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*オチ

「ベリル! アレは素晴らしい発明なんだぞ……それを闇に葬るつもりなのか」

「素晴らしい? 制御も出来ないシロモノがか? かつての核もそうだったとかいう話は聞かんぞ」

 ベリルは銀色の物体を取り出した。

「! そっ、それを渡せ!」

「嫌だね」

 ニヤリと微笑みポンと真上に放り投げる。

「!?」

 オレオは縛り上げられた体で必死にそれを目で追った。

 ベリルはラインガンを引き抜き見上げる事もなく引鉄を引く。

「!? やめろ!」

 銀色の物体はその光に弾かれるようにくるくると回る。続けて3発、当たって物体は見事に砕け散った。

「なんてことを……っ」

  オレオは降ってくる小さな残骸にガックリと肩を落とした。

「ば、爆発しないんだね……」

  エイルクがビクビクしながら言うとベリルは淡々と説明した。

「正しい方法でなければ爆発しないんだよ、こういうシロモノはね」

「引き上げよう」

 白銀がみんなを小型艇に促す。出来れば警察関係とは関わりたくない。


 ベリルは乗ってきた反重力バイクにまたがり小型艇の後部を確認して追いかける。

<かつては仲間だったんだかな……>

「!」

 ヘッドセットからベリルの小さな声が白銀の耳に響いた。

 足を踏み外した仲間を、彼はどんな気持ちで捕らえたのだろうか……白銀は目を細めた。

「ねえ~今いくつなの?」

「気にするような性格でもないよね」

 エイルクとディランはヘッドセットを装着しベリルを問い詰める。

<何故そんなに知りたがる……>

「わしも知りたい」

「お師さま……」

 困ったような声のベリルに白銀はクスッと笑った。彼のそんな様子は初めて見た気がする。

<お前たちが想像するような歳ではないぞ……>


 セレンの工場に到着してもエイルクたちはベリルに張り付いていた。

「ディラン! 修理手伝いするんだろ?」

「あっ……と、そうだった」

 白銀に言われてディランは慌ててエンジンルームに向かう。エイルクは「面白そうだ」とディランについていった。

「ベリル」

「ん?」

  落ち着いたようにバイクにもたれかかっているベリルに白銀は声をかける。

「これからどうするんだ?」

「さてね」

 一度、目を閉じて少し顔を伏せたあとベリルは工場の外に目を移した。

「行きたい処はいくらでもある」

「!」

 穏やかなエメラルドの瞳に白銀も外を見る。

「もし何かあれば仲介屋に私の名を出せば良い」

「!」

 振り返るとベリルがバイクにまたがっていた。

「おいっベリル!?」

 ベリルは右手で軽く別れの挨拶をして走り去った。


「え~行っちゃったの?」

 残念そうにつぶやくエイルク。好奇心旺盛な少年には、この上もなく面白い相手だったのかもしれない。

 何故かナナンも同じくらい残念そうにしているが……人間になってから生まれ変わってもその記憶を消してくれない神様に多少の腹立たしさを持つナナンにとって、ベリルとはどこか共通する意識があるのかもしれない。

 もうすぐ修理の終る船のリビングルームで白銀はそんなみんなの様子に微笑みながら端末をいじる。

「何を見ておるのじゃ?」

 ナナンがのぞき込む。

「ん? ルジラドリトアの言い伝えについてね」

「おお、そういえば彼が面白い事を言うとったな」

「! どんな?」

「元々はルジランの『緑の怪物』という名前がディバックにすげ変わったんじゃが。彼があの星に来たせいだとか」

「……」

 つまり、過去にあの星で何かしでかしたんだな……

「! ちょっと待て」

「なんじゃ?」

 白銀はディスプレイに映し出された文字を凝視した。

「その名前に変わったのは2000年以上前だぞ……」

「なにっ!?」

 ナナンは、ガバッ! と端末に張り付いて文字を追う。

「……あやつは本当に何歳なんじゃ?」

「知らない方がいい気がする」


<あいつに会ったのか>

「あいつを知ってたのか」

 修理の済んだ宇宙船で次の惑星を目指す白銀は仲介屋と通信を交わす。

<すまんな、ある程度は秘密にしておかないといけない事柄なんでね。あいつがそう言ったんならあんたたちには何も隠す必要はなくなった訳だ>

 ディスプレイに映し出されている3つ目の男がニヤリと笑った。

「あいつは何歳なんだ?」

<それはオレも知らないよ>

「そうか……」

 白銀は小さく溜息を漏らす。

<ウワサじゃあ、地球の宇宙開拓以前から生きてるって話だがね>

「バカいえ! それだと7000年以上は生きてる事になる」

<だからウワサだって>

「……」

 通信を切って白銀は1人コクピットで唸った。

「Dybbuk……? そんな生やさしい奴か?」

 今更に白銀はベリルの事を思い起こし小さく発した。

「あいつには……」

『悪魔』

 が一番ふさわしい──


 そんな白銀のつぶやきを知ってか知らずか彼は昔と変わらずしれっと宇宙を駆けめぐる。

 彼を止められる者など果たして存在するのだろうか?


 未来永劫そんな奴は現れないかもしれない。


 END

*いかがでしたでしょうか?

 少しでも笑っていただけたなら幸いです(´・ω・`)ノ

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