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第10話: 処刑の仕上げ

白銀の髪をなびかせ、レンは這いつくばるハンスを見下ろしました。その紅い瞳には慈悲の欠片もなく、ただ「無機質な質量」としての殺意だけが宿っています。


「が……っ、はあぁ……っ! た、助け……殺して、もう殺してくれぇ!!」


ハンスの絶叫が、豪華な大広間に虚しく響き渡ります。すでに右手の指はすべて平らな肉片と化し、膝の皿も粉砕され、かつて戦場を駆けた狙撃手の面影はどこにもありません。


「殺してくれ? ……ハハッ、お前にそんな贅沢な権利があると思ってんのか?」


レンは冷酷に言い放つと、動かなくなったハンスの残りの四肢に視線を落としました。


「『局所重圧スポット・プレッシャー』」


バキィィィィィンッ!!!


乾いた音が連続して響き渡りました。ハンスの左腕、そして両足の関節に数トンの重力が「点」で叩きつけられたのです。肘は逆方向に折れ曲がり、大腿骨は内側から弾け、皮膚を突き破って白い骨の破片が四方に飛び散りました。


「ぎゃああああああああああああああああああッ!!!」


「これでよし。二度と弓は引けねえし、逃げることもできねえ。……一生、地べたを舐めてろ」


レンはハンスの髪を掴み、無造作に床へ叩きつけました。四肢を異様な方向に曲げられ、芋虫のようにのたうち回るハンス。その姿を、シオンは潤んだ瞳で眺め、自身の喉を愛おしげになぞりました。


「あぁ……なんて素晴らしい……。レン様、その残酷さ、もっと私に見せて……っ!」


レンは、部屋の隅で震えていた、ハンスに弄ばれたあの娼婦へと視線を向けました。彼女は恐怖に腰を抜かしていましたが、レンが指を鳴らして彼女にかかっていた威圧(重力)を解くと、おずおずと顔を上げました。


「……おい。こいつはもう、指一本動かせねえ。……お前の指を奪った落とし前、自分でつけろ」


レンはハンスが使っていた魔弓の折れた破片を、重力で彼女の足元まで滑らせました。


「え……あ、……あぁ……っ!!」


女の瞳に、絶望から一転して「黒い復讐心」が宿りました。彼女は震える手で鋭い木の破片を握り締め、這いつくばるハンスへと近づいていきます。


「や、やめろ……! 寄るな、この、薄汚い雌がぁっ!!」


ハンスが虚勢を張りますが、レンの重力が彼の喉を締め上げ、声は掠れた呻きにしかなりません。


「……ハンス……。あんたが私の指を射抜いた時、言ったよね? 『女は泣き顔が一番美しい』って。……今度はあんたが、その顔を見せてよ!!」


「ぐ、がぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


女は、ハンスの残った「目」に、渾身の力で木の破片を突き立てました。

鮮血が噴き出し、ハンスの最後の絶叫が部屋を震わせます。しかし、レンはその絶叫さえも重力で部屋の中に閉じ込め、外部には漏らさせません。

女は狂ったように、何度も、何度も、ハンスの急所を避けて突き刺し続けました。かつて自分が受けた痛みを、そのまま、いやそれ以上の憎しみと共に。


数十分後。

そこには、もはや人間であったとは判別できない「赤黒い何か」と、返り血で真っ赤に染まりながら笑い転げる女の姿がありました。

ハンスの気配が完全に消えた瞬間。

レンの瞳から紅い光がスッと消え、逆立っていた白髪が力なく垂れ下がって、元の黒髪へと戻っていきました。

【ストレス値:0%。通常モードに移行します】


「……ひ、ひぃっ!? な、なんだこれ……ハンスさん!? うわあああ、血だらけだ!!」


いつもの「ダメなレン」に戻った彼は、目の前の凄惨な光景に腰を抜かし、情けなく後ずさりします。自分の手が真っ赤に染まっているのを見て、今にも吐き出しそうなほど顔を青くしました。


「あぁ、レン様……。お疲れ様でしたわ」


シオンが背後から優しくレンを抱きしめました。彼女の服も返り血で汚れていますが、その表情は聖母のように穏やかで、同時に底知れない狂気を孕んでいます。


「一人、終わりましたわね。……あと7人。次は、あの生意気な魔術師リナの居場所へご案内しますわ。……あ、その前に、少し『休憩』が必要かしら? 私の身体で、好きなだけ……ふふふ」


「シ、シオン様……怖いよ……帰りたいよぉ……」


泣きべそをかくレンを、シオンは愛おしそうに引きずりながら、血の海と化した娼館を後にしました。

復讐の旅路は、まだ始まったばかりです。

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