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27話: 白銀の玉座

エルフの里の外れ、静まり返った湖畔。レンは一人、大樹の根元に座り込み、深く瞼を閉じました。

背後ではシオンが、レンの邪魔をせぬよう(あるいはその張り詰めた横顔を舐めるように見つめるため)、自身の喉をかき抱きながら草むらにうずくまっています。

レンが意識のさらに奥、自身の魂の最深部へと沈み込んだ瞬間、視界が劇的に変貌しました。

そこは、音も光も、重さすらも存在しない**「」**の世界。

ただ一点、はるか彼方に浮かぶ「白銀の玉座」だけが、冷徹な光を放っていました。その周囲には、これまでレンが屠ってきたガンド、ジャック、フェルンたちの怨嗟の声が、黒い霧となって渦巻いていた。


「……ようやく来たか。泥にまみれた『偽善者』のうつわよ」


玉座に傲岸不遜な態度で座っていたのは、白銀の髪をなびかせ、鮮血のような紅い瞳を持つ「もう一人のレン」。

ストレス値が100%を超えた瞬間にのみ表層に現れる、感情を排した純粋な重力の化身――白銀の魔王でした。


「訊きたいことがある。……この力は、ただ壊すためだけの呪いなのか? 僕は……あのリィネたちの笑顔を守るために、この力を使いたいんだ」


魔王は、鼻で笑うように吐き捨てました。彼が玉座から立ち上がり、虚空を一歩踏み出すたびに、精神世界こころの空間が、ガラスが割れるような不快な音を立てて歪みます。


「笑わせるな。お前が『守りたい』と願おうが、『殺したい』と呪おうが、重力これは等しくすべてを等価に圧殺する自然現象だ。お前は、自分が殺してきた奴らの肉の感触を忘れたのか? ジャックを金貨ごと潰した時の、あの心地よい絶望の響きを!」


魔王は一瞬で距離を詰め、レンの細い首を冷酷な手で掴み上げました。


「次なる標的はガイルだ。奴はこれまでのゴミ共とは格が違う。奴の『勇者の加護』は、お前の内側にある『迷い』を、鋭い剣となって切り裂くだろう。……俺を完璧に使いこなしたいのなら、その薄汚れた『人間らしい心』を今ここで捨てろ。俺とお前が完全に混ざり合えば、神すらもその重圧で跪かせることができるのだぞ」


「……断る」


レンは首を絞められ、肺の空気が漏れ出そうになりながらも、魔王の紅い瞳を真っ直ぐに射抜きました。

「僕は、お前に飲み込まれるつもりはない。……僕は、僕のままでおちからを使うんだ」


「……何だと?」


「リィネに、……そして死んでいったトトに誓ったんだ。……これ以上、大切なものを奪わせないって。お前の持つ『重さ』は、僕がこれまで背負ってきた絶望の重さだ。だったら、それをどう使うかを決めるのは、僕だ……っ!」


レンの強い意志に呼応し、精神世界の黒い霧が、純白の魔力へと浄化され始めます。

魔王は目を見開き、やがて不敵な、そしてどこか満足げな笑みを浮かべました。


「……ふん。ならば、その『甘さ』を抱いたまま地獄へ行け。……ただし、その理想がガイルの剣に届かず、お前が膝をついたその瞬間……お前の『心』は余さず俺が喰らい尽くしてやる」


魔王の姿が、光り輝く粒子となってレンの全身へと溶け込んでいきました。

これまでは「外側から溢れ出す暴力」だった魔王の力が、今、レンの血肉の一部として、静かに、そして強固に馴染んでいきます。

【個体名:レン。精神リミッターの「任意解除」に成功……。】

【魔王化の安定度:極大。……「白銀しろがね」の権能を完全掌握しました】

レンがゆっくりと目を開けると、現実世界の湖面が、彼の魔圧に耐えきれず大きく円形に凹んでいました。

隣でその光景を見ていたシオンが、「あ、あぁぁぁ……ッ! 完璧……完璧ですわレン様ッ!!」と、白目を剥いてその場に崩れ落ちます。


「……行こう、シオン様。ガイルを……俺たちの旅を終わらせるために」


黒髪の中に、数筋の白銀が混じったまま、レンは次なる地へと歩み出しました。

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