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*ちょっと聞いて

 シルヴィと呼ばれた青年は電子機器を狂わせる能力『ストライダー』であると同時に、今で言う霊能力者や超能力者という意味の『エナジー・ブレイン』でもある。

 その見事な銀の髪と名前から『白銀』という通り名が付けられている。その能力を使い彼はいわゆる『なんでも屋』をしているのだ。

 ディランは元・銀河連邦員である。軍部特務課に所属していた。

「ちょっとした事」で銀河連邦を辞め、今は白銀シルヴィと行動を共にしているのだ。

 地球人類の統合組織『銀河連邦』──この広い銀河系で円滑に事を運ぶためには組織は必要不可欠である。

「ほっほっ。若者は元気が一番じゃ」

「言ってくれる」

 老齢のトカゲ人間──もとい、スナイプ人のナナン・セリオルはディランの姿に緑色の顔を緩ませる。

 縮んだ身長を伸ばすように軽く腰を2~3度叩くと持っていた杖をコン……と地面に突いた。

「彼はいつも元気ハツラツですね」

 ナナンの隣で、その老人を守るようにそびえるトカゲ人間──もとい、スナイプ人のリャムカ。

 屈強な体に強い意志。スナイプ人は生まれついての『エナジー・ブレイン』だ。

 その力をより良く使うべく、己が師と決めたスナイプ人と寝食を共にする。彼らは基本的に髪の色は白髪なのだ。時折、金色の髪の者もいる。

  因みにリャムカの髪の色は緑がかった金髪だ。

「待ってくれよぅ~おいらを置いてくなってば」

 疲れたように走ってくるのは『ゴーレム』という言葉がよく似合う少年。名はエイルクという。

 カーセドニック星の人間だ。半鉱石の体を持ちその体の構造物質から地位を決められてしまう。

 つまり生まれながらに地位が決まってしまっていて地球でいう『カースト制度』と似たような社会制度を持っている。

 少年は最下層の地位である『ダート』。そんな自分が嫌で、いつもこの星から出たいと夢見ていた。

 ──という一行が観光惑星に来ていた。どう考えたってこの一行は怪しさ爆発だ。彼らの出会いはとても数奇で運命的とも言える。

 全てはシルヴィから始まった。否、彼の両親から始まった事である。彼の父親は『天使』なのだ。それも特別、特殊な……

『ルシフェル』もしくは『ルシファー』をご存じだろうか。

 そう、神に反乱を企て地獄に堕とされた天使の名だ。もともとは天使の階級の名であったが今では彼の名となっている。

 堕天した後は『ルシファー・サタン』などとも呼ばれる。そのルシフェルがいた位階に就いたのが彼の父親だった。

 しかし──その天使はシルヴィの母親を愛し、またもやその位階の天使は神を裏切った事になる。

 ナナンは実は元天使だったのだ。数千年前シルヴィの父親に「人間になりたい」と父なる神に懇願する時に助けて欲しいと頼み込んだ過去がある。

 そしてシルヴィが生まれる時、白銀の父親は「この子を見守ってほしい」と言い残し天界に連れ戻された。

 今でもイバラの牢獄に幽閉されているのだろう。

 シルヴィはルシフェルを崇拝する『サタニスト』たちの手によって、その悪魔を召喚させるために利用されかけた。彼らの活躍でサタニストたちの計画を阻止出来た訳である。

 説明がやたら長くなってしまったが、彼らがいるのは観光惑星『ルジラドリトア』

 未だ原住民が平和に暮らす惑星だ。とはいえ観光客相手にしている原住民も少なくはなく、そのままの生活をしている地区と観光案内をしている原住民の血を引く人たちが暮らす地区が自然と区切られる事となった。

「で、ルジランの集落には行くの?」

「俺が来たかった訳じゃねぇ……」

 白銀は眉間にしわを寄せてディランの問いかけに応えた。

 この惑星は今までも何度か訪れているし集落にも行った。現状ではさして目新しいものも無いのに、どうして俺が希望した事になってるんだ……

「おい、そこの一団」

「!」

 ふいに後ろから声をかけられる。振り返ると地球人らしい男たちが重々しく口を引き結んで白銀たちに目を向けている。

「何か用か?」

 白銀が怪訝な表情を浮かべると声をかけてきた男がおもむろに懐から何かの画像を出してきた。

「この男を捜している。見かけなかったか?」

「……知らないな」

 渡された画像を見たあとそう応えながら返した白銀。

「本当か?」

「嘘じゃない」

 画像の人物は金髪のショートヘアに鮮やかな緑色の瞳の青年だった。地球人のようだが確かに見た事の無い人物だ。外見は同じような年格好に感じた。

 暗めのスーツを着た男たちは、それを聞くと足早に去っていく。

「なんだったんだ?」とディラン。

「さあな」

 白銀たちは宇宙港に戻り自分たちの船に乗り込んだ。

 個人が持つには大型の宇宙船。やや無骨な造りだが完全オーダーメイドの白銀の宇宙船は彼が決まった住居を持っていない事を窺わせる。

「次はどこいく?」

 ディランが操縦席の隣のシートに腰掛けながら問いかけた。

 今の処、白銀の仕事を全員でこなしていくという形になっている。かなりの大所帯なため白銀たちは割と有名人となっていた。


「!」

 出航しようとした白銀の宇宙船に管制塔から停止命令が出た。

「おい、どういう事なんだ?」

 白銀は管制塔に向けて言葉を発した。

<すまない、ルジランたちが騒いでいてね。少し待ってくれないか>

 スピーカーから響く声に白銀は溜息を吐き出す。

「どうしたんだろうね?」

 呑気にディランが口を開くと白銀は理由を聞くために管制室に足を運んだ。

「どういう事なんだ?」

 色んな姿形をした種族がいる管制室で白銀はそこのリーダーを問い質した。1つ目の管制室長は肩をすくめて説明する。

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