさず全員が手を挙げる。

「危険だぞ」

「今更だな」

「そうそう」

「楽しそうじゃん」

「決まりじゃ」


「100万だな。前金で渡す」

 決を取って戻ってきた白銀にベリルはしれっとクレジットカードを手渡した。

「……」

「長く生きているのでね。それなりに金はある」

 ベリルは怪訝な表情を浮かべる白銀に薄く笑った。

「それなら構わないが……」

「20分で準備しろ」


 白銀たちは各々、戦闘の準備を始めた。

 たった今いただいた金でセレンから武器を買う。セレンにとっては嬉しい事だ。

「!」

 ベリルが白銀に何か渡した。それは通信機だ。耳に装着するタイプですっぽりと収まる。

「設定はしてある」

 全員がそれを耳に装着し準備は整った。ベリルはバイクにまたがり白銀たちは小型艇に乗り込む。

「ベリル」

「!」

 セレンから何かを投げ渡される。

「せんべつだ」

thanksサンクス

 肩に背負っている1mほどのレーザーライフルに取り付ける。ブースターパックだ。威力と射程範囲レンジが伸びる。

 反重力バイクを起動させるとフワリと浮いた。白銀たちの乗る小型艇を一瞥して工場をあとにした。


「どういった兵器なんだ?」

 白銀がヘッドセットでベリルと会話する。見せて貰った爆弾について問いかけた。

<さあな。詳細は解らんが反物質を利用したものらしい>

「そりゃまた危険なシロモノだなぁ」

 ディランが呑気に応えた。

「しかし接触する物質の質量によって規模も変化するのだろう? そもそもぶつかる前の段階で大気に触れて消滅するものをどうやって爆発物に転用出来たのだ」

 リャムカはもっともな疑問を口にした。

<反物質の周囲に特殊なシールドを張る事で接触を防いでいるらしい。目標物に接触させるシステムは私にも解らん>

「! お出ましのようだよ」

「!」

<!>

 ディランがディスプレイに映し出された影に発する。

 白銀たちの乗る小型艇よりもひとまわりほど大きい輸送機が200mほど後ろから迫ってきていた。

「チッ」

 白銀は敵の武装を確認するためディランの隣のシートに乱暴に腰を落としてコントロールパネルをいじり始めた。

<どうだ?>

「大した武器は装備してないようだ」

「船での攻撃を目的としてないって事か」

「牽制程度でバイクを落とす気かな?」

「じゃあこっちも牽制だ」

 ディランがそう言うとエイルクとリャムカは後ろにあるレーザーに向かった。

<シールドだけは良いものを使っていると見た。同じ場所を狙え>

 ベリルは言ってバイクを自動操縦に設定しライフルを手にする。

 出力を最大にして敵の輸送機に照準を合わせた。当たればデカイが外れればバッテリー切れでさっそく武器が1つ無駄になる。

「……」

 攻防を繰り返している上空の2隻の船を左目で視界全体に捉え右目の照準レーザーサイトは敵の船に──

「!」

 エイルクの目に下から敵に向かった閃光が見事に相手の船に命中した光景が映る。

「当たった! すげー!」

<油断するな。これで終わりではない>

 煙を吹き出しながら遠ざかる敵の輸送機を一瞥しベリルはポイとバッテリー切れのライフルを投げ捨てた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ