25話:白銀の断罪
森の最深部。かつて精霊が踊った聖域は、今や鉄と魔導回路が蠢く、剥き出しの臓器のような「不老不死研究所」へと改造されていた。
「あはは! 見て、この脈動! エルフ千人分の生命力を凝縮したこの『賢者の滴』を注入すれば、私の細胞は神の領域へ到達するわ!」
中央のカプセルの前で、フェルンが狂喜の声を上げていました。彼女の背中からは数千本の魔導管が触手のように伸び、大樹に囚われたエルフたちから最後の雫まで命を啜り上げています。カプセルの中には、リィネの姉が「核」として組み込まれ、その魂を削り取られていた。
「……フェルンさん。その醜い若さは、何万回もの悲鳴で塗り固められてるんだな」
背後から響いた、地を這うような冷徹な声。
フェルンが驚愕して振り返ると、そこには立ち込める死の毒気を、歩くだけで霧散させる圧倒的な威圧感を纏ったレンが立っていた。
「レン……!? 生きていたの? ちょうどいいわ、不老不死の完成には強靭な『人間の生命力』も必要だと思っていたのよ! お前の無能な命も、ようやく私の役に立てるわね!」
フェルンが狂った笑みを浮かべ、最高位の滅びの呪文を唱えます。
「焼き尽くせ! 『終焉の獄炎』!!」
太陽をも飲み込むような極大の火炎がレンを襲いました。しかし、レンは眉一つ動かさず、ただ静かに右手をかざした。
【ストレス値:100%――精神、臨界突破】
「……墜ちろ」
ドォォォォォォンッ!!!
レンの言葉と共に、漆黒だった髪が爆発的な魔力の奔流によって、根元から眩いばかりの**「純白」**へと反転しました。
空間そのものに数万トンの重圧が加わり、フェルンが放った極大魔法は、レンに触れることすら許されず、まるで見えない巨人に踏みつけられたかのように地面へと叩きつけられ、一瞬で鎮火した。
「な、……私の魔法が、物理的に押し潰された……っ!? 馬鹿な、お前は無能の荷物持ちのはずよ!!」
「あ、はぁぁぁ……っ!! 来たわ、来ましたわあああッ!!」
背後では、シオンがその場に崩れ落ち、激しく身悶えていました。彼女はレンが放つ超重力を全身で浴び、恍惚とした表情で自分の喉を掻きむしり、レンの足元へ這い寄る。
「レン様! その神々しいまでの白銀の髪! 慈悲と断罪が混ざり合ったその美しき暴力! あぁ、私の内臓も、その美しい重力でグチャグチャに愛してぇぇぇッ!!」
シオンがレンの靴に唇を寄せようとした瞬間。
「……うるさい。黙ってろ」
レンは一瞥もくれず、背後へ向けて指を微かに動かしました。
「『重圧』」
「ふ、ぎゃああああああっ!?」
凄まじい重力波がシオンを襲い、彼女は一瞬で床の大理石に顔面から叩きつけられ、そのまま数センチほど地面にめり込みました。骨が軋む音が響きますが、白銀の魔王と化したレンの瞳に慈悲はない。
「ぐ、ふ……っ、あはははは! 雑……! 扱いがゴミのようですわレン様……ッ!! 踏みつけられ、無視される……これこそが私の望んだ地獄ッ!!」
地面に顔を埋めたまま、シオンは泥を啜るような声で、さらに深く、暗い悦びに震えました。
「フェルン。お前の『永遠』なんて、俺が今ここで、ただの『重いゴミ』に変えてやる」
レンの足元の地面が、重圧に耐えきれずクレーター状に陥没していた。
白銀の魔王による、最も「重く、残酷な」若さの剥奪が始まろうとしていた。




