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*戦況、いちじるしく不安

「私が聞いたのはあくまでもマクロディアンとしての種族の話だ。奴は地球人で元々はマクロディアンではなかったと言っていただろう」

「ああ、25歳の時に不死になったとか言っていたな」

「50歳でなってたら50歳の見た目だったんだね~」とエイルク。

「死にかけのジイサンの時に不死になってたら最悪だよな」

「そもそも死にかけのジジイにどうやったら不死になる偶然があるんだよ」

 ディランの言葉に白銀が呆れて目を据わらせる。

<聞こえてるぞ~>

「あ、聞こえてた?」

 ディランがペロリと舌を出す。

<そろそろ来る頃だ、戦闘態勢に入っておけ>

「やたら場数を踏んでるな」

 リャムカはベリルの動きに唸った。そんじょそこらの兵士の身のこなしじゃない。

「てコトは相当なおジイさんなのかな?」

<その話は後にしろ……>


 そうこうしている間に数機の小型艇が遠くの方で降り立った。

<相手はおよそ30人。引き締めていけ>

「30人!? 多くない?」

 驚くディラン。確かにベリル1人を相手に30人というのは多すぎる気がする。

<予定通りの数だ>

 どんな予定立ててんだよ……白銀たちは心の中でツッコミを入れた。

<私が奴らを攪乱かくらんする。お前たちは2人一組で目の前に来たら攻撃しろ。私を撃つなよ>

 言ってすぐ叫び声と戦っている音が響いた。

「わっ!? もう始まってんの?」

 エイルクは慌ててラインガンの安全装置を外した。

「行くよ」

 ディランがいつもとは違った無表情な顔でエイルクを促す。さすがは元銀河連邦員だ、いざという時は冷静になる。

 白銀はラインガンを片手に1人で駆ける。リャムカは師であるナナンからは絶対に離れないので白銀が単独になるのだ。

<大体の位置を教えてくれ>

「俺は多分あんたから西にいる」

<オイラたちは東だと思う>

<我々は北だ>


「解った。そこから動くなよ」

 聞いて大体の位置を把握しペロリと唇を軽く舐めて駆け出した。

 すでに5人倒して縛り上げてある。残りは25人ほど……全てを相手にしていたらこちらの武器が底を突く。


<西に5人、誘導する>

「解った」

 白銀はいつ敵の影が見えてもいいように銃を構えて辺りを窺った。

「! 音が近くなってきた」

<注意しろ>

“ドカン!”

「! なんだ今の音は?」

 すぐ側で聞こえた爆音に白銀は一瞬、体を強ばらせた。

<トラップにひっかかった。3人だ>

 2人倒したのか……あっけにとられながらも白銀は目の前に出てきた影に引鉄ひきがねを引いた。

<東に4人、誘導する>

「わっ!? こっち来んの!?」

 エイルクは慌てて銃を握りしめる。そんな少年の肩をディランはポンと叩いた。

「大丈夫だよ」

「……うん」

“ドカア!”

「!? なにっ?」

<1人だ>

「3人ひっかかったのね」

「!」

「わああ!?」

 構えていたディランたちにその影は引鉄を引いた。

 しかし、半鉱石のエイルクの体はその光を乱反射させ無効にした。すかさずディランが男の足に命中させる。

「相変わらずその体いいよね」

「変な褒め方しないでよ!」

 盾にされたエイルクは半泣きで訴える。初めからオイラを盾にするつもりだったんだ……と、のほほんとしているディランを睨み付けた。

「こちらに何人、誘導するんだ?」

 次に指示されるだろうリャムカが先に訊ねる。

<上から見えたと思うが、少し拓けた場所があったろう。そこに集まってくれ>

 リャムカたちの位置からほど近い距離に言われた場所がある。

<リャムカがまず先行し、鉢合わせした奴らをよろしく頼む>

「よし! ゴーゴーじゃ!」

「お師さま!? 1人で行かないでください!」

 嬉々として駆け出すナナンをリャムカは慌てて追いかけた。

 さすが屈強な精神と肉体のリャムカ。出会う敵をことごとく倒していく。それをナナンが手際よく縛り上げていくという流れだ。


「!?」

 拓けた場所に全員が同時にたどり着いた。

「ベリル!」

 残った敵は6人。その中の男が声を張り上げた。

「やあ、オレオ。元気そうで」

 しれっと軽く左手を挙げたベリルにオレオと呼ばれた男は鋭い眼差しを向ける。

「大人しくしていたらどうなんだ。キサマはすでに終った存在だろうが!」

「そんな事は他人が決める事ではない。引退なんてガラじゃないね」

 ベリルは肩をすくめて睨み続けるオレオを見やった。

Dybbukディバックめ……」

「昔から色んな呼ばれ方をしてきたが、とうとう死人の霊になったか」

 とぼけて言ったあとベリルは口の端をつり上げてゾクリとする目をオレオに向けた。

「今頃は銀河連邦が『惑星ナルシチェ』に向かっている」

「!? なんだと!?」

「根本的な解決だろう?」

 薄笑いで言い放ったベリルを呆然と見つめてオレオはがっくりとへたり込んだ。

「ナルシチェってどんな星?」

 エイルクは小声で白銀に訊ねた。

「この銀河の端にある辺境の惑星で犯罪組織が隠れている処だ」

「言う処の犯罪惑星だね」とディラン。

 犯罪組織が横行している惑星だが大々的に摘発は出来ない理由がいくつかある。今回の件に関していえばその摘発を行える状況にあったという事だろう。

 絶望的な表情を浮かべるオレオと残り5人を縛り上げベリルはこの街の警察に連絡した。

「終わったぁ~」

 ようやくの解決にエイルクは安堵して溜息を吐き出す。

「ご苦労さん」

 ベリルはニコリと笑って労をねぎらった。

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