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9話: 白銀の魔王、再臨

娼婦の血と涙にまみれた訴え、そしてシオンの狂気じみた愛撫。

負の感情がレンの脳内で臨界点を超え、パキィィィィン! と精神の檻が粉砕される音が響き渡りました。


【警告:ストレス値が100%に達しました】

【リミッターを完全解除。神域権能『黒天』――再定義終了】


「……あ、……あぁぁぁぁぁッ!!!」


レンの叫びが、空気を物理的に震わせる轟音へと変わりました。

うなだれていた彼の漆黒の髪が、一瞬にして根元から毛先まで、死の色を映したような**「純白」**へと染まり上がります。

ドォォォォォォンッ!!!

レンが立っている場所を中心に、半径五メートルの床が、見えない巨人の足に踏み抜かれたかのように円形に陥没しました。豪華な絨毯は引きちぎれ、支柱の木材が悲鳴を上げてひしゃげていきます。


「……ふぅ。……うるせえな、ハンス。お前の笑い声が、ここまで聞こえてるんだよ」


ゆっくりと顔を上げたレンの瞳は、底知れぬ憎悪を湛えた**「あか」**。

先ほどまで怯えていた青年はそこにはいません。ただ、万物を圧殺する「王」の風格を纏った男が、そこに立っていました。


「あぁ……っ! 来たわ……来たわぁぁっ!! レン様、そのお姿……その冷徹な眼差し……っ! 私を、私を今すぐ組み伏せて……!!」


シオンはレンの背後に崩れ落ち、熱い吐息を漏らしながら自らの身体を抱きしめ、恍惚の表情でその背中を見上げました。


最上階、大広間の扉。

レンがその前に立っただけで、分厚いオーク材の扉が「内側からの圧力」に耐えきれず、粉々に弾け飛びました。


「な、なんだぁっ!? 敵襲かッ!!」


酒と女に溺れていたハンスが、慌てて魔弓を掴んで跳ね起きました。しかし、土足で踏み込んできた男の姿を見た瞬間、彼の顔から一気に血の気が引きました。


「……れ、レン……!? てめぇ、その髪……その眼は……」


「ハンス。お前、さっき『悲鳴が最高のご馳走だ』って言ってたな。……なら、お前自身の悲鳴で、腹一杯にしてやるよ」


レンが静かに右手をハンスに向けました。


「『一倍いちばい』」


ズゥゥゥゥゥンッ!!!


「が、はっ……!? 身体が、動か……ねぇ……っ!!」


ハンスが持っていた自慢の魔弓が、重力によって床へと叩きつけられました。それだけではありません。ハンス自身の体重が数倍に膨れ上がり、彼の膝の皿が「パキリ」と音を立てて砕け散りました。


「ひ、ぎぃ、あ……っ! 助けてくれ! 悪かった、金ならやる! あの時の金、全部返すから……っ!」


「金? いらねえよ、そんなゴミ。……それより、お前のその『指』。娼婦たちの指を射抜くのが楽しかったんだろ?」


レンがゆっくりと歩み寄り、ハンスの右手に自分の靴を乗せました。


「『圧搾プレッシャー』」


ミリ、ミリ……グシャァッ。


「ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁッ!!!」


ハンスの五本の指が、まるで熟した果実のように一気に潰れ、床に真っ赤な紋章を描きました。魔王化したレンは、その絶叫を心地よい音楽でも聴くかのように、目を細めて楽しんでいます。


「次は目だ。お前の自慢の『必中』の眼球を、頭蓋骨の奥まで重力で押し込んでやる。……安心しろ、シオンに治癒魔法をかけさせてやるよ。お前が『死にたい』と願うまで、何度でも、何度でも潰してやるからな」


「ひっ、……あ、あぁぁ……っ!!」


ハンスの眼球が、内圧によって不自然に隆起し始めます。

絶叫が響き渡る娼館。その傍らで、シオンはレンの無慈悲な蹂躙劇に自分を重ね、これ以上ない悦楽に身を震わせていました。

一人目、弓使いハンス。

彼の「死よりも苦しい夜」は、まだ始まったばかりでした。

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