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【注目度ランキング御礼番外編】公爵令嬢シャーロットの結婚⑥終

 あれ? 

 『さっさと婚約』ってそう言ってたわよね? だから一時的なもので……ん? なんだか自信が無くなってきた。


 すると空いたドアの隙間からするりとお母さまが入ってきた。



「違うわよ。ちゃんと正式な婚約よ。きちんと話を聞きなさい。本当にもう……早とちりなのは私に似たのかしら」


「はぁ~辞めて下さい! 心臓に悪いです」

 エドガー様がガックリとうなだれる。


「ふふっ。でもそれはシャーロットの気持ち次第ね。シャーロット、婚約破棄したい?」

お母さまの言葉を聞いて、彼ががばっと顔を上げ、眉を下げて私を見た。


「……いいえ」

 彼は今度は息を吐き、ソファーにもたれ掛かった。忙しいわね。


「そう良かったわ。あなた達はもっと話し合いが必要ね。お茶会の回数を増やしたら?」


「いいんですか? 公爵様は許して下さるんですか?」

 今度はがばっと前のめりだ。


「まさか月1回ってお父さまが決めたの?」


「ふふふ。そうみたいね」


「お父さまひどいわ!」

 ここまでこじれたのは、圧倒的に会話が少なかったせいよ!

 扉の向こうにいるはずの人物を睨みつけた。


「お父さまったら、わたくしたちに嫌がらせをしている暇があるなんて余裕ですこと。お父さまの大切な花に惹かれて、沢山のミツバチが飛んできておりますのに」


「何だと! オーリーにちょっかいをかけているヤツがいるのか! どこのどいつだ!」

 勢いよくドアが開きお父さまが飛び込んでくる。


「仕事ばかりしないで、ご自分でお調べになれば?」


 ぐっと顔をしかめて秘書の名を呼び、執務室に速足で向かって行った。やれやれ騒がしい。


 そんなお父さまを華麗にスルーしてお母さまが私の両手を握ってきた。


「シャーロット今までごめんなさいね。もっと貴女に信頼される母親になるわ」





 お母さまは決まっていたコンサートが終わるとそれから1年休養に入った。  『春の庭』の屋敷にあったウォルドグレイヴのピアノもこちらの屋敷に運び込み、ずーっと私の側にいた。その1年間で二人で旅行に行ったり、観劇に行ったり、人気のカフェに行ったり……普通の母娘のように過ごした。


 それを見ていたお父さまも悔しがり仕事をセーブしだして、その年のほとんどは家にいるようになった。


「わたくし、音楽科のある高等学院に行きたいの」


 驚いた表情の両親が「ピアノを?」と呟く。


「いいえ。声楽家になりたいの。歌を歌うのが好きなの」




 両親の許しを得て高等学院に通った私は、その後音楽大学まで進学した。

 卒業後はオペラ歌手として活動し、憧れのブラクトンホールで歌うこともできた。


 初めは『オリヴィア・キャンベルの娘』という七光りで役をもらうことが多くて、嫉妬や自己嫌悪に苦しんだけれど、必死に練習を積み乗り越えてきた。

 お母さまのように国の宝なんて言われることは到底無理だけど、主役をもらえる事も増えてきて充実した日々を送っている。



 私の我が侭をエドガーは理解をしてくれ、応援してくれた。


 18才で結婚するはずだったけれど、私がオペラ歌手として舞台に立てるまで……24才まで待ってくれた。




「この光景、すごくいい。きれいだ」


 息子のジョージを連れて庭を散歩する私を見て、夫のエドガーがつぶやく。


 ドリトス侯爵の爵位を継いだ彼は、私がジョージを出産した祝いにと、侯爵邸の庭を大造成して新しい庭園を作り、それを私の庭としてプレゼントしてくれた。

 その庭は『春の庭』そのもので、木登りできそうな木に、果物がなる樹木、季節の花々が咲き誇るもので……


 この『春の庭』も今、春真っ盛り。


 木々は青々と茂り、その影は絶えず形を変え、まるで踊っているかのよう。

 色とりどりの花々はあざやかに咲き誇り、風にゆれるその姿はコーラスガール?

 そこに右から左からと、蝶たちがパタパタと飛んできて、その愛らしい姿はメインダンサー。

 ぶーんぶーんと飛び交うミツバチの羽音はバックミュージック……



「やっぱり君は、あの頃の公爵夫人と良く似ている。想像と一緒だ」


 エドガーの声に想像の翼をゆっくりしまう。


 巷で人気のパーマネントで毛先がふんわりカールしている私は、軽やかに振り向いて彼に微笑んでみせた。

これにて完結です。

改めて、お読みいただいた皆様に感謝を申し上げます。

ありがとうございました。

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